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ベッドに横たわる彼は白い肌をほんのり紅潮させて、見つめる僕
の視線から逃れようと、顔を横に向ける。
「・・・テ、テンゾウ・・・。突っ込んだまま人の顔じっと見るの止めろよ・・・。」
「すいません・・・。相変わらず綺麗だなあと思って見とれてました。」
「・・・この体勢じゃなかったら、今頃雷切の餌食だぞ、お前・・・。」
「良かった、この体勢で。」
「もう!いいから・・・早く・・・。はやく・・・あ・・・・。」
焦れて続きを促す彼に、僕はゆっくりと動きを再開する。僕の動
きに呼応して、カカシさんは身体を捩り、喘ぎを漏らし肌はさらに
赤みを増し、絶頂へと昇っていく。
後輩の僕に身体を開く事をよしとして、美しく乱れるこの人に
何度身体を重ねても、僕は本当にいつも見とれてしまう。そしてあ
らん限りの想いを彼に注ぎ込む。
僕が彼の身体から離れても、カカシさんはまだぐったりと横たわ
っている。
「大丈夫ですか・・・?」
「大丈夫じゃないよ。途中で止めたかと思うと、バカみたいに動い
たり、ついていけないよ・・・。」
「だから、それは綺麗だと思って見とれていたんですよ。」
「俺、27の男だぞ・・・。綺麗とか言うなよ。」
「だって、本当の事ですから。どれ程見ても見飽きない。」
「よくそういう事、平気で言うよな・・・。あーあ、俺シャワー浴
びてくる。」
「僕も一緒に。」
「やだよ。ばか。」
僕は、彼の身体を支えて起き上がるのを手伝う。僕の言葉にあき
れた風を装って、でも本当は照れているのが今の僕には判る。
彼と入れ違いに僕もシャワーを浴び、ソファでビールを飲む彼の
横に座る。僕は彼の飲みかけのビールを横取りし、飲む。カカシさ
んが怒る。
「もう、自分で冷蔵庫から出せよ。」
彼は外であまり怒ったりしない。いつも穏やかで、何事にも動じ
ない。その彼が、僕には色々な表情を見せる。見ていると楽しい。
「二人一緒に長期に休みが取れるのは、久し振りですよね。」
「そうだな・・・。お前は暗部で一番忙しいんじゃないか。火影の
信頼が厚いから。」
「あなたに追いつきたくて、努力はしました。」
「俺も一人になったらなったで、S級任務ばかり回ってくるし。」
「子供達はそれぞれ三忍のところで修行中ですもんね。」
「うん・・・。サスケも、ある意味修行なんだろうな。大蛇丸のと
ころで。」
少し溜め息をついた彼の肩を僕は抱いた。彼は素直に僕の肩に頭
を凭れさせる。
「僕は、どこにも行きませんから・・・。」
「当たり前だよ・・・。」
僕は彼に口付けする。彼が淋しさを吐露するのも僕の前だけだか
ら、彼を慰める事が出来るのもやはり僕だけなのだ。
「髪、まだ雫垂れてますよ。ちゃんと乾かさないと傷みますよ。」
「髪が傷んで禿げたら、俺の事嫌いになる?」
カカシさんが少し悪戯っぽく聞いてきた。
「まさか、僕は20年前からあなたの事好きなんですよ。禿げるく
らいで嫌いになりません。」
「20年前は俺の事、女の子と思ってたんだろ。」
「確かに間違えてましたけど。女の子でも、禿げでも、人間じゃな
くても僕はあなたの事が好きですよ。」
「人間じゃなくてもって、何だよ。」
「ほら、生まれ変わって、人間以外のものに生まれてもですよ。例
えば猫とか。」
「俺が猫ならお前も猫に生まれるの?」
「そうですよ。」
「あはは、お前は今でも猫っぽいけど。魚ならどうするの?
見つけるの大変だよ〜。海は広いからさ。」
「それでも、僕はあなたを見つけますよ。」
「・・・じゃあ、生まれ変わっても俺は先に生まれないとな。
お前に見つけてもらわなくちゃならないから。」
恥かしさを隠すように小声で言うあなたが心から愛しい。僕はみ
たび彼に口付けする。耳に吐息を吹きかけ、首筋に唇を這わせ、シ
ャワー後に着ていた室内着をめくり、胸の頂きを指で摘まむ。
「テンゾウ・・・。シャワー浴びたとこなのに・・・・。」
抗議を口にしても、身体は僕の愛撫に従順で、もう一度裸身を曝
していくことを、受け入れている。
彼を愛撫しながら、その肌に痕を残しながら、本当に僕は真剣に
思う。僕に二番目の恋は永遠に訪れないと。
何度別れても、何度生まれ変わっても、あなたが人間でも猫でも
魚でも、僕はあなたと同じものに生まれて、あなたを見つけ出し、
きっとあなたに恋をする。
僕は彼を貫き、何度も何度も彼の中を行き来する。やがて、僕達
は一緒に高みを昇り詰め、時を同じくして絶頂を迎える。
何度抱いても、何度でも僕はあなたに見とれてしまう。
だから、僕に二番目の恋は訪れない。こうして、僕はあなたを、
永遠にあなただけを愛しているから・・・。
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