結婚相談所 医師 ウィークリーマンション 名古屋 優しい言霊

優しい言霊(ことだま)

 

 

「じゃ先輩、僕は買い出しに行ってきます。」

 

「ああ、よろしく。」

 

 

本日の修行を終え、テンゾウは里に食料の調達に向かった。

ナルトは薪を集め、カカシが火遁で火をおこす。

 

「先生ってば、色んな名前で呼ばれるよなあ。」

 

「何?」

 

夜営の準備をしながら、ナルトがボソッと話しかける。

カカシは聞き返した。

 

「名前だよ。カカシ先生とか、先輩とか、カカシって呼び捨て

とかカカシさんとか。俺なんか、ナルトって呼び捨てか、あとは

ヒナタが君をつけて呼ぶくらい。」

 

「そりゃ、長く生きてりゃその時々の立場ってもんが出てくる

からでしょ。お前だって、そのうちナルト先輩とか呼ばれるよ。」

 

 ナルトが火を見ながらぼそぼそと続けた。

 

「そうだけど・・・。俺さ、ヤマト隊長の木遁がすげえからさ。

木がヤマト隊長の言葉が判るみたいだって言ったんだってばよ。

そしたら、判るんだよって言われて。木遁使いは印を結ぶけど、

忍びでなくても、誰でも言葉には言霊(ことだま)っていう魂が込められてて、

木は人間の言霊に反応するんだって言われた。」

 

「そりゃまた、観念的な話だな。」

 

 カカシはナルトを見つめた。

 

「うん、なんか難しい話で隊長の言うことは実はよく

判らなかったんだけど、言葉には魂があるって言うのがさ、

そうかもって思ってさ。」

 

「思い当たることでのあるのか?」

 

 火を見つめていたナルトがカカシに向き合う。

 

「俺ってば、先生の名前を呼ぶ時なんか嬉しいんだってばよ。」

 

「嬉しい?」

 

カカシはナルトを見つめ返す。

 

 ナルトはパッと顔を背けカカシの視線から離す。

「嬉しいって言うか、いやあの、うーん、うまく言えねえけど・・・。

気分が良いって言うか・・・。がんばろうって気分になるって

言うか・・・だからさ、カカシ先生って名前はさ、言霊がある

んだよ、きっと。」

 

カカシはナルトを更に見つめる。

ナルトの頬は真っ赤に染まっていたが、それが野営用の

炎に照らされたものか、カカシの位置から判断出来ない。

 火を見つめたまま、ナルトが話す。

 

「俺ってば、今サスケを連れ戻すために修行してるけどさ。」

 

「うん。」

 

「もしもさ、もしもだよ。」

 

「うん、何?」

 

「もしも、カカシ先生がどっかに行くことがあっても

俺ってばぜってえ、先生も助けに行くからな。」

 

 カカシはナルトを見つめ、そしてすっと微笑んだ。

 

「ああ、もしもそんなことがあったら、そんときは頼むよ。」

 

「任しとけって。」

 

 

 火を見つめていたナルトがカカシに振り返る。

 

「カカシ先生。」

 

カカシもナルトを見つめ、二人の視線が絡み合う。

 

「やっぱ気分いいや。」

 

ナルトがにかっと笑い、カカシもつられて微笑んだところで

テンゾウの足音がして、二人は視線を外す。

 

 

「ただいま戻りました先輩。ほらサンマがあったんですよ。

先輩が好きな塩焼きにしましょうよ。」

 

「おお、うまそうだな。」

 

「でしょう。先輩の好物ですからね。生きのいいのを

吟味して買ってきました。」

 

 カカシがナルトの方を向く。

 

「ナルト、うまそうだそ、サンマ。」

 

「俺ってば、ラーメンの方がいい。」

 

 ナルトがむすっと答えた。

 

 ナルトはヤマト隊長を凄い人だと一目置いているが、

カカシに親しく話しかけるヤマトはどうしてだか、あんまり

おもしろくない。でも・・・。

なんとなく思う事は、『カカシ先輩』という言葉にも

『カカシ先生』と同じような言霊が含まれているのではないか

という事。

 

 ヤマト隊長もきっとカカシ先輩って呼ぶ時、気分が

良いんだろうって思う。かいがいしくカカシの為に

サンマを焼くヤマトを見て、ナルトは無意識に呟く。

 

「ちぇ、負けねえからな。」

 

 それからまもなく、ナルトは風遁螺旋手裏剣を開発した。

 

                           終