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感謝の庭荘

 

Tha boy meets the boy 

 

(五話)

長期遠征を終え、木の葉の里に戻ってきたゲンマは自分の部屋に戻

る途中にある公園へ寄った。

そこはカカシが時々本を読みながら昼寝をしているところで、任務

でなければいる可能性がある。

 

正規部隊と暗部の違いはあれど、共に忍を生業とする身であれば、

相手のスケジュールを掴むのは不可能だ。時間があけば会いに行き、

いれば良し、いなければ仕方がないという付き合いとなる。

ただ言い換えれば、決まった時間の仕事でない分、数日を自由に過

ごす事もあり、そうした偶然の時を重ねて互いに逢瀬を楽しんできた。

 

カカシは任務で不在かもしれないし、あるいはいるかもしれない。

公園にいなければ後で部屋に行ってみようと思いながら、カカシのお

気に入りのベンチがある場所まで行くと、見慣れた銀色の髪の男が私

服で寝そべっているのが見えた。

 

やはり久々に恋人の姿を見るのは嬉しい。ゲンマが早足になりかけ

るとベンチに寝そべるカカシに近づく男が目に入る。

カカシが身を起こし、なにやら二人会話を始めた。その男はゲンマ

の見知らぬ男で、どう見ても自分より若い。いや、カカシよりもさら

に若そうな茶色の髪の男だった。正規部隊では見ない顔だから、おそ

らく暗部だろう。

 

会話をしている二人はなにやら楽しそうで、カカシがクスクスと笑

い始める。カカシは笑うと随分幼く見えた。

ゲンマはその場から動けなくなる。楽しそうに、少年のような笑顔

でカカシが屈託なく笑っている。その笑顔が、ゲンマの目に焼きつく。

自分ではない、見知らぬ若い男に向けられたカカシの笑顔がゲンマの

心にいいようない不安を与える。

 

自分は27歳で、カカシは24歳。もとより、同姓という秘密の関係

であり、そして大人同士の付き合いである自分達はあんな風に笑いあ

ったりしない。

会えば、少しの会話とセックス。そして後は何をするでもなく、た

だ一緒の時を過ごす。互いにはしゃいだりする性質ではない。それが

心地よいのだと、カカシもそうなのだと、今まで、信じて疑わなかっ

た。

 

ゲンマが動けずにいると、二人は話しながらベンチを離れ公園を抜

け歩いていく。

結局ゲンマは、その時カカシに話しかける事が出来ず、二人が去っ

たその場にしばらく佇んでいた。

 

 

 

カカシとテンゾウは公園を出て歩いていた。

「今日は僕の家で一緒に夕食食べませんか?結構、料理得意なんです

よ」

「お前んち?」

「はい。あ、警戒しちゃってます?」

「あのなあ、なんで俺が警戒するのよ」

「ですよね。先輩が強くて良かった。自制が働いて、襲わないですむ」

「うわ〜、やっぱこえーよ、お前・・・」

「冗談ですよ」

「冗談に聞こえない」

「そんな、力ずくなんて最低な事しないですよ。夕食に睡眠薬も入れ

たりしませんから、来てくれませんか?」

「バカか・・・。犯罪だろ、それ。そんな誘い方あるか」

「あはは・・・だから、しないって言ってるんですよ。」

 

4歳年下のテンゾウの想いはまっすぐで、カカシは自分に向けられ

るその好意を迷惑だと拒絶出来ない。

人と親しくなる事を意識的に避けてきた自分なのに、テンゾウは後

輩の中で唯一、目をかけてきた。その忍として豊富なチャクラも、力

量も壮絶な過去を感じさせないまっすぐに伸びた精神も、いずれもカ

カシにとって眩しいようなものを持っている。

テンゾウと過ごす時間が楽しいと、素直に思える。自分はテンゾウ

と居るとき、しょっちゅう笑っている。

 

夕食の買物をするというテンゾウと一旦別れて、カカシは自分の部

屋に戻った。ドアの前で鍵を取り出し、ふと自分の部屋の鍵と共に

キーホルダーに繋がっているゲンマの家の鍵が目に入る。

ここしばらく、長期任務に行っている恋人の事を、思い出すことが

なかった。その事実に今更気づく。

 

「カカシ」

突然、ゲンマの声がした。カカシは一瞬びくりとする。

「何、ビビってんだよ。俺に声かけられて」

「いや・・・突然だったから。帰ってきたんだ・・・」

「ああ、今日の昼にな。入っていいか?」

「悪い・・・。今日は約束があるんだ」

「俺の知ってる奴?」

「いや、暗部の後輩。一緒に飯食う約束してる」

 

ゲンマの脳裏に今日昼間見た、髪の茶色い男が浮かぶ。

「・・・後輩って、髪の茶色い奴?」

「え?どうして知って・・・・・?」

「いや、今日昼間一緒に歩いてる所を見かけた。俺は任務上がりで、

偶然な」

「そうか・・・。うん、その後輩だよ」

「先約なら仕方ないな。俺はしばらくまとまった休みだが、お前は?」

「まとまった休みはないな。でも長期遠征の予定はないから多少時間

が出来たら、俺から行くよ」

「判った、じゃあ今度な」

「ああ、来てくれたのに、悪かった」

 

ゲンマはカカシの頬を押さえ、くちづける。カカシが一瞬躊躇った

ように感じたのは、気のせいだろうか。

暗部内で気の会う後輩がいたって、不思議ではない。女ならともか

く、男と話しているのを見て不安になるなんて、自分も焼きが回った

と思う。

それでもなお、説明のつかない不安がゲンマの心を捉えていた。

 

                          続く