睦みの部屋
今ひとたびの邂逅4
二度三度、残滓までカカシの中に注ぎ込むように腰
を打ち付けたあと、テンゾウは脱力した。そのままカ
カシの上に覆いかぶさるように倒れこむ。
カカシは自分の上のテンゾウの肩を掴み、力任せに
押し返した。横に飛ばされたテンゾウを、更に押しや
りベッドから落とす。
ふいに乱暴な扱いを受け、テンゾウはポカンとカカ
シを見つめた。
「なんだよ、今のは・・・」
怒りの形相でカカシが言う。
「・・・カカシさん・・・」
「自分勝手にやりたいだけなら、人形でも抱いてお
け!」
テンゾウは慌てて謝る。
「すいません・・・そんな勝手なつもりはなくて・・・」
「待てと言っただろ!」
「はい、すいません・・・」
反省して項垂れるテンゾウを見て、カカシは、なん
とか怒りの気持ちを抑える。
「・・・やっぱり任務がキツかったのか?・・・今日
のお前はちょっと変だよ」
テンゾウは答えずにいた。カカシは任務のせいで
刺々しくなっているのだろうと心配してくれているの
に、自身の怒りの本質が実は嫉妬心なのだとは、さす
がに情けなくて言えない。
カカシは小さくため息をついて言った。
「・・・まあ、暗部の任務は極秘だからな。別にその
説明はいらないけど、でもさ、俺だって久々なんだか
ら、自分だけで完結するなよ」
そうしてカカシはちょいちょいと指でテンゾウを呼
び寄せ、ベッドに戻ったテンゾウの首に腕を回す。
「ちゃんと気持ちよくしてくれ・・・」
カカシがテンゾウの耳元で囁く。
「はい」
再び唇を合わして蜜を交換し合い、テンゾウはカカ
シを今度は大切な硝子細工のようにそっとベッドに横
たえその胸の突起に優しく舌で転がすような甘やかな
愛撫を与え始めた。
「あ・・・ああ・・・・」
艶やかな嬌声がカカシの口から漏れ、その声を聞き
ながらテンゾウはたった今射精を終えたばかりの己自
身が、固く熱くなっていくのを感じる。
この人を失いたくない。カカシの肌に愛情の痕を刻
んでいく。生涯唯一の愛しい人。このまま浚って監禁
してしまいたいと思うほど・・・。
テンゾウは自身も今まで気づかないでいた己の激し
い独占欲に内心戰きさえ覚える。
そんな思いを悟られぬよう今度は慎重にゆっくり時
間をかけて愛撫を施し、カカシの情欲を最大限に引き
出す。高められたボルテージにカカシの内壁は反応す
るように蠢く。
カカシが達するその時、テンゾウも奥深く情液を弾
けさせた。
翌日からまた互いに任務に追われ、里に戻る日はも
ちろんあるが、それすらもすれ違いで会えない日々を
過ごしていた。
ようやくまとまった休みが取れたある日、カカシは
任務続きで空っぽのままの冷蔵庫の中味を補充してお
こうと買い物に出かける。
とりあえず缶ビール、チーズは絶対、他にも保存効
くもの買わないと、などと思いながら商店街を歩いて
いると、自分自身で見ることもない身体のすみずみま
で知られている男が前から来る。
活動時には面をつけている暗部は顔を知られていな
い分、プライベートな時は町人に溶け込む。今のテン
ゾウも極一般人の装いで歩いていたが、今日はむしろ
周囲から浮き上がって見えていた。
カカシはそのかえって目立つ状態となっている原因
に目を向ける。
普通の町娘の姿だが、その美しさで周囲の人がふと
振り返る女性が、テンゾウと並んで歩いていた。テン
ゾウも女性もさも楽しそうに笑いながら、時々視線を
絡ませて話をしている。
「美男美女カップルだね」
「ほんと、どっちも素敵でお似合いって感じ」
カカシの横にいた15〜6歳位の女の子二人が、テン
ゾウと女性の方を見て会話している。
本当に、似合っていると・・・。カカシも二人を見
て思う。爽やかな若い恋人たちにしか見えない。
「ね、ね、私たちの横にいる人もかなりかっこいいよ」
「うわあ・・・ほんと」
カカシの事をチラチラと盗み見しながら小声で話し
ている少女たちの次の言葉は、もうカカシの耳に届い
ていなかった。
テンゾウと美女がまっすぐ歩いてきたので、カカシ
は思わず真横にあった本屋に入り、店の奥まで行き通
りに背を向ける。どうして隠れる必要があるのか、自
分でも説明がつかない、でも・・・。
カカシが入った店の前を通り過ぎていくテンゾウは、
傍らの女性を見ながら話しに夢中で、結局カカシには
気づく様子もなく去ってしまう。カカシは再び店を出
て、通り過ぎたその二人の背中に視線を向ける。
微かな疑惑と不安、なんでもないことと否定する感
情。これまでの忍びとしての能力や経験は役に立たな
い未知の心情に、カカシは突然向き合わねばならなか
った。