茶の間

短編の間

ハッピーバースディが言えなくて 

 

 

今日は9月の14日。テンゾウは朝から、掃除、洗濯と動き回っていた。

明日は愛しい人がこの世に生まれた大切な日。

 

15日を迎える時、二人きりで過ごしたいと思い、かなり以前から14日から16日までの休暇願を出していた。

昼を回ってからは、料理の下ごしらえに取り掛かる。

レストランでの食事も考えたが、外に出ていては、時間が気にかかる。

家の中の方が、ゆったりと真夜中の12時の時を迎えられるだろう。レストランは15日の夜に予約した。

休暇は3日あるのだから。

 

窓からの日差しがやや西に傾き、テンゾウは朝から洗って干していたシーツや、風を通していたマットを取り入れた。

ベッドメイキングをしていると、どうしてもそこに横たわるカカシを思い浮かべてしまう。

白い肌、寝乱れる銀髪、ちょっと辛そうにシーツを握り締める細い指・・・・・。

いけない、いけない。テンゾウは自分を現実に引き戻し時計を見た。

午後4時を過ぎたところ。

 

料理の続きや、部屋の片づけを終え、テンゾウは以前から取り寄せを頼んでいた、

カカシの好きな銘柄の最高級ワインを取りに酒屋に向かう。

時間は6時。カカシの家には7時に迎えに行く事になっている。

『テンゾウの家に行くなら迎えに来てもらったら、二度手間じゃん。』 

というカカシにテンゾウは迎えに行く事にこだわった。

完璧にエスコートしたいから。

 ワインを取りにいって、氷で冷やし、その間に服をこましなものに着替えて、カカシを迎えに行く。

うん、完璧な予定。

 

テンゾウは機嫌よく、商店街の屋根伝いに酒屋へ向かう。

なにげなしに店が並ぶ通りと逆の、子供たちの遊び場となっている広場の方を見るとなんと、

カカシが男と公園の遊具の上で向かい合いに座っていた。

テンゾウ、思わず屋根から落ちそうになる。

 

「何やってるんだよ。」

テンゾウが気配を消して近づくと、相手は遠目からも濃い眉毛がくっきり見える、カカシの友人のガイ上忍だった。

「じゃんけんポン。あっち向いてホイ。」

「ハイ、俺の勝ち。ね、ガイもういいだろう。俺、もう時間が・・・。」

「ダメ、あともう一回。」

 

 カカシは夕方4時過ぎに、ガイから『勝負、勝負。』と連れ出されていた。

テンゾウとの約束は午後7時だったし、基本的に優しいカカシはむげに断れない。

1時間のつもりがもう2時間もつき合わされていた。

 

テンゾウは、カカシがガイに時々勝負につき合わされるのを知っていた。

「あっち向いてホイしてるよ・・・。今日ぐらい断ればいいのに。」

テンゾウは脱力してその場を離れ、酒屋に向かった。

 

ワインを手に入れ、帰りはカカシの上忍寮の前を通って帰ることにした。

日も暮れてきたし、部屋の明かりが点いていれば、ガイから解放されたという事だろう。

カカシの寮の前まで来た時、暗部仲間3人、ホンマ、ホンバ、ツルハと会った。

「よーテンゾウ。ちょうどよかった。お前に連絡とろうと思ってたんだ。」

「何?」

「さっき皆で喋ってたら、明日カカシ隊長の誕生日だって事、思い出してな。」

「暗部仲間で祝おうと思って。カカシ隊長の都合聞きに来たんだ。休みなのは確認してんだけど。お前は明日大丈夫か?」

「え?明日?」

「何だ、お前仲いいのに誕生日知らなかったのか?」

知ってるに決まってる、レストラン予約してんるんだぞ。 

こいつらはいい奴だけど誕生日のカカシ先輩は独占したい。

テンゾウはどう言って断ろうかと思案して、ふと上を見上げると信じられない光景が目に入った。

 

カカシの部屋の窓から、髪の長い女が顔を覗かせている。

 

「え!?」

天と地が逆転するような衝撃を受けたが、ついさっき、ガイと公園にいたカカシを思い出す。

浮気をしてるなら、ガイと公園にいるのはおかしい。まさか、あの女はカカシの命を狙う侵入者か!?

テンゾウは、カカシの部屋へ猛ダッシュした。

「おい、テンゾウどうした!?」

3人の暗部仲間もただならぬテンゾウの様子に一緒に後を追う。

 

 

「紅、ガイに伝鳥飛ばした?」

「うん、ガイが結構、時間稼ぎしてくれたから、用意は完璧ね。」

「アスマが帰ってきてるなんてカカシ知らないからビックリするわよ。」

その時、カカシの部屋にいたアスマ、紅、アンコは同時に近づく殺気を感じ、すぐに身構える。

「木の葉の忍みたいだけど、何故、殺気を抱いてるの?」

 

テンゾウと、暗部仲間3人もカカシの部屋のドアの前で身構えていた。

「ドアの向こうは木の葉の忍みたいだぞ。」

ドアを挟んで、お互いの気配を探り合っている時、帰ってくるカカシの声が聞こえた。

 

「ねえ、ガイ、何でついてくるの?俺、用事が」

「いいから、いいから。」

「あれ、テンゾウ、早い・・・。ホンバ達も一緒?何で?」

カカシの部屋の前で身構えるテンゾウ達を見てカカシは怪訝な顔をした。

 

「何だあ?お前らカカシの暗部仲間か?お前らも祝いに来たのか?じゃあ、一緒に入れ。おーい、帰ったぞ。」

ガイは大声を出しながらカカシの部屋へ入っていった。

「あれ、何で鍵開いてる?」

カカシもクビをひねりながら部屋へ入ると、

「誕生日オメでとー!」

と、一斉にクラッカーが鳴った。

カカシの部屋はパーティ仕様に飾られて、料理なんかも用意されていた。

「よう、カカシ久しぶり。誕生日おめでとう。」

「アスマ!かえって来てたの?元気そうじゃん!あーこんな用意してくれたんだあ。ありがと。」

「あなた達、カカシの仲間だったのね。一緒にどお?」

髪の長い、色っぽい女、紅に促され、ホンバ達もいそいそと中に入る。

 

テンゾウは固まっていた。

サプライズパーティ?・・・・。カカシの友人達の・・・。え・・・。じゃあ僕と二人きり過ごす計画は・・・?

 

しかも、カカシは、『テンゾウ、ゴメンね。何か予定と違っちゃって。』と言いには来たが、

懐かしい友人達に囲まれ、嬉しそうにしていた。

テンゾウが固まったまま、ずっと抱えていたワインをアスマが見つける。

「お前、いいもの持ってきてるな。よー、これで乾杯しようぜ。」

テンゾウから最高級ワインを取り上げた。カカシの為にわざわざ取り寄せたワイン・・・。

 

後は、ただドンちゃん騒ぎだった。15日と日付が変わるその時も、

「じゃあ、あらためてかんぱーい!カカシー!おめでとー!」

と、大騒ぎ。テンゾウはもう、飲むしかなかった。

 

次の日、テンゾウが起きると、昼前だった。女性達はカカシのベッドで、男はみんな床やら、ソファで寝ていた。 

ホンバ達を起こして、テンゾウは一旦帰ることにする。

カカシは毛布に包まって猫みたいに丸くなって寝ていた。その姿がかわいらしく、テンゾウは声をかけずに出て来た。

 

「じゃあ、今日の夕方6時な。隊長も夕べOKしてくれたし。」

別れるとき、ホンバが言う。

結局、暗部仲間の気持ちをカカシが断る事など出来ず、

今夜、暗部有志主催の誕生日パーティが居酒屋で開催される事が決定されていた。

 

部屋に戻ると、昨日、14日に食べるはずだったテンゾウの手料理がテーブルに残ったままだった。

「そうだ、今日のレストランもキャンセルしないと。」

人気者を恋人にすると辛い。

 

夕方6時からの暗部有志主催の誕生日パーティは結局、昨日と同じドンちゃん騒ぎ。

テンゾウとカカシ、二人きりになる瞬間は全くなかった。

 

午後9時30分頃、会がお開きになり、カカシとテンゾウは休暇が始まって45時間と30分後、はじめて二人きりになれた。

そのまま、一緒にテンゾウの部屋へ向かう。

 

 

先にシャワーを浴びたテンゾウがベッドの端に腰掛けていると、カカシがシャワーから出てきた。

テンゾウの横に腰掛ける。テンゾウはカカシが肩にかけていたバスタオルをとり、 

そのまま何も言わずぎゅっと抱きしめた。 

ずっと、ずっとその肩を抱きたかった。休暇前も小隊を組む任務で、二人きりにはなれなかった。

そばに居るのに触れる事ができないもどかしさ。

 

テンゾウはカカシを抱いたまま、ベッドに倒れこみ、カカシを生まれたままの姿にし、自分も服を脱ぎ去った。

そうしてカカシの艶やかな唇を奪う。

舌をいれ、歯肉をなぞり、カカシの舌に絡める。

更に、唇から、首筋、肩へと、自分の存在をカカシに刻み付けていく。

カカシの胸の突起を指でつまみ、優しく撫でながら、もう一方の突起を甘噛みする。

「あ、ああ・・・。」

愛撫に素直に反応するカカシの身体と、喘ぐ声は、テンゾウから余裕を奪い去る。

 

カカシの全てが見たい、カカシの全てが欲しい。

 

カカシの膝の裏から手を入れ、両脚を押し広げる。

露になるカカシの秘部。

「あ、や・・、ああ、ああ・・・。」

指で充分に慣らしたつもりでも、身体をつなげる行為の時、カカシは小さな悲鳴をあげる。

身体を仰け反らせ、涙を流しながら、それでもテンゾウを受け入れてくれる強くて、美しい人。

 

自分はどれほどこの人が好きだろう。

そしてどれほど愛されてるのだろう。

 

「好きだ、カカシ先輩・・・。」

あふれる想いで一杯になりながら、カカシを何度も突き上げる。

「好きだ、カカシ・・・。カカシ・・・、大好きだ。」

「ああ、テンゾウ・・・。」

そうして二人は一緒に溶けていった。

 

 

愛し合った後、動けないカカシに掛布をかけてあげようと思い、ベッドから起きたテンゾウに時計が目に入った。

午後11時50分!

あと10分で日付が変わってしまう。15日のうちに、誰かと一緒ではなく、二人きりで言いたかった言葉を、 

ハッピーバースディを言わなくちゃ。

 

「先輩、カカシ先輩、あの、たんじょ」

「何で先輩なの?」

ベッドに横たわったまま、急にカカシがテンゾウの言葉をさえぎった。

「は?」

テンゾウはカカシが何を言ったのかよく判らない。

「何で先輩なのって何が?」

「さっきは呼び捨てにしたじゃない。何で今は先輩ってつけるの?」

「え?僕は先輩を呼び捨てになんかしませんよ。」

「したよ、さっき。」

カカシがちょっと意地悪そうに笑う。

 

確かに、呼び捨てにした・・・・。テンゾウは自覚していた。

あまりに想いがあふれて、伝えたいのに言葉がもどかしい、そんな状況・・・。

あんなに喘いでいたのに、聞こえてたのかと思う。

 

テンゾウは何だか反撃したくなった。        

「さっきっていつ?何をしてる時に言いました?ちゃんと言葉で言ってくれないとわかりませんよ。」             

「な・何してる時ってそんなの・・・。さっきはさっき!もういい!」

カカシが赤くなって、プクーとむくれてテンゾウから顔を背けた。

 

どうしてこの人はこんなにかわいらしいのか。

 

テンゾウはベッドに戻り、もう一度カカシの隣に横になる。

そうして覆いかぶさるようにカカシを全身で抱きしめた。

「誕生日おめでとう。カカシ。」

耳元で囁くと、

カカシはテンゾウの腕の中で、

「ありがと。」

と小さく、でも幸せそうに答えた。

時計は11時59分を指していた。

 

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