愛しい人は神秘のヴェールで包まれている。
伝説の忍者、ハタケサクモの忘れ形見。
5歳の1年間でアカデミーをスキップ卒業。
うちは一族ではなく車輪眼を持つ不思議。
雷をも切るといわれる忍術。
噂は噂を呼び、カカシの名は知れわたっているのに本人の素顔を知るものは少ない。
暗部仲間さえ、その姿を見ることはあまりない。
実際、僕だってチームを組むまでは逢った事なかった。
てか、誰とも逢わないよ!そんなに一日寝てたら!!
低血圧なんだとか忍者らしからぬ事言って昼まで起きない。
太陽の光は苦手とか言って、夕方まで家の中で本読みながら、時に昼寝しながら、ごろごろ。
人もまばらな時間になって、やっと活動する。
といっても買物に行くくらいで、夜は夜でさっさと寝てしまう。
いや、いいんだ、いいんだ。朝起きなくても、昼ごろごろしてても。
それはいい。問題は夜。
一日中寝てるのに、何で夜も早く寝る!?
しかも、一度眠ったら起きない。
以前、我慢できなくて起こして事に及ぼうとしたら、本気で怒られた。
口も利いてくれなくなった事を思い返せば、カカシが眠ったら諦めるしかない。
「先輩、自分がどんな顔して寝てるのか判ってますか?」
長いまつげ。白い肌に風呂上りで少しだけ赤みの残る頬。
形のいい薄い唇はまるでテンゾウの舌を誘うようにほんの少しだけ開いている。
「それで起こすと怒るんだから、ほとんど反則だよなあ。」
寝息を立ててるカカシのそばで小さく抗議しても、結局一人寝の拷問の時間を過ごさなければならない。
でもまあ、仕方ないか。
任務中のカカシはかすかな虫の気配も逃さない。
五感全てが切れ味鋭いナイフのように研ぎ澄まされ、
長期任務中であってもその集中力は途切れない。
そんなカカシがこうして熟睡するのは、此処が安心できるから。
自分のそばが、カカシにとっての安らぎの場所になってるという事実。
そのカカシからの信頼が何にも代え難いと思う。
「お休みなさい。」
テンゾウは唇ではなく、頬に軽くキスをして起こさないようそっとカカシの隣に入り込む。
明日こそ、明日こそ。
そのパジャマを剥いでやる。