テンゾウがちょうど朝食の支度を終えるころ、カカシが目覚めて来た。
味噌汁や焼き魚がテーブルに並んでいる。
[ちょうど良かった。今、起こそうかどうしようか迷ってたんですよ。」
「ご飯出来たなら起こしてくれたらいいじゃない。」
カカシがファーとアクビしながら言う。
「よく言いますよ。朝は苦手だから自然に起きるまで起こすなって前、怒ったじゃないですか。朝食作るにもかなり音に気をつけてたんですよ。」
「そうかあ、ゴメンねえ。だってほんとに朝、苦手なんだもん。低血圧なんだよ。」
そう言いながらカカシがテンゾウの背中にもたれかかった。
途端にテンゾウは何も言えなくなる。
この人のかわいさは天然なのか計算なのか、しかしテンゾウはもうどっちでも良かった。
背中にカカシの体温を感じ、夕べの美しいカカシの裸身を連想し、また熱い衝動に駆られる。
振り向くと同時にカカシの唇を奪い、舌を口内へ進入させた。
わずかに抵抗しようとするカカシの頬を両手で押さえ、息もつかせぬ程に舌を絡める。
上から下へまた上へ、そして奥へと口内を犯し続けた。
カカシがテンゾウの背中をだんだんと叩き、ようやく唇が開放される。
「苦しいよ!ばか!」
カカシが怒る。怒った顔もかわいいなとテンゾウはつい笑ってしまう。
「ほんとはこのまま続きがしたいけど、今夜にしますね。明日も休みだし、ゆっくりとね。」
「人が怒ってるのに何の話してるんだよ。」
カカシがさらにむくれた所でチャイムが鳴った。
「おーい、カカシいるかあ。いや、いるだろう!ドア開けろ!」
その声はテンゾウにも聞き覚えがあった。カカシの友人マイト・ガイ。
「あちゃ〜、めんどくさいの来たなあ。よく、朝からあんな大声出せるよ。」
カカシがため息をつきながらドアを開けるとガイが飛び込んできた。
「カカシ!今日は休みだろ!先に任務表確認してきたからな。57回目の勝負だ!行くぞ!」
そう言ってガイがカカシの腕を掴んだ途端、テンゾウがカカシの腕を掴んでるガイの腕を押さえた。
「どこ行くんです?」
「何だお前は?ああ、暗部の後輩か。ここで何してる?」
二人の間に不穏な空気が流れた。
「朝食を作ってもらってたんだよ。料理上手な後輩でね。」
カカシがガイに捕まれてた腕をそっと振り解きながらその場をとりなす。
「朝食?もう9時だぞ」
「普通だろ、休みなんだから。」
カカシが再びため息をつく。
「5時に起床。体操して朝食は6時だ。午前に訓練、午後に訓練。
それが忍者の正しい休日だ。お前が日頃から朝は苦手だとかほざくから、9時まで待ってやったんだぞ。」
「気遣いに感謝するけどね。今日はこの後輩と先に約束してたんだよ。」
ガイがにやっとしながら言う。
「いつ約束したんだ?」
「えっ、いつって3日前かな?」
「だったら俺の方が先だ。一ヶ月前の勝負の時、次回は二人の休日が揃った時って言ったろう?
今日がその日だ。飯食うまで待ってやる。さっさとしろ。」
ガイが勝ち誇ったようにテンゾウの方を向いて言った。
「そういう事だ。悪いな。カカシはオレと付き合ってもらう。」
わーその言い方まずいとカカシは思う。
時、すでに遅し。カカシは背中にテンゾウの殺気を感じた。
「僕も行きますよ。訓練でしょ?
カカシ先輩と渡り合える優秀な方なら、後輩の僕は叶わないでしょうけど、是非、お手合わせ願いたい。」
テンゾウが不遜な笑顔を見せながら言う。
「ふん。どうも生意気なヤツだな。いいさ、来いよ。後悔するなよ。」
ピー!カカシが笛を鳴らす。
「同着!ねえ、もういい加減にしない?二人ともフラフラじゃん。」
何十回目かの100メートルダッシュを終えたガイとテンゾウはほぼ同時にゴールに倒れこんだ。
「ハアハア、100で勝負つかないなら次は階段登りだ。お前には負けない。」
「僕も負けません。」
「やれやれ。」
カカシは今日何回目かのため息をついた。
でも、いつもはカカシがこの体力バカの相手をさせられているのに、今日はテンゾウが代わりにやってくれているのだ。
それにテンゾウはこんなに体力使ったら、夜は疲れてぐっすり眠るだろう。抱かれるカカシは連夜はきつい。この状況は利用すべきかも。
先に階段の方へ歩き出していたガイにカカシは近づき、耳元でささやいた。
「ガイ、体力ならお前が里一番じゃないか。俺達の同期の星だよ。頑張れ。」
ガイは顔いっぱい笑顔になった。見慣れているとはいえ、ガイの満面の笑みにちょっと引く。
「おう、まかせとけ!」
ガイはテンション高く、階段の方
へ駆け出した。
今度は少し遅れて歩いてきてるテンゾウの方へ戻る。
「テンゾウ、お前が負けるはずないって信じてるよ。なんてったってオレの恋人なんだから。」
「恋人・・・。恋人!は・はい!絶対、負けません!」
テンゾウも笑顔いっぱいになり駆け出す。テンゾウの笑顔はかわいいと思う。
「適当に止めないと、どっちかが倒れるまでやりそうだな。しっかし二人とも単純。」
駆け出す二人の背中を見ながら、カカシは笑わずにいられなかった。