ワーキングホリデー 過ぎゆく時に佇む

奥の間

 

 

 過ぎゆく時に佇む

 

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カカシほら、そんな難しい顔しない。

笑うと可愛いのに。

あはは・・・。ごめんごめん、可愛いは無しだっ

たね。

でも、ほんとに可愛い・・・はいはい、止めます。

あ、あっち見てカカシ!

何もないよー、だまされたね。

ほらあ、怒らないの、あはは・・・。

 

 

 

 

 夢を見た。随分昔の夢。

 

あまりにも幼く中忍となり、周囲の大人たちに

負けない様必死に自分を作っていた俺の前に現れ

た、強くて優しい日の光の様な明るい笑顔の人。

 

俺は俺のままでいいんだよと肩の力を抜くよ

うにいつも気遣ってくれた先生。

 

 朝日がカーテンの切れ目から射しこみ、カカシ

は眩しさで目を覚ます。太陽の輝きがかの人を思

い起こさせたのか。夢うつつのまどろみの中、今

しがた見ていた夢を反芻する。

 

 どうして・・・。どうしてこうも忘れられない

のか・・・。

いや、時を経て、記憶は少しずつ霞んでいくも

のなのに、そうさせない存在がそばにいる。

 

 日ごとに似て来るその真っ直ぐな蒼い瞳が、金

色に輝くその髪が、歳以上に大きく見えるその背

中が、霞んでいくはずの記憶を引き戻す。

 

 ベッドから身を起こし、カカシは窓際に立つ。

 

自分がこうして病院のベッドにいる中、今頃か

の人の忘れ形見であるナルトは、砂影奪還の際に

サソリから得た情報を元に、大蛇丸の部下となっ

ているスパイと接触するミッションに、サクラと、

今はヤマトと名乗る暗部時代の後輩と参加してい

る。

 

 暁との戦いで酷使した左目がつと痛む。カカシ

は瞼を手で押さえこんな時に役に立たない己のチ

ャクラの限界に、ふ―とため息をつく。

 

 

 二人の事は心配であるが、信頼する暗部時代の

後輩がうまく率いてくれているという安心感はあ

る。部下を統率する能力に長けている上に、九尾

の力をコントロールする初代火影の遺伝子を持っ

ているテンゾウ。

 

 出発前挨拶には来たが、10日後に迫っている

期日を考えれば、それとて無理に時間をやりくり

したのだと思う。

僅かな時間顔を見せ、任務後に改めて来ますと

すぐに部屋を出た。

本来会ったこともないメンバーを率いて、重要

任務につくなどあり得ないことだ。

敵の情報収集と、メンバーの情報収集を同時に

行い、作戦を構築していく。それも相当にtight

なスケジュールで。

 

それが可能なのはテンゾウだから。

 

会ったのは本当に久しぶりだが、随分と落ち着

いた雰囲気になっていた。

 綱手様が信頼するほどの忍びになっているのだ

と思うと、素直に嬉しい。

 

 あいつがいれば大丈夫と思う。

 

 昔・・・泣かせたこともあったが・・・。

 

あいつなら、周囲が放っておかないだろう。時

間がなくてただ挨拶を交わしただけだったが、き

っと今はもう、いい人に巡り合えていると思う。

 

 

 左目を庇い、カーテンを閉め朝日を遮る。ベッ

ドに戻りながらカカシは再びナルトの事を考える。

こんなに時間だけは持て余す今、以前から考え

ていた事をまとめなくてはならない。

 

ナルトが九尾の力に頼らないで済む方法、あい

つ自身の力を引き出す事。暁の能力の高さは、自

身が対峙してよく判った。

大蛇丸の元に去ったサスケもしかり。それに対

応出来る力が必要だ。

 

 ナルトの力を引き出す方法、それもあまり時間

はない。どうすればいいのか、考えている間はそ

れに集中してしまえる。カカシはベッドに再び横

になりながら、ナルトの修業について思考を始め

た。

 

 

 

<奥の間>  <2>