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睦みの部屋

 

 

 

今ひとたびの邂逅6

 

 

 

 ガイは完全に酔っ払っているため、支払いはアスマ

とカカシで済ませ、そのガイを二人で両脇から抱えな

がら店を出る。

 

「うぉーもう一件行くかあああ?」

 

「行かねえよ、馬鹿。支払いもしねえで」

 

 アスマが酔い得のガイに悪態をつく。

 

「おっと・・・、あぶねえ」

 

 普段から肉体の鍛錬を怠らないガイは見た目以上に

筋肉質で重量感があり、カカシとアスマで支えていて

も酔っ払った千鳥足に釣られて二人も足元がふらつく。

 

「チェッ・・・美女ならともかく、なんだってこんな

やつをかかえなきゃならん」

 

 アスマが更に毒づいた。

 

「ほんとに・・・」

 

 さすがにカカシも辟易する。

 

 アスマがガイ越しにカカシの方をチラッと振り向い

て聞いた。

 

「お前が付き合っているという人は美人なんだろうな、

はたけカカシに気に入られるなんて」

 

「美人?」

 

 カカシはテンゾウの顔を思い浮かべて、苦笑する。

 

「・・・いや、美人とは違う・・・でもまあ、それな

りに整ったいい顔をしてると思うけど」

 

「ふーん・・・。きっかけは?」

 

「向こうから先に言われて・・・。言われて俺も気づ

いた。自分も好きだったって」

 

「年下?」

 

「うん、4歳下」

 

「いずれ紹介しろよ」

 

「うん、そのうちね」

 

 

 男と付き合っていると言っても、アスマやガイなら

きっと理解し受け止めてくれるだろうと思う。そんな

ことで壊れる友情ではない。それよりも、今のアスマ

との会話でカカシは心に引っかかりを感じた。

 

 

 今アスマに説明したとおり、テンゾウは年下の後輩

だ。告白もテンゾウからで、きっと色々とカカシが気

づかないことも含め、気を使っているに違いない。

 もしもテンゾウに好きな人が出来たら・・・。テン

ゾウは正直に言えるだろうか。後輩が自分から先輩に

告白しておいて、やっぱり別に好きな人ができたので

サヨウナラ、なんて言い出せるだろうか。今日の昼間

見た美女を気に入っていても、それをカカシに言い出

せないのでは・・・。

 

「大丈夫か?カカシ」

 

 無口になり、すぐれない表情になったカカシにアス

マが声をかける。

 

「いや、大丈夫」

 

「そうか?んで、今からどうする?俺んち行くか?お

前やガイの家なら、こいつが急に大声出したら近所に

迷惑だろう」

 

「そうだな」

 

 猿飛家は木の葉の名門で、上忍寮に住むカカシやガ

イの家とは違い豪邸だ。火影となった偉大な父との軋

轢を経て、今は木の葉に尽くしている心優しき友をカ

カシは見つめた。

 

「紅は大正解だな」

 

「え?」

 

「いや、俺が女でもお前を選ぶって思ってさ」

 

 アスマはカカシのセリフにほんの一瞬言葉につまり、

そして殊更突き放していう。

 

「馬鹿か、気持ち悪いこと言うな」

 

「はは・・・」

 

 そうして幼馴染との夜は更けていった。

 

 

 

 

 五代目火影綱手がその年の中忍試験開催の挨拶に諸

国を巡る計画が発表された。

 

同行する側近たちも同時に決まる。

 

 秘書のシズネ、医療忍者としてサクラ、護衛的役割

のゲンマとライドウ、参謀の立場で奈良シカク。カカ

シは護衛兼任の副参謀として選ばれる。

 

 

 暗部は常に秘密裏に火影護衛の任務を担っており、

今回ももちろん寝ずの番となるため交代要員も含めて

複数人同行するが、それはけして発表されることはな

い。火影の移動する所、面を被り常に影の立場で同行

して当たり前の部隊なのだ。

 

 テンゾウは今回、綱手の諸国巡行の暗部側の護衛隊

長を任された。当然、公に発表されている側近達の名

前は耳に入っている。

 

「カカシさんと一緒」

 

 思わず呟き、そしてつい頬が緩みそうになる。いけ

ないと、自ら頬を叩く。

 正式訪問であっても他国に足を踏み入れる場合、危

険度は常に最高レベルで考えなくてはならない。

 

「にやけてる場合じゃないぞテンゾウ」

 

 テンゾウは自分に言い聞かせた。同行暗部のスケジ

ュール割り、火影の行動ルート、休憩場所確保、万が

一のシミュレーション、隊長としてしなければいけな

いことは山のようにある。

 

 それでも・・・とテンゾウは思う。それでも、カカ

シが正規部隊に転任になってから、初めての合同遠征

だ。戦闘ではないから話す時間が全く取れないことも

ないだろう。会えなかった期間の隙間を少しでも埋め

たいと思う。

 

ただ、特別上忍のゲンマが一緒だということが、ほ

んの僅か、心に引っかかりを残す。

 

 ゲンマは以前にカカシに抱きつきその頬にキスをし

た。結局、そのことはカカシに確認が取れていない。

聞き出そうと思ったが、見たと言うと覗き見していた

かのようでもあるし、聞けなかったのだ。

 いいように考えれば、ゲンマとカカシが一緒という

のは、二人の関係性がよく判るかもしれないと思う。

テンゾウの知らない、正規部隊のカカシの交友関係を

知るいい機会だ。ただの気の合うだけの知り合いかも

しれないし。

 

 気が合うだけで男同士がキスなんてしないだろうと

いう一方の疑念を頭の隅に追いやり、テンゾウは遠征

準備を始めた。

 

 

 

前へ   続く