今ひとたびの邂逅15
カカシがミナト班にいた頃にあった第三次忍界大戦
以降、それぞれ局所的な戦いはあっても、国同士が全
面に争うということは表立ってはなかった。
しかし木の葉単独では第三次以降も九尾事件や、大
蛇丸による木の葉崩しなど、人々が戦闘に巻き込まれ
る大事件が発生している。その上、暁という謎の集団
による禍々しい足音は、ひたひたと近づいていた。
得体のしれない集団の存在はそれぞれの国に疑心暗
鬼を生む。局所的とはいえ、カカシクラスの忍びが出
なければならない任務は引きも切らなかった。
そんなさなか、暁に風影がさらわれるという事件が
起こる。7班及びガイ率いる10班が奪還任務に向かい、
それぞれ敵と死闘を繰り広げた。
カカシはまだ技としては完成途中の神威を繰り出し、
窮地を脱する。
常に努力は怠らず、万華鏡写輪眼すら習得した。し
かし持って生まれたチャクラ量は、新技に呼応するも
のではない。
結局チャクラを使い切り、ガイに背負われて帰還し
そのまま入院した。
扉の向こうの周囲を圧倒する気配にカカシが気づい
て間もなく、綱手が入ってきた。
「どうだ。体調は?」
「申し訳ありません。綱手様にわざわざ来ていただい
て・・・サソリがサクラに伝えた情報のことですね」
綱手が頷く。
「入院中にすまぬが、あまり時間の余裕もない。お前
の考えを聞きたい。罠か、それとも・・・」
「死の間際のサソリが、わざわざ偽情報を流すなどと
いうシナリオがあったとは考えにくいですね。そもそ
も奴らは俺たちに負けること事態を想定していない。
そう考えると、信憑性もあるのではないかと考えます」
「やはり、そう考えるか。ならば天地橋派遣は、正式
任務としよう。しかし、お前はその状態だからな・・・」
「申し訳ありません」
カカシはベッドの上で小さく頭を下げた。
「お前の代わりにナルトとサクラを率いてこの任務を
こなすことの出来る人材は、そうそういない。ここは
思案のしどころだ」
綱手はそういうとカカシの方をちらと一瞥した。
「ナルトの成長とともに、いずれ爺様の力が必要にな
るとは考えていたが・・・。今がその時かもな」
カカシがハッと顔を上げる。
「綱手様・・・今、ですか?」
「うむ、お前たちは確か暗部で一緒だったな。お前も、
あいつなら任せられるだろう?」
看護忍が夕食を下膳する頃には、まだ何かしらの音
や話し声が聞こえていた病棟も、消灯が近い時間にな
れば静寂に包まれる。
カカシはベッドの上で心の疼きに耐えていた。
一年も前に置いてきたはずの感傷・・・。
オビトやリンとの後悔だけの別れとは違う。自ら選
択した別れなのだから、毅然と受け止めるしかないの
に、誰かを愛しく思う気持ちはこうも抑制が効かない。
写輪眼に対して自身のチャクラ不足という現実は嘆
いたところで変えようもない。こうして時折動けなく
なるほど疲労困憊することにも付き合っていくしかな
い。
だからこそ、天地橋任務は任せるしかない。そう、
綱手様が言われるように、あいつは確かに適任者だ。
九尾を宿す人柱力のナルトが自分の班でいる限り、
初代の細胞を組み込まれたあいつといずれ関係すると
はわかっていたが、まだ先だろうと高を括っていた。
いや、本当は考えることを拒否して、先だと思い込む
ようにしていたのかもしれない。
どうしているのだろう?あの美女と付き合っている
のだろうか。結婚したか・・・。
暗部のプライベートなど、知る由もない。
天地橋偵察任務が終われば、報告も聞かねばならな
い。いずれ会うことにはなる・・・。
カカシはその時、静寂に包まれた病棟で微かな窓の
振動に気づく。