[PR]国指定重要無形民俗文化財 綾なす想い

螺旋の庭荘

 

 

綾なす想い

 

 

Chapter13

 

 

カカシはリンの墓の前で正直に今の状況を伝えた。

オビトに再会し、会社の合併を条件に今もリンを好き

なオビトと、身代わりで身体を繋げていることを。

 

「変なこと聞かせてごめん・・・。同性のオビトが好

きなんて昔は正直に言えなかったけど、今更リンには

嘘つきたくないから言うよ。オビトの条件は俺にとっ

ては結果的に望んでいる状況だったんだ。でも、あく

までリンの代わりだから、俺も時々辛くなるけどね。

契約は後一週間だ。それが終われば・・・。どうなる

かな。オビトとは同じ会社になる予定だけど、あいつ

は基本的に出社しないから、このまま何もなかったよ

うに流れていくのか・・・。後からあいつも来るはず

だ。どんな話しをリンにするんだろ」

 

 

 

 

リンの墓参りを終え、カカシはオビトと共同生活を

おくるマンションの地下駐車場に車を停めた。

 

時間は昼過ぎており、一緒に行こうと誘ったが別々

に行く事を選択したオビトは入れ違いにリンの墓参り

に出発しているはずで、カカシは渡されている合鍵で

部屋に戻った。

 

やはり部屋にオビトの姿はなく、カカシはどうせ一

人だろうと簡単に済ませるためにコンビニで買った弁

当をテーブルに置く。

 

ふと、A4の書類が目に留まる。手に取り、すぐにそ

れが契約書だと気づく。

 

カカシのいる会社が、オビトと叔父のうちはマダラ

が共同経営する会社に吸収合併される内容。ざっくり

とだが目で追って行くと、当初の約束通りカカシの会

社の従業員はそのままの給与水準を維持し再雇用され

るとなっている。

 

約束は守られた。カカシは安堵する。元はそれが目

的でここに来たのだ。自分はともかく、後輩たちを失

業の憂き目にあわせないで済むようだ。

もちろん外様状態で最初は居心地も悪いだろうが、

仕事である限りそれは仕方がない。地位を確保したあ

とは、それぞれ自分で能力を磨いていくしかない。

 

 書類はカカシ側の社長である綱手が署名する欄だけ

が空白となっていた。

 

 カカシはさっさと弁当を食べて、早速これを自分の

会社へ持っていこうと考えたところで、なんだか違和

感を感じた。

 

 どうしてだろう。何かが違う。

 

 ふと、いつもオビトが仕事に使っていたノートパソ

コンがないことに気づいた。

 

 オビトの書斎は別にあり、そこには容量も大きいデ

スクトップパソコンやプリンターなど、しかも複数台

並んでいる。

しかし、オビトの言い分によるとアイデアは突然思

いつくもので、そんな時用にメモがわりにざっと考え

を打ち込めるように、ノーパソはいつも無造作にリビ

ングのテーブルや、ソファの置いてあるテーブルなど

に置いてあった。

 

 俺のアイデアの金庫みたいなもの。これがなければ

仕事ができないと、オビトが言っていたノートパソコ

ンがない。

 

 

 充電しているだろうかとオビトの部屋を覗く。カカ

シは小さく驚きの声をあげる。

 

「え?・・・」

 

 オビトの部屋は幼い頃の彼のイメージと違い随分綺

麗で、当初ここへ来たばかりの時カカシを驚かせたが、

それでも仕事に夢中になると、どうしてもある程度は

ものが散らばったりする。

 

 オビトの書斎は特にそうで、アイデアが固まりいざ

パソコン内でゲームを構築していくときは、この部屋

のパソコンを使っており、周辺のプリンターに紙が残

っていたり、メモがあったり、いわゆる現在使われて

いる部屋という雰囲気があるものだ。

 

 その使用中の部屋という感じがまるでなかった。プ

リンターの紙も綺麗に片付けられており、電源自体が

全て切られている。

 

 くずかごの中身も全て片付けられ、そこに人の気配

を感じない。

 

 

 カカシは慌てて他の部屋も見て回った。

 

 一緒に暮らし始めて幾度となく身体を繋げた寝室も、

まるでモデルルームのような無機質さで、ベッドの上

にクロスがかけられている。

 

 まるで長期に家を空ける準備をしているような・・・。

しかし符に落ちない。

 ここはオビトのマンションなのだ。カカシの会社と

の契約が成立しても、出て行くのはカカシのはず。第

一、当初言われていた一ヶ月はまだ一週間先だった。

 

「どうして・・・?」

 

 カカシが立ちすくんでいると携帯が鳴る。

 

 オビトかと慌てて取るも、画面は自分の会社の綱手

社長となっていた。

 

「カカシか」

 

「はい。お疲れ様です」

 

「お前こそ、本当にお疲れさん。そっちの会社から正

式に連絡もらったぞ。お前の働きが良くて、不安は解

消されたから当初の予定より一週間早く合併の契約書

を交わすと。お前に渡したと聞いたが」

 

「はい、持っています。今から届けます」

 

「そうか、じゃ会社で待っている」

 

「あ、あの綱手社長への連絡は誰から?」

 

「うちはマダラ、そっちの社長だ」

 

 オビト一人の行動ではないのだ。もう正式に一ヶ月

を待たず契約が交わされる手はずとなり、カカシはオ

ビトにとって不要となったようだ。

 

 オビトがいない。

 

 カカシはその現実を受け止めきれずに立ちすくむ。

 

 オビトは本当に墓参りに行ったのか。行ったとして

も、もうこのマンションに戻る気はないのか。

 

 オビト・・・。どうして突然現れて、どうして何も

言わず突然姿を消す?

 

 カカシは言いようのない苦しい気持ちになる。

 

 

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