大橋ジャンクSHOW

睦みの部屋

 

 

今ひとたびの邂逅5

 

 

 

 その日の夜、カカシは久しぶりにガイとアスマと飲

んでいた。

 カウンター席に3人並んで座り、気心の知れた同期

の仲間同士の気安さもあり、かなりの酒を消費しなが

ら、ゆったりと時間を過ごしていた。ふと会話が切れ

たところでアスマがカカシの顔を覗き込むようにして

尋ねる。

 

「どうしたカカシ?」

 

「何が?」

 

「さっきから浮かない顔しているだろ」

 

「そお?」

 

「このところの任務続きで疲れているのか?」

 

「いや・・・うん・・・まあちょっとね・・・」

 

 横からガイが場の空気を壊す大声で話す。

 

「何だ、なんだ、疲れたなんてどこのおっさんのセリ

フだ?俺たちは永遠の青春仲間だろ!!がははは・・・」

 

 

 アスマとカカシは無言でガイを見つめ、さあ飲め飲

め、と周囲の無関係の客にお酌を始めた酔っぱらいの

幼馴染から離れるように、カウンターの一番奥の席に

移動した。

 

 

「アスマはさ、紅とどうなの?」

 

 カカシの不意の質問に、アスマがむせる。

 

「ごっ・・・ごほっ・・・なんだよ、急に」

 

「そんな慌てなくても」

 

「別に慌てちゃないけど・・・」

 

「付き合ってんでしょ?」

 

「やっぱ、お前は地獄耳だな」

 

「隠すことないじゃん」

 

「そうだけど・・・」

 

 アスマが空になったカカシのグラスにビールを注ぎ

ながら答える。

 

「まあ、まだ始まったばかりだけど、うまくいってる

よ」

 

「良かったな」

 

 微笑むカカシの笑顔を見て、アスマが呟く。

 

「お前に言われると正直複雑な気分だけどな・・・」

 

「え?」

 

 アスマはぐいっとグラスの残りを飲み干した。

 

「何でもないよ。お前はどうだ?前に言ってた人とは

うまくいってるんだろ?」

 

 

 カカシもアスマが注いでくれたビールを一口飲んだ。

 

「どうかな・・・」

 

 昼間に見たテンゾウと美女が脳内にフラッシュバッ

クする。

 

 

 カカシの曖昧な返事にアスマが飲みかけたビールを

カウンターに置いた。

 

「・・・うまくいってないのか?」

 

「いや、そうじゃないけど・・・」

 

「なんだよ、その曖昧な返事は。はっきりしろよ。う

まくいっているのか、いないのか」

 

 アスマの怒ったような問いかけにカカシは取り繕う

ように答える。

 

「忙しくてこのところちょっと会えてないだけ。別れ

たとかじゃない」

 

「ならいい」

 

 アスマがむすっと答えた。

 

「なんでアスマがそんなムキになるの?」

 

「俺はお前に好きな奴がいるって聞いたから・・・」

 

 それで?というような次の言葉を待つカカシの表情

を見つめ、『だから諦めた』という言葉をアスマは飲み

込む。

 

「里ナンバーワンのモテ男が失恋なんて似合わないだ

ろ」

 

 アスマは話を切り替えた。

 

「ナンバーワンのモテ男はゲンマでしょ」

 

「ゲンマって特上の?」

 

「うん。絶対あいつの方がモテてるよ」

 

「お前、ゲンマと親しいのか?」

 

「親しいっていうか・・・そうだな、まあ気は合うか

な。一緒にいるのは嫌じゃない」

 

 アスマはカカシの両腕をギュッと掴んで睨むように

見つめる。

 

「何?」

 

「いいか、ゲンマには気をつけろ。あいつは綺麗なモ

ンには見境いない、女はもちろん男でも」

 

「え?・・・う、うん・・・」

 

 ついこの前ゲンマに抱きしめられ、頬にキスされた

が、それは言わない方がいいとカカシは内心思う。

 

 アスマはカカシの腕をぐいっと自分の方へ引き寄せ

ると両腕を背中に回し、抱きしめた。

 

「お前には、ちゃんと好きな人と幸せになって欲しい。

でないと俺が許さない」

 

 長年の幼馴染の突然の行動にカカシは驚くが、馬鹿

でかいアスマに抱きしめられ、身動き出来ない。

 

「・・・アスマ?お前も酔ってる?」

 

 カカシの言葉を聞いてアスマは苦笑する。

 

「そうかもな・・・」

 

 

 アスマはカカシからすっと離れて立ち上がった。他

の客と肩を組んで大声で調子外れた歌を歌うガイの方

を振り向く。

 

「ガイ!ほらそろそろお開きだ。行くぞ」

 

 

 

前へ   続く