「ただいま・・ブッ・・。どうしたんですか?」
テンゾウが玄関を入ると、昨日22歳になった男が,
クッションを両手に抱えて、立っていた。
「遅い!」
カカシは一言そう言って、ソファの方へ戻ってまた寝転がった。
「ああ、すいません。一軒目にいい食材がなかったんですよ。それで、遠出して。せっかくですから、先輩にいいもの作りたくて・・・。」
テンゾウがカカシの側へ寄った。
「寂しかった?」
「お前、誰に言ってるの。子供じゃないんだから。退屈だったから怒ってるの、それだけ。」
テンゾウは、クッション抱えたまま偉そうに話すカカシが可愛かった。思わず笑顔になる。
こいつ、ムカツク。何でそんなヘラヘラ笑ってるの。
「先輩は何してたんですか?」
「俺はイチャパラ読んでたよ。」
「へー・・。クッション抱えて?」
「・・・・。」
うわ・・ほんとだ、クッション持ったままだった・・・。あ〜、顔が赤くなるのが自分でも判る。
「寂しかった?」
何で、同じ事2回も聞くのよ。
すぐ帰るって言って2時間ほったらかしにされたら寂しいし、不安に決まってるじゃん。
自分は辛い思いはさせないって言ったでしょ。
もう、今度は無理だから。もう今度、1人残されたら耐えれない・・・。
10代の時ですら何度、一緒に逝こうと思ったことか・・・。
バカだな・・俺・・。留守番してただけなのに、何で昔の事思い出すんだろう・・。
無意識に涙があふれてきて、カカシは思わず、クッションに顔をうずめた。
慌てたのはテンゾウだった。
「せ、先輩。どうしたんですか?先輩、先輩。」
カカシはクッションに顔をつけたまま。声も出さず泣いている。
テンゾウは、クッションに顔をうずめたままのカカシを両手で抱きしめた。
「すいません、心配かけたんですか?僕はどこにも行かないですよ。先輩の側にいますから。」
何度も何度も囁いて、カカシがやっと顔を上げた。
泣いても美しいカカシの顔。
すぐに唇を奪った。
カカシがもう1人でクッションに顔をうずめて泣かないように。
そのまま、ソファへ押し倒す。そばに居ることを伝えたくて。
優しく、脆いガラス細工を扱うように丁寧に、その身体に、テンゾウの想いを刻み込む。
カカシも泣き声のような喘ぎを押さえる事も出来ぬまま、全身で、テンゾウの想いを受け止めた。
自分では起きれなくて、テンゾウに抱きかかえられるようにシャワールームへ行く。
ふと、鏡が目に入った。怒り爆発。
「テンゾウ!腕!腕!丸見えじゃん!どこにつけてくれてんのよ!
お前、暗部服のデザインわかってるだろ!明日は任務入ってるのに!」
肩から上腕に残るテンゾウから愛された痕。
「あははー。すいません。でも僕とのツーマンセルだからいいじゃないですか。」
「火影様のとこに行かれないじゃないか。」
「そこは僕1人で行きますよ。上手く言って。ね、機嫌直して。料理美味しいですよー。期待して待ってて下さい。」
「おいしい?」
「美味しいです。大体14日に1回作ってますし。」
何か誤魔化された気がするけど。
でも、ほんとはいいんだ。テンゾウだったら。過去を引きずる自分を、それごと愛してくれる人だから。
ほんとは2日前に食べるはずだったテンゾウの研究した手料理が、
やっと日の目を見て16日は過ぎていった。