<Ccr>その1
シャワーを終えたカカシが、全裸のまま髪をタオル
で拭きながら寝室に向かうと、テンゾウに呼び止めら
れた。
「ベッドじゃなく、ここに座って」
「・・・椅子?」
「ええ」
ダイニングテーブルの椅子が一脚、リビングの真ん
中に移動されていた。テンゾウの有無を言わさぬ態度
に、カカシは黙って従う。バスタオルを肩にかけ椅子
に座ると、その両手を背もたれ側に回され、紐で後ろ
手に括られる。
そう、今日カカシがこの部屋を訪れた時はすでに、
テンゾウの機嫌は悪かった。原因は判っている、昼間
のあれだ。
テンゾウからの電話を無視した。携帯をとれる状態
ではなかったのだ、あの時は・・・。かけなおす事も
しなかった。ここに来るぎりぎりまで、彼と一緒にい
たから・・・。
ここへ来るなり謝ったが、テンゾウの不機嫌はその
ままでカカシはさっさとシャワーを浴びてベッドにな
だれ込みSEXでうやむやにしようとしたが、やはり
駄目だったか。
「今日・・・患者会だったんでしょう」
ほら・・・来たと、カカシは思う。患者会は本当だ、
でもその後・・・。
テンゾウは、カカシの手を椅子の背もたれに後ろ手
に括りつけると、今度はしゃがんで、足を椅子の脚に
括り始める。
「足も括るの?こんなのは初めてだな」
大人しく縛られながら、カカシが機嫌を取りなすよ
うに陽気な声で話かけると、テンゾウにぎらっと睨ま
れた。
「患者会は昼には終わってたんですよね」
「だから、お前から電話貰った時は、買い物してて、
携帯をかばんに入れて気づかなかったって、さっき言
っただろう」
「患者会には、他の小児科医も来ていたんですよね。
買い物は、医師たちとは別れて一人でしてたんです
か?」
「そうだよ。一人」
テンゾウは、カカシの右足を椅子の脚に括り終え、
左足に取り掛かる。
「カカシさんが夜まで来られないって言っていたから、
僕も昼間買い物に出てたんです」
「あ・・・そうなの・・・」
カカシは一瞬胸がドキリとなる。まさか・・・。
カカシの足を括り終えたテンゾウは、カカシが肩に
かけていたバスタオルを取り払い一糸まとわぬ姿で、
身動きできぬように椅子に縛られたカカシの頬を両手
で包みその顔を持ちあげた。
「出先であなたを見かけたけど、一人じゃなかったで
すよね」
テンゾウは、カカシの髪をやさしく撫で上げながら、
言葉を続ける。
「電話に出ないくらいで怒るほど嫉妬深くはないです
よ、僕は」
お前が嫉妬深くなくて、誰が嫉妬深いんだとカカシ
は思うが、これ以上テンゾウの怒りを増長しないよう、
それは黙っておいた。
「横に、ぴたりと彼がいた。波風教授」
「ああ・・・それは患者会の後、駅まで一緒に歩いて
たんだ。駅で別れてから俺は一人で買い物に・・・」
「僕は、あなた方が一緒に歩いている時に、その時に
電話したんですよ」
「ええと・・・」
「あなたは、携帯をポケットに入れてて、着信に気づ
いてちらと画面見ましたよね。それで僕だと気づいて、
無視した」
俺、今どんな顔しているのだろう、とカカシは思う。
陳腐な嘘が暴かれて、言い訳できない事実を告げられ
た男はどんな顔しているのだろう。
「僕はあなたとそう離れていない距離にいたけど、
あなたはまるで気づかず、携帯をさっさと終い波風教
授と話しながら歩いていた。駅には向かってなかった
ですよ、僕が見た時は」
テンゾウは、指先をカカシの髪から耳朶に移動させ
優しく撫でる。右手で耳朶を、左手でカカシの乳首を
撫ぜながら、テンゾウはカカシに口付け、すぐに舌を
絡ませる。
「ん・・・」
テンゾウの指の動きに、激しいディープキスに、テン
ゾウからの愛撫に慣れた身体は、あっという間に快感
を拾う。縛られて身動きのできない事がもどかしくな
る。
テンゾウは唇を離すと、すでに主張を始めた胸の突
起への愛撫を始める。そして手は、カカシの中心を握
りしめ徐々に梳きあげる。
「はあ・・テンゾウ・・・」
ひたすら快感を与えられ、カカシは身もだえしたく
なるが縛られた身はどうすることも出来ない。
「相変わらず、嘘が下手なカカシさん。波風教授と
どこに向かっていたんですか?」
「それは・・・ああ・・・テンゾウ・・・」
テンゾウは、カカシへの愛撫を続けながら、耳元で囁
く。
カカシの中心はどんどん熱を持ち、硬く立ちあがっ
て先端からは先走りが零れ始める。
「どこにも・・・ちょっとお茶を飲んだだけ・・・」
「やましいことがないなら、どうして嘘つくんです?」
「お前は、どうせ信じないだろう・・・・ああ・・ち
ょ・・・テンゾウ・・・」
テンゾウは、カカシの中心への刺激を加速させる。
先走りを指でからめ取るように掬い、舐めて見せた。
そうして椅子の前に屈み、カカシの起立しかけている
ものを口に含む。
「く・・・」
カカシは首をのけぞらせ、重ねられる快感に唇を噛
みしめ耐える。
テンゾウから絶え間なく自身をすいあげられ、舐め
られ、噛まれ、カカシはとうとう耐えきれなくなる。
「テンゾウ・・・!もう、無理・・・!いく・・・」
「おっと。まだ駄目です」
テンゾウは唇を離し、ギュッと硬く起立したカカシ
のものを指で絞める。
「いきたかったら、正直に話して。波風教授と、どこ
に行ったんですか?」
「だから・・・お茶・・・!テンゾウ!」
「お茶って、喫茶店で?」
「そうだよ、喫茶店!もう・・・。いかせろ!」
指できつく締められ、射精をギリギリのところで止
められ、快感を欲する言葉を吐く。
「波風教授は、セカンドハウスを持ってるって、以前
カカシさんが言ってましたね」
「え・・・?そ、そう・・・?そんな事、俺言った?」
「ええ、書斎代りのセカンドハウスを借りてるとか何
とか・・・。以前、循環器学会の研究をしてた時に」
不意にテンゾウはカカシの硬く立ちあがっているも
のから手を離す。
「あ・・・」
「そこに、行ってたんじゃないんですか?あのあたり
なんでしょう、教授のセカンドハウス」
「ち・・違う。行ったのは喫茶店・・・」
椅子に縛られ、テンゾウからの愛撫で全身が火照り、
先端から愛液をトロトロと零れさせながら、カカシは
首を振る。
テンゾウは怒っている。怒ったテンゾウに今日はこ
うして焦らされる事を繰り返されるのだろうか・・・・。
縛られて身動きの取れない状況で、まだまだ解放して
くれそうにない
恋人を見上げる。いつもいつも、自分だけを見つめ、
自分だけを想い素直に嫉妬心をぶつける年下の愛しい
恋人。テンゾウから与えられる戒めに、かすかな不安
と、不安を上回る期待が、カカシを支配する。
「正直に言うつもりはないんですね」
テンゾウは少し考えてから、床に置いてある自分の
バックの方へ歩き出した。
「今日は、たまった資料の整理でもしようと思って、
事務用品を買いに行ったんですよ。そこであなたを見
たんですが」
テンゾウは、かばんをごそごそしながら話しを続け
る。
「これを買ってきたんです」
テンゾウは事務クリップと、穴をあけて紙を綴る黒
い紐を取りだした。黙ってテンゾウを見つめるカカシ
の元へ、クリップと紐を手にしたテンゾウがゆっくり
と近づいた。