アウトソーシング 離婚 相談 クレアチニンクリアランス

宴の庭荘

 

 

CCr>その2

 

 

黒い綴じ紐を手にして、テンゾウはもう一度カカシに尋

ねた。

 

「波風教授と、どこに行ったんですか?」

 

「・・・教授のセカンドハウス・・・。彼の、ワンルーム

マンション」

 

「・・・やっぱり」

 

「正直に話しただろう。これ解いて・・・ねえ、テンゾウ、

はやく・・・」

 

ただ快感だけを与えられて、そのまま放置されている熱

を持てあます。

カカシは、潤む目でテンゾウを誘う。

 

「そこで何をしてたんですか」

 

「だから、お茶飲んだだけ」

 

「・・いいですよ。そういうことにしておきましょう」

 

「じゃあ、テンゾウ・・・。ねえ・・・」

 

「でも、僕に嘘ついて家に行く事は許せない」

 

「正直に言ったら教授の家に行かせてくれるのか?」

 

「屁理屈カカシさん。まだ、凝りないんですね。僕は、あ

なたが彼と二人きりで過ごす事が許せないんですよ」

 

テンゾウは黒い事務用の綴じ紐を、カカシの硬くいきり

立つものに巻きつけ始めた。

 

「テンゾウ・・・何する・・・」

 

椅子に縛られている今、どんなに批判の声を上げても

テンゾウにされるがままになるのは判っている。縛られる

時、それは十分に判っているのに。

テンゾウから与えられる罰に、カカシは密やかな蜜を感

じ取る。辛く、苦しい。でも・・・もっと・・・もっと・・・。

 

 射精感を置き去りにされたまま、カカシはペニスをきつ

く紐で巻かれる。テンゾウに触れられている事が快感を呼

ぶ。その快感と同時に、ギュッギュッとテンゾウは紐を絞

めあげ、快感と苦痛を同時にカカシにもたらす。

 

何本もテンゾウは紐を使い、カカシの中心を黒く覆った。

 

「お前ほんとに酷い・・・。テンゾウ・・・」

 

カカシの息が荒くなる。辛い目にあってなお、射精感は

強くなる。紐で縛られていても、先端からはタラタラと止

まることなく白濁の液が溢れる。

 

「いつも言っているでしょう。酷いのはあなたの方です

よ」

 

テンゾウをなじりながら、酷いのは自分だというテンゾ

ウの言葉にそうかもしれないとカカシは思考力が低下し

た頭で考える。

先生は自分を好きだと言ってくれている。その気持ちに

答えられないと言いながら、先生と逢う時間を作ってしま

う。

いや、ミナト先生だけじゃない・・・。

 

テンゾウが今度は事務クリップを手にした。

 

「今、何を考えてますか」

 

「何って・・・意地悪なお前をなじる言葉・・・」

 

「僕をいくらなじっても悪態ついてもいいですけど、僕と

いる時に他の人の事を考えるのだけは、やめてください

ね」

 

カカシは、テンゾウの言葉にゆっくり顔をあげる。

 

 テンゾウはため息をつく。

 

「やっぱり、教授の事を考えてましたね。他の事を考えら

れない様に、しなくちゃだめですね」

 

カカシは目を見開いた。テンゾウの指先に事務クリップ

が見える。ああ、痛いだろうなと思う。どこを挟まれるの

か、それは明白。

でも、やめてほしいとは口にしない。言えば、テンゾウ

はやめるだろう。

テンゾウには自分を罰する権利があり、そして自分は

苦痛と、紙一重の快楽を求めている。理性より、身体が欲

する刺激。

カカシは唇を噛み、もたらされる苦痛と快楽に耐える準

備をする。

 

 テンゾウがカカシの乳首にクリップを挟んだ。

 

「ああ・・・!」

 

紐で縛られるのとは桁が違う苦痛がカカシを襲う。

再び上半身をのけぞらせ喘ぎ声をあげ、涙が頬を伝った。

 

そのカカシの様子をみてテンゾウは、2個目のクリップ

を手に躊躇する。

 

「これは、痛すぎましたか?」

 

痛い・・・。でも一方で快楽を得ている自分を自覚する。

聞いたりせず、強引にすればいいのに。テンゾウの優しさ

がもどかしい。テンゾウにはいくら責められてもいい・・・。

 

 カカシは下を向き、唇を噛みしめ痛みに耐えたまま返答

をしない。その姿は艶めかしく、テンゾウは思わず見惚れ

る。

辛そうにしながら、やめろという決定的な言葉も言わな

いカカシにテンゾウは2個目のクリップをゆっくりと、カ

カシのもう片方の乳首に挟む。

 

「あうぅ・・・」

 

同時に乳首の血流を止められる苦痛は、カカシの想像を

超えている。やめてくれという言葉が頭をよぎるが、それ

を口にすることは叶わない。身体が、欲している刺激。理

性は霞みの中に消えていく。

 

苦痛に耐えるカカシの頬を挟み、テンゾウは口づけをす

る。

激しく唇を貪ると、椅子に縛りつけていた紐を解き始め

た。先に足を解くと、今度は手を自由にする。そうしてカ

カシをゆっくり椅子から降ろし、カカシは促されるまま、

その場に四つん這いになった。

 

 

 手を動かせるようになったが、カカシは自ら胸のクリッ

プも自身を巻き付けている紐も、取る事はしない。

そう、これを取るのはテンゾウだ。テンゾウからもたら

されている罰という名の蜜なのだから、自分から取ったり

はしない。

 

 四つん這いのカカシの双丘を押し広げ、テンゾウは指で

秘所を溶かし始める。

胸の突起はクリップを挟んだままその刺激に立ち上が

り、紐できつく巻かれた自身が更に硬く主張を始める。

秘所への快感が、乳首とペニスへの苦痛につながる。身体

を支える腕はぶるぶると震え、カカシはたまらなく声を上

げる。

 

「うう・・・ああ・・・。ん・・・・は、ああ・・・」

 

胸にクリップを挟みペニスに紐を巻きつけたまま、いつ

にも増して乱れるカカシを見て、テンゾウの欲も限界に達

する。

カカシに挿入し、すぐに奥まで突き進む。後ろから突き

いれながら手を伸ばし、クリップを外す。

 

「ああ!・・・」

 

カカシは激しく仰け反る。正座を解いた時のように、

血流が再開される時の方が激しく、ジンジンとした痛みが

襲う。

テンゾウは解放されたばかりで痛みが続いている乳首

を更に指で捻りあげた。

 

「・・・あああ・・・・。テンゾウ!・・・・・」

 

カカシは悲鳴のように喘ぐ。激しく腰を動かされたまま

ジンジンとした痛みの残る乳首を、テンゾウに捻られ、

意識すら遠のきそうになる。

 テンゾウは、カカシの声に突き動かされるように、

更に動きを加速させ、抉るように何度も出し入れする。

 

「ああ・・・テンゾウ・・・もう・・・いく、いきたい、

とって・・・」  

 

カカシの喘ぎ喘ぎの声に、テンゾウの怒りも霞みへと消

え行きただ雄としての本能をむき出しになる。左手でカカ

シの乳首への乱暴な愛撫を続けながら、右手でペニスの綴

じ紐を外していく。

 

 焦らされ過ぎた愛液がどくどくと先端から溢れだす。

 

「一人でいかないでください」

 

テンゾウはカカシに囁き、最後の突き上げを行った。

激しく、何度も何度も打ち付け、カカシの中に欲望の全て

を吐きだす。

 

 テンゾウはゆっくりと身を起こし、カカシを覗き込む。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あのねえ・・・大丈夫なわけないだろう・・・。今日の

お前はほんとに酷い奴だった、俺よく耐えたよ」

 

ようやく息の整ったカカシが、それでも割とけろりと答

える。

 

「全然大丈夫みたいですね。何度も言いますが酷いのはあ

なたで僕じゃない。あなたと付き合っているうちに、どん

どん性格が悪くなってきたのは自覚してるけど」

 

「あ、自覚はしてるんだ」

 

カカシがふふというように微笑んだ。

 

 テンゾウは、カカシを見つめる。白い絹肌は、乱暴な愛

撫で乳首は赤く、あちこちに口づけの痕を残す。今この身

体を隅々まで貪ったはずなのに、また欲望が湧きおこる。

魅惑を湛えた肌に触れる権利は自分だけのものなのか。

彼も、教授も、その権利を持っているのか。

 

 本当のところは、判らない・・・。猜疑心は、身体に溜

まる老廃物のように、多大な疲れをテンゾウにもたらす。

 

「身体に老廃物が溜まる気がしますよ。あなたとつきあっていると」

 

「そりゃ、あれだな。腎機能が落ちてる。CCr(クレア

チニンクリアランス)の検査した方がいいぞ」

 

 テンゾウは返事をするのも馬鹿らしくなり、そのまま黙りこむ。

 

「あれ、怒った?心配して言ったのに」

 

カカシがくすくす笑いながら言う。

 

 年上の男だというのに、その笑顔が可愛いと思ってしま

う自分にテンゾウは疲労感が倍増する。

 

「はいはい。内科のイルカ先生にでも診てもらいますよ」

 

「え?お前イルカ先生知ってるの?」

 

カカシは本当に驚いた様子で、テンゾウに聞く。

 

「知ってるというか・・・。イルカ先生の患者を依頼され

て診たことがあって、それから時々話したりします。

・・・あの、カカシさんもイルカ先生知ってるんですか?」

 

「ん?まあ・・・。ちょっと」

 

 テンゾウはひっかかる。

 

「ちょっとって、なんですか」

 

「別にたいした事じゃないよ。新人研修医時代に慰安旅行

で一緒の部屋になった事があって、それから喋るようにな

った」

 

「旅行で一緒に?今も仲良いんですか?全然知らなかっ

たですが」

 

「別にお前にわざわざ言うほどの事でも・・・。あ〜身体

冷えて来た。シャワー浴びてくるよ」

 

 

 カカシはひらひらとテンゾウに手を振り、唐突にシャワ

ーに行った。

 

テンゾウの心に暗い疑惑が湧く。なぜ、イルカ先生と

自分が知り合いだと知って、カカシがあんなに驚くのか。

仲がいいという事を、まるで隠すようにしていたのか。

 

見る者を惹きつける、カカシという男。

 

愛しすぎて、その身をきつく抱いて、縛りあげてもする

りとこの手をすり抜けてゆく。新たな疑惑はテンゾウの心

に老廃物を蓄積させ、浄化されることのない澱みとなる。

 

 先ほどまでカカシを縛りあげていた紐、白濁液が絡む綴

じ紐、そして乳首を苛めたクリップが床に散らばる。テン

ゾウはクリップを一つ手にとり、思い切り壁に投げつける。

クリップはカランと音を立て、後は無機質な静寂がテンゾ

ウを取り囲んだ。

 

                    終わり