ついついポチっ〜通販情報〜 いまひとたびの邂逅

睦みの庭荘

 

 

 

今ひとたびの邂逅9

 

 

結局テンゾウはカカシの部屋に行くことなくその場

を後にした。

面と向かって話せば冷静でいられる自信がない。し

かし、今回は火影遠征の護衛隊長なのだ。個人的感情

に振り回されてはいけないことはわかりきっている。

その問題を回避するには、会わないという選択肢しか

なかった。

 

 

 暗部は元々影に徹して火影を護衛する。テンゾウは

それ以後、正規の同行者として火影のそばにいるカカ

シの存在を、護衛という任務上確認してはいたが、個

人的に話しかけることはしなかった。

 

 

 

 

 今回の遠征を無事に終え、正規同行者は火影室で綱

手より労を労われて散となる。

 

「先生。お疲れ様でした。またね」

 

 同行者として一緒にいたサクラが火影室を出たとこ

ろで手を振る。

 

「うん。お疲れ」

 

 サクラに軽く手を上げ、挨拶を返していたカカシの

横にゲンマがすっと近づいてきた。

 

「カカシさん。打ち上げしませんか?」

 

「今から?」

 

「そうっすよ。せっかく綱手様から今回の同行者には

特別休暇を下さるって言われたし」

 

「うん・・・そうだな・・・」

 

 カカシは遠征中、結局話すことが出来なかったテン

ゾウのことが気になっていた。

 

 もちろんテンゾウは暗部の護衛隊長で、表立って現

われる事はないと充分理解していた。

しかし、と思う。カカシも暗部にかつて所属してお

りその様子は想像がつくが、長期にわたる護衛任務の

場合は、交代要員もある程度同行しているはず。

 テンゾウとて、多少の休憩時間はあったはずなのだ。

 

 どうして一度もカカシのところへ現れないのだろう。

 

 いつか街中で見たテンゾウと歩いていた美女がちら

つく。

 カカシより4歳若いテンゾウ。親しげに歩いていた

二人。お似合いだった。歳も、女性ということも。

 

絵に書いたようなデートする男女。

 

 飽きられた?

 

 豊かな胸も、柔らかな脂肪もない男の身体。家庭と

いう形態も、子孫も、何も生み出さない関係。

 

 見切りを付けられたのだろうか・・・。

 

「カカシさん?」

 

 少しの間黙り込んだカカシをゲンマが覗き込む。

 

「いや・・・行くよ、行こうゲンマ」

 

 カカシはゲンマと連れ立って、街の方へと歩き出し

た。

 

 

 

 テンゾウは暗部護衛隊長として今回の遠征が無事に

終わった事をメンバーに伝えて散とする。

 そして自分は代表して火影の部屋に向かった。そろ

そろ正規同行者達挨拶が終了している頃だろう。面も

被っているが、暗部は表立って彼らと同席しない。挨

拶にしても時間をずらすのは当然であった。

 

 

 そこでカカシとゲンマが連れ立って街方向へと歩い

ているのを目撃する。

 

 どうして・・・?

 

 どうしていつもあいつと一緒なのだろう。

 

 任務が終わればカカシのところへ行き、これまでの

事を聞き出すつもりだった。聞けば良い。きっと何で

もないことなのだ。

 

 そう何度も自分に言い聞かせ、カカシとゲンマのキ

スシーンを頭から振り払おうとした。大事な任務中で

あったし、そうするしかなかった。

 

 それなのに・・・。

 

 どうして任務が終わった今も、一緒の場面を目にす

るのだろう。

 

 カカシの心変わり。

 

 それしか考えられない。

 

 不知火ゲンマは確かカカシより年上だ。カカシと争

う整った顔立ちで女性にもよくモテる。

 

 全てが落ち着いてスマートだ。女性の扱いがうまい

ということは、会話も楽しいのだろう。カカシの前だ

と落ち着かず、余裕のない自分と比べてゲンマは大人

だ。心の拠り所になるのかもしれない。

 

 

 テンゾウに激しい感情せめぎあいが沸き起こる。

 

 こんなに、こんなに好きなのに。諦めるなんて出来

ない。

 でもカカシの幸せを考えたら?

 カカシがゲンマと歩む人生を望んだら?

 

 でも・・・自分はこれほど愛しているのに・・・。

 

 

 答えのない問いに、心が荒れ狂う。

 

 

前へ    続く