The boy meets the boy
(6話)
テンゾウとカカシ、ツーマンセルでの日帰り任務後、二人は揃って
里へ帰還した。
「テンゾウ、まだ止血できてないだろう。病院行くか?」
「いや、大丈夫ですよ、これくらい」
「でも包帯は巻いた方がいいだろう。俺の家に来るか?お前の家は里
の奥だし」
テンゾウが左腕を負傷したが、忍にとって多少の怪我は日常であり、
確かに病院へ行くには軽いほうの傷だった。
「いえ、そんな、申し訳ないですよ、これくらいの怪我で」
「いいよ。俺んち来いよ」
「そうですか・・・。じゃあお言葉に甘えて」
カカシはテンゾウを家に入れ、着替え用に自分の私服を出してシャ
ワーを浴びるように言った。
「先に汚れを落とした方がいい。まあ出血するだろうけど、タオルを
巻いておこう。後で処置してやるよ」
「はい」
シャワー後、カカシはテンゾウの左腕の傷口を消毒して包帯を巻い
てやった。
「すいません。ありがとうございます」
「いいよ。それよりなんか飲むか?」
「はあ、じゃあお茶で」
「・・・じーさんか、お前は」
「和の心を大事にする二十歳です」
「はいはい・・・。ちょっと待っとけ」
カカシがお茶を沸かして部屋に戻ると、テンゾウはソファにもたれ
てうつらうつらとしていた。
疲れたのだろうと、カカシは思う。今日は日帰り任務だったが、内
容は結構ハードなものだった。怪我をしてれば、疲労感はさらに増す。
その怪我を負ったのも、カカシの背後を守り庇ったからだ。
眠るテンゾウに毛布をそっとかけてやり、この間に自分もシャワー
を浴びようと、浴室に向かった。
ゲンマはかなりいらついていた。1週間も前、長期遠征後にカカシ
を訪ねた折、時間があれば自分から来ると言っていたカカシが、結局
一度も姿を見せていない。
もちろんカカシは、暗部という特殊任務につく忍であり、本当に時
間が取れなかった事も考えられる。
任務によるすれ違いなんて、今までに何度もあったことだ。なのに、
何故か今は心が落ち着かない。
公園で、カカシが見せた笑顔が脳裏に蘇る。あの笑顔を向けられて
いた暗部の後輩という男。今も一緒に任務をこなしているのだろうか。
長期遠征後、久しぶりに会いに行ったその日にあの後輩と御飯を食
べる事を優先したカカシ。
そんなの許さないと言うほど、自分は無分別な人間ではない。実際
あの日も、あっさりとカカシを送り出した。しかし今、一週間も姿を
見せないカカシを思うとそんな鷹揚に構えている余裕がない自分が
いる。
ゲンマはカカシの家に行くことにした。鍵は持っている。自分の休
暇は明後日までだ。カカシが任務で不在ならば、時間がある限り待と
う。
カカシはシャワーを浴び終え、髪をタオルで拭きながらベッドの端
に座った。この位置からソファのテンゾウがよく見える。
日頃、任務では落ち着いているテンゾウも、眠れば無防備でその寝
顔はやはり、二十歳の青年そのものだ。
若くて、かっこいい青年。さぞ女性にも、もてるだろうと思う。
何故テンゾウは、俺が好きなのだろう。そして俺は・・・・・。
カカシがテンゾウを見つめていると、ふとテンゾウが目を覚ました。
「うわ!」
テンゾウが跳ね起きる。
「な、何だよ。大声出すなよ」
「す、すいません。寝ちゃってました」
「そんなこといいよ、疲れたんだろ。・・・。もう、声に驚いた・・・」
「すいません・・・。先輩もシャワー浴びたんですか?」
「ああ」
濡れたカカシの髪が、窓から差し込む日の光にキラキラと反射する。
生まれながらに忍という強さを持ちながら、何故この人はこんなに無
駄に綺麗なのだろう。
「髪・・・。綺麗な色ですよね」
「変わった色だろ。父親譲りで、うんと小さいころは好きじゃなかっ
た。でも・・・、今は好きかな。俺と父さんを繋ぐ色だから。」
テンゾウは、カカシの座るベッドのそばに行く。
「変な事言っていいですか?」
「何だよ、変な事って」
「髪、触ってもいいですか?」
「・・・いいよ・・・」
テンゾウが、ベッドに腰掛けるカカシの横に座り、キラキラ反射す
るその髪に手を触れる。
三忍を凌ぐといわれたこの人の父親の事は、暗部の一員として、情
報を得ている。その死が自死であることも。どれ程に辛かっただろう
か・・・。
「光の中だと、ちょっとピンク混じりに見えますね」
「そうかな。自分じゃ判らないけど・・・」
髪を触るテンゾウの手がカカシの頬に移動していく。両手でその頬
を包まれ、キスされるなとカカシは思う。テンゾウの唇が、カカシの
唇に触れる。
二度三度、触れるか触れないかの啄ばむ様なキスをされやがて舌が
入り込んでくる。
テンゾウにキスをされるのは二度目だ・・・。不思議と抵抗する気
が起こらない・・・。
やがて、カカシの頬を包んでいたテンゾウの右手がカカシの服の裾
からその肌に滑り込み、胸の突起を探り当てる。カカシがびくっと反
応し、その際に唇が離れテンゾウは、余裕なくカカシをベッドに押し
倒す。
ゲンマがカカシの部屋の階段を上がる。自分の家の鍵と一緒のキー
ホルダーに繋がっているカカシの部屋の鍵を取り出し、鍵穴に差し込
む。
鍵を回す音がガチャリと響き、ゲンマはカカシの部屋に入った。