結婚相談所 東京 会計士 転職 エンドトキシン

宴の庭荘

 

エンドトキシン<その3

 

 

テンゾウが合鍵を使ってカカシの部屋に入ると

本人の姿は見えず、シャワーを浴びる音が聞こえた。

買ってきた鍋の材料をテーブルに置き、無意識に

ベッドに目を向ける。

 

2人がいつも愛を重ねるキングサイズのベッドに、昨夜は

波風教授が眠ったのだろうか?先ほど見た、カカシのマンション

地下駐車場から、ベンツに乗って去っていった男の横顔が

思い出されて、テンゾウの心を押しつぶす。

 

「テンゾウ。もう来てたんだな。」

いつの間にかシャワーを浴び終わったカカシが

スエットのズボンをはき、上半身は裸のまま

肩からバスタオルをかけた格好で冷蔵庫から、

缶ビール2本を取り出した。1本をテンゾウに差し出し、

自分もくいっと飲む。

「久しぶりだからさ、先にシャワー浴びといた。

テンゾウも、浴びてくる?」

 

シャワー後の、少し上気した肌を晒し、

濡れた髪を肩にかけたバスタオルで無造作にかき上げながら、

カカシはテンゾウを見つめる。

「そうですね。浴びてきますよ。」

「うん。いっといで。」

カカシがビールを飲みながら、手を振った。

 

熱めのお湯でシャワーを浴びながらテンゾウは

カカシという男は、自分に他者を惹きつける魅力があることを

充分に自覚しているのだろうと、思う。

そしてその魅力にテンゾウが絡め取られて

けして抗う事は出来ないと、その事もカカシは判っているのだ。

昼という時間など関係のない、シャワーと言う言葉を使っての

誘いにあっさりとのりながら、テンゾウはそんな自分を

自嘲する。

 

 

シャワー後、以前からカカシの家に置いてある

自分用のスエットを着て、ベッドルームに向かう。

カカシは上下ともスエットを着込んで、ベッドの上にいた。

 

「どうせ脱ぐのに、何で上を着たんですか?」

「お前だって着てるじゃないか。それに、お前に脱がせて欲しいし。」

カカシが艶やかに微笑む。

 

男女誰もが惹きつけられるだろう微笑を見つめながら

テンゾウの脳裏に、このマンションから去っていった

波風教授の横顔が再び浮かぶ。

 

「昨夜・・・病棟の歓送迎会だったんでしょう。

遅くなりましたか?」

まさに情事をはじめようという時に、テンゾウからの話しのフリに

カカシは一瞬怪訝な顔を浮かべて、返事をする。

「そうだな・・・。二次会まで出たから12時は過ぎたよ。

でもそんな話し、後でいいだろう。」

カカシの抗議を無視して、テンゾウは話を進める。

「波風教授も一緒でしたか?」

「そりゃ、小児科病棟の歓送迎会だもの。波風教授も出るよ。」

「彼はその後、ここに来ましたか?」

「は?何で?来るわけないよ。」

 

「じゃあ、その首のキスマークは誰につけられたんですか?」

テンゾウが言うと、カカシはハッと左の頚部を自分の手で押さえた。

 

2人の間に重苦しい沈黙が流れる。

 

先に口を開いたのはテンゾウだった。

「あなたの短所は最後まで嘘を突き通せないとこですね。

まあ、言い換えれば正直という長所なんでしょうが、

時には正直すぎるのも、人を傷つけますよ。」

「お前・・・。ひっかけたな。キスマークなんかないだろ。」

「ないのに、手で隠したという事は、そういう行為を

したという事ですよね。」

「飲み会がここの近くの店だったから、先生は車をこのマンションの

駐車場に止めたんだ。酒を飲んだから、抜けるまで泊まっていった。

それだけだ。お前にやましい事はしてないよ。キスは・・・

挨拶代わりだって言っただろう、前に。」

「いつから日本人の挨拶が、キスになったんですか。」

「え〜と、21世紀になった時だったかな・・・。」

 

カカシの苦しいだけの冗談にテンゾウは

無言で睨み返した。

 

カカシが観念したようにうなだれながら

ぼそりと呟く。

「先生とは・・・ほんとに何もないよ・・・。」

カカシから発せられる先生と言う言葉は、

深い情愛が込められているようで、テンゾウの心を抉る。

 

 

テンゾウはカカシに近づき、上のスエットを脱がせた。

「腕、出して。」

「縛るの?」

カカシの質問には答えず、脱がせたスエットを使い

カカシの両手首を縛る。カカシは逆らわずにいる。

そのまま仰向けにベッドに横たえ、下着ごとズボンも脱がせる。

均整の取れた筋肉質の身体でありながら

全体には細く、そして肌は白く肌理の細かい

滑らかさを保っている。

 

スエットで縛られた腕を自ら頭上にして、

美しい身体全体で、熱く潤んだ瞳でテンゾウを誘う。

波風教授にも、こんな表情を見せたのだろうか?

テンゾウの脳裏に、消しようの無い残像を描く

波風教授の横顔。全身を駆け巡る嫉妬という名の毒。

 

テンゾウから与えられるセックスという名の

甘美な時間を待つカカシに、テンゾウは

自分の中を巡る毒をカカシに代謝してもらおうと思い立つ。

ベッドから離れてクローゼットを開ける。

扉の内側に、ベルトが何本かかかっている。

その中から一番丈夫そうな物を選んで、再びベッドに近づく。

 

ふいにベッドから離れたテンゾウの動きを

カカシは訳が判らず目で追っていたが

テンゾウの手にベルトが握られているのを見て

カカシはゆっくり起き上がった。

「・・・何?ベルトで縛りなおすの?」

スエットで縛られた腕は、その気になれば簡単に外せる。

カカシは、スエットから手首をすいっと引き抜いた。

「勝手に外したら駄目ですよ。でも、腕はもういいですから

今度はうつ伏せになって下さい。」

 

カカシが両目を見開いた。

「・・・お前、まさかそれで叩くの・・・?」

「ええ。僕の傷ついた心の分だけ。」

「お前を裏切る事はしてないって言ってるだろう。」

テンゾウはベルトの端を右手に一巻きして、

反対の端を左手で掴んだ。

「そうですね。実際キスマークもないですし

彼とは何にもなかったのかもしれません。

でも何故さっきは嘘ついたんですか?

ここに来てないって言ったでしょう?」

「お前がいつもへンに勘繰るから、面倒で

実際先生はソファで寝たけど、お前信じないだろう。」

 

「彼がここに来た事事態、僕には耐え難い。

どうですか、嘘つきのカカシさん。

罰を受けますか?真剣に嫌なら、止めますが・・・。」

 

カカシはテンゾウの腕に握られたベルトを見つめた。

「・・・いいよ。お前なら・・・。その前に、キスして。」

テンゾウはカカシに近づき、その唇を重ねる。舌を絡ませ

息が苦しくなるほどに、激しく貪る。唇を離すことなく

胸の頂を指で撫でる。カカシの身体がピクリと反応し

さらに強くひねり上げるようにすると、カカシがああっと仰け反り

唇が離れた。

  少し息が弾んでいたが、カカシはそのまま自らうつ伏せになる。

 

テンゾウの目に白い肌が飛び込む。胸への愛撫を含む激しいキスで

うっすらと上気した色に染まっている。

カカシが低い位置からテンゾウを見上げる。

「いいよ・・・テンゾウ・・・。打って・・・。」

テンゾウ理性を、テンゾウの良識を、

そんなものを一切破壊するカカシの罠に取り込まれ

テンゾウはゆっくりとその極上の肌へと、

ベルトを振り下ろした。

 

                       その4