12ページめ
僕は、それからの彼との会話をよく思い出せない。初恋の少女と
再び出会えた奇跡の不思議さを思い、過去と現在を心が何度も行き
来していた。
しばらくして僕は先に退院し、その数日後カカシさんも無事に退
院する事が出来た。
僕の方が早く回復していたので、カカシさんが退院する時僕は彼
に付き添い、家まで片づけを手伝いに行った。
「悪いな。お前も病み上がりなのに。」
「僕はただの怪我だったし、チャクラ不足のカカシさんより体力あ
りますから。」
「うーん、なんか妙に腹立つな。体力不足を後輩に指摘されると。」
「そうですね。すいません。言いすぎました。」
僕が素直に謝るとカカシさんが慌てた。
「あれ、冗談だよ。テンゾウが素直だと、なんか調子狂うな。」
僕は、本当に心から反省していた。今まで自分の力を過信してい
て、それが言葉にも態度にも出ていた事を。そうして結局無茶をし
て、彼を危険にさらし辛い思いをさせた。
「カカシさん。僕は今回色々反省すべき事がたくさんありました。
これからは、状況判断が的確にして、周りに迷惑をかけるだけの動
きはしません。」
カカシさんが僕の方を見た。
「そう・・・。テンゾウ。偉いね。」
そうして、彼が僕の頭を撫でた。
細身の彼の腕。もう傷などはなかった。子ども扱いに少し淋しく
なる。でも仕方ない。僕はまだ14歳で、出来ない事もたくさんあ
る。それを肝に銘じて、これからもっと修行して、研究して、彼を
守る事が出来るように、今から頑張るんだ。
僕の頭を撫でていたカカシさんが、ふいに真面目な顔で僕の方を
見た。
「テンゾウ・・・。ほんとうにもう無茶はするなよ。」
「はい。」
「お前が大蛇丸のところから助け出された時、他にも子供がいたの
を知ってるだろう?」
「はい。でも助かったのは僕だけだったんですよね。」
「うん、でも詳しい人数は聞いてないよね。」
「何人いたかは知らないですけど。」
カカシさんは僕から視線を外し、少し遠くを見るような表情をし
た。
少しの沈黙の後、話し始める。
「1人2人じゃなくてね。たくさんいたんだよ。救出に向かった4
代目たちも、全員助けようと頑張ったらしいんだけどね。戦闘中に
大蛇丸の手下どもが保育器を壊したり、実験そのものに耐えられず
すでに亡くなっていたり、病院までは息があった子もいるらしいん
だけど、結局はね・・・。助かったのはお前一人。」
カカシさんが一息ついた。
「俺はすでに中忍だったけど、大蛇丸の実験室のような危ない所は
4代目に止められて、そこには行ってない。でもさ、合同葬儀には
参加したんだよ。本当に小さい棺が、いくつもいくつもあってね。
参加したみな、泣いていたよ。その棺のあまりの小ささが切なくて
ね。」
僕はふいにカカシさんに抱きしめられた。僕は驚きのあまり、そ
のまま動けない。
「テンゾウ・・・。たった一人助かった子供がいるって聞いてお前
に会いに行ってから、俺は常にお前の事気にかけていたよ。3代目
に様子聞いて、元気で育っていくのが嬉しかった。だって、お前は
助けられなかった子どもたちの分まで幸せに生きていく権利があ
るから。だから、本当にもう無茶するな。」
ああ・・・。そうか・・・。
だから彼は僕にあんなにも優しいんだ・・・。
僕は、ずっとずっと知らない所で、彼に見守らていたんだと、抱
きしめていてくれる彼の優しさが、僕の身体と心を覆った。
それから3年の歳月をかけ研究を重ねて、僕はチャクラに反応す
る追跡用の種を開発した。
彼を見失う事がないように。誰よりも早く彼の元へ向かえる様に。
さらにそれから7年後、捕虜になってしまった時から10年後
僕が彼を女の子と間違えた最初の木の葉病院での出会いからは約
20年の時が過ぎ、僕は、またベッドに横たわる彼の顔を見つめて
いる。