ペット 茶の間

感謝の庭荘

 

The boy meets the boy

 

(2)

 

火影の諸国訪問に護衛として同行していたカカシを部隊長とする

班は、久しぶりに木の葉の里に戻ってきた。

里内の護衛担当シフトに当たっている暗部班と交代し、カカシ班は

数週間に渡った長期任務から解放される。

 

「カカシ。ん?なんだ、もうおらぬのか」

火影がカカシを呼び止めたが、すでに護衛交代の合図をかけた後であ

り、カカシの姿は消えていた。

「ああ、テンゾウ。悪いがこれをカカシ渡してくれぬか」

火影は、まだその場に残っていたテンゾウに巻物を渡す。

「カカシに頼まれていたものだ。渡せば判る」

「御意」

 

テンゾウは、カカシの家を知っている。カカシは誰にでも気さくに

接する割に、私的な部分での付き合いをすることはない。

何度か食事に誘われたり、家にも行った事があるテンゾウは暗部内で、

カカシと親しく接している方だった。

 

他の暗部より親しいとはいえ、当然ながらその態度は、目をかけて

いる後輩に対する親しみであり、カカシへの秘めた想いを抱くテンゾ

ウにとっては、嬉しさと、辛さとが交差する複雑な心情に捉われるも

のであった。

 

 

 

火影護衛の任から解放後、カカシは部隊長としての精神的疲れもあ

り、まっすぐ自宅へと戻っていた。

自室がある、上忍棟の建物の角に差し掛かり、ふと、慣れ親しんだ気

配を感じた途端、腕を引っ張られ壁に身体を押さえつけられ、唇をふ

さがれる。

すぐに舌が入ってきて、口内を蠢く。

「ん・・・・」

苦しくなり一瞬唇を離すが、すぐにまたふさがれる。

 

しばし唇を奪われ、ようやく開放された後に抱きしめられる。

「ちょ・・・ゲンマ、何だよ。こんなところで盛って・・・」

建物と建物の間で、通りから外れているとはいえ、

外でのゲンマのらしからぬ態度に、カカシは非難を込めて言う。

「いや・・・。俺は今からすぐに出発だ。かなりの長期になる。火影

様の護衛に行ってるお前とはすれ違いで、会えないと覚悟してたのに、

姿が見えたからついな・・・」

 

「会えないって思ってるのに来たの?」

「ああ、まあな」

いつも落ち着いたゲンマが、やや照れたように頷く。

「すぐって、どれぐらい?」

「今から一時間後に出発だ」

「一時間か・・・寄る?」

「いいのか?帰還したばかりで疲れてるんじゃ・・・」

「俺は今日からしばらく休みだから、多少は平気」

ゲンマはカカシの肩を抱えるようにし、二人の影は上忍棟の中へ消え

ていく。

 

 

 

テンゾウは火影から頼まれた巻物を持って、カカシの後を追った。

カカシの住む上忍棟の建物が近づくころ、カカシの姿を捉える。声を

かけようとした時、カカシが建物の影に引き込まれた。咄嗟に気配を

消し、瞬身でそばまで近づく。

たとえ里内であったとしても、敵という可能性もある。細心の注意

でそばの立木に移り、カカシの引き込まれた方を見ると、建物の影で

カカシは壁際に立ち、男から口付けをされていた。

 

長髪の、テンゾウの見知らぬ男がカカシを抱きしめている。その長

い口付けを、カカシは逆らうことなく受けている。木の葉の正規部隊

の服を着ており、無論敵ではない。無抵抗なカカシの様子が、二人の

関係を表している。

 

二言、三言、言葉を交わした二人が、建物の中へ消えていく。

なるほど・・・、とテンゾウは思う。

なるほど、そういうことか。

焦がれたカカシの思わぬ姿に、テンゾウはその場に立ち竦む。

全身から力が抜けていくような感覚に陥り、動けない。

 

半時後、上忍棟から長髪の男が出てくる。テンゾウはその男とすれ

違いながら、上忍棟に入りカカシの部屋をノックした。

「先輩、テンゾウです。火影様から預かり物を持って来ました」

やや間があり、中からカカシがドアを開けた。

 

シャワーを浴びた後のタオルを肩に羽織ったまま、室内着を着たカ

カシが現れる。

任務後に別れた直後より、やや疲れた様子が情事を連想させる。

「ああ、これか。悪かったなテンゾウ、わざわざ家まで」

「いえ、ついでがあったもので」

「そうか」

「では失礼します」

 

シャワー後のカカシは石鹸のよい香りが漂う。男からの口付けを受

けていたカカシがフラッシュバックする。

この人はあの男の前で、その肌をさらすのか。カカシへの想いが身

体中を締め付ける。

挨拶もそこそこに、上忍棟を出て走る。あてどなく、ただ闇雲に走

る。カカシへの想いを断ち切ることは叶わない。むしろ、いっそうに

募っていく自分の感情に向き合う。

先輩が好きだ・・・・・。どうしようもないほどに。何があっても、

彼を思う気持ちは変わらない。

 

                            続く