[PR]城下町 綾なす想い

螺旋の庭荘

 

 

綾なす想い

 

Chapter12

 

 

 

男同士の共同生活が始まった。

 

オビトはカカシに家事をさせようとはしなかったが、

さすがに暇なので自然と手伝うようになった。時折二

人で買い物に行き、ショッピングカートを並んで押し

たりしていると、奇妙な契約の上に成り立っている関

係と、現実の穏やかに流れていく時間とのギャップに、

一体オビトは何を考えているのだろうと思う。

リンを失った悲しみのやるせなさをぶつける矛先と

して、この契約を思いついたのかと思っていたが、そ

れにしては、オビトは随分カカシに気遣いをしている。

ぶっきらぼうな言葉は、その気遣いを悟られぬように

しているためだと、カカシにはもう判っていた。

 

 

 

 

オビトが仕事でパソコンに向かっている時、カカシ

は邪魔をしないように録画の映画を見たり、ソファに

寝転がって本を読んだりしている。

 

 時折オビトはそんなカカシに不意に触れてくる。す

っとそばに来て、カカシの持つ本をそっと取り上げる。

 

「ちょっと気分転換だ。やらせろ」

 

 乱暴な言葉は、オビトの精一杯の虚勢。

 

 口づけも、カカシの服の下から手をいれて胸の突起

に触れる仕草も、もう何度か抱き合っているにも関わ

らず、いつも躊躇いがちだ。

 愛撫を全身に施し、カカシが十分にリラックスした

頃にようやく後ろを解しにかかる。

 

「う・・・」

 

何度経験しても、両足を赤子のように開かされてあ

らぬ場所に指を入れられるには羞恥が芽生える。ただ、

オビトはどこまでも丁寧にカカシの快感を引き出しす

ことに熱心で、いつの間にか請う気持ちにさせられて

いる。

早く・・・早く繋がりたいと・・・。

 

「あ、ああ・・・オビト・・・・あん・・・」

 

 貫かれて思わず漏れる声・・・。自分の耳を塞ぎた

くなるが、オビトに何度も中を行き来され、感じると

ころを擦り上げられると、感覚が麻痺していく。

 オビトの背中に手を回し、オビトが仕掛けてくる口

づけに夢中に答える。時折乳首を摘まれ、その度に身

体が跳ねる。

 最初は受け入れることが辛かった秘部も、今ではも

っともっと奥へと願ってしまう。

 

「カカシ・・・カカシ・・・」

 

 カカシを抱いている時のオビトの表情はいつもどこ

か苦しげで、泣くのではないかとさえ思わせる。

 

 リンを想っているのだろうか・・・。本当はリンの

名を呼びたいのだろうか・・・。

 

 リンの代わりだと、ただそのために抱かれているの

だと頭では理解していても、心は押しつぶされる。

 繋がることを欲しながら、傷ついている自分に半ば

呆れながら、自分の名を呼び最奥に情を放つオビトを

受け止めていた。

 

 

 

 

「明日、墓参りに行くよ」

 

 夕食時、カカシはカレンダーに目を向けながらオビ

トに伝えた。

 

 オビトがカカシを見つめる。

 

「誕生日だな・・・」

 

「ああ」

 

 リンが亡くなった命日は御家族がリンを偲ばれてい

るだろうと思い、カカシは毎年リンの誕生日にそっと

墓を訪れていた。

何より春の陽射しのように朗らかで暖かみのあるリ

ンという少女に会いにいくなら、この世から失われた

日より、生まれてきた誕生日の方いい。

 

「よかったら、お前も一緒に行かないか?」

 

 カカシの誘いにオビトは首を振る。

 

「俺も行くけど、お前とは時間をずらせる。リンも

お前に会いたいだろ」

 

「一緒に行った方が喜んでくれると思うけど」

 

 オビトは再び首を振る。

 

「一緒には行かない」

 

「そうか・・・」

 

 カカシはもうそれ以上誘いはしなかった。

 

「お前はいつ行くんだ?」

 

 オビトがカカシに訊ねる。

 

「そうだな・・・。まあ午前中に」

 

「じゃ、俺は午後に行く」

 

「わかった」

 

 それから二人の中でリンという名前が出ることはな

く、静かな時間が流れていった。

 

 

Chapter11  Chapter13