8ページめ
「いたっ・・・・・。」
僕の耳にカカシさんの掠れた悲鳴が再び聞こえた。僕は反射的にそ
ちらを見る。
涙で霞んだ僕の眼に、一番年長の奴がぐったりと横たわっていた
カカシさんの髪を鷲掴みにして、無理矢理引き起こしているのが見
えた。
無理から座らされたカカシさんの髪を片手で鷲掴みにしたまま、
もう片方の手で頬を押さえ、その年長の奴がカカシさんに口付けた。
カカシさんは抵抗し、身体を捩り、顔を背ける。
バシッ!
鈍い音がする。カカシさんが頬を殴られた。
「抵抗したら、あの餓鬼が痛い目見ると言っただろう。」
奴がカカシさんを殴ったその手で、僕を指差す。カカシさんが僕
を見た。目が合い、僕は必死で首を振った。
どうでもいい!
僕の事なんかどうでもいい!
だから逃げて!抵抗して!
カカシさん!カカシさん!
猿轡の中で、僕は声にならない声を必死にあげた。
カカシさんは僕と、横に並ぶような位置いる。彼の背中半分が、
僕から見える。幾筋もの真っ赤な蚯蚓腫れ。今しがた殴られて、そ
の頬も赤く腫れている。
全裸にされているその肌が、全体に赤くなっている。きっと熱が
あるのだろう。荒い呼吸。座っていても、手を床についていなけれ
ば支えられない様子で、前かがみになっている。
そんな自身はぼろぼろの状況で、それでも大丈夫だからというよ
うな、微かな笑顔を僕に向けた。
そして僕から視線を逸らし、覚悟を決めたように敵を見る。
「判ったみたいだな。」
年長の奴がほくそえみ、再びカカシさんに口付けた。ロクとクデ
という大男達も取り囲む中、口付けたまま、カカシさんを仰向けに
押し倒した。
「緊張するなよ。こんな顔して、どうせ経験あるんだろう。」
薄汚い奴の舌が、カカシさんの首筋を舐め回し始めた。
僕は再び眼を背けた。
カカシさんは逃げる事が出来たのに・・・・。
僕に兵糧丸を渡さなければ、逃げられたのに。
そもそも、チャクラ切れになるまで、敵を深追いしたのは単独行
動して行方が判らなくなった僕を、助ける為だ。どうして僕は単独
行動なんてしてしまったのか。
自信があった。僕には力があると。
そしてカカシさんの言葉に反発した。
僕は、認めるのが怖かったんだ。カカシさんを男のカカシさんを
好きになってしまった自分の心を認めたくなかったんだ。
反発して、単独行動して、大怪我を負い、カカシさんが逃げるチ
ャンスを失わせた。
そして今、僕に手を出さない条件と引き換えに、奴らに弄ばれて
いる。
「うっ・・・。」
「ヘヘへ・・・乳首感じるか・・・?もっと強く噛んでやろうか。」
「ナシさん、俺、もうたまんないですよ・・・。」
「焦るなよ。ちゃんと後で犯らせてやるから。こいつの肌、女みて
えだぜ。」
聞くに堪えない言葉が聞こえる。ああ・・・・。
カカシさんを、こんな目合わせたのは、僕だ・・・。
僕のせいで、僕のせいで、カカシさんは・・・・。
僕は、カカシさんが好きなのに、好きなのに。
好きなのに、好きなのに!好きなのに!!
好きな人をこんな目に合わせて、僕はいったい何をしているんだ。
「ほら、足広げろよ。びくつかなくても、ちゃんと指で慣らしてや
るから。」
「押さえましょうか?」
「そうだな。よし、持ち上げて押さえろ。」
「うぅ・・・。」
「そんな力入れるなよ。指もはいらねえじゃねえか。」
「ナシさん、もう突っ込んだらどうです?」
「てめえが早くしたいだけだろ。俺は裂けて血だらけは嫌だぜ。」
耐え難い奴らの言葉が聞こえる。カカシさんの声にならない、か
すかなうめきが聞こえる。胸が張り裂けそうに痛い。でも、僕はこ
の痛みを覚えておかなくちゃならない。
カカシさんが受けている苦痛と恥辱は、僕のせいなのだ。この胸
の痛みと、カカシさんの悲鳴を僕は忘れない。忘れてはならない、
自分がした失敗を。
間違いは繰り返さない。僕は、僕は必ず彼を守る事の出来る忍に
なってみせる。
「やっと一本だぜ。狭いな・・・。お前、ほんとに経験ないのか。」
「バージンですか。こいつはいいや。」
何度も聞いた卑しい笑い。
「そろそろ慣れてきたか?へへ・・・。声あげてもいいんだぜ。」
「ナシさんが言ってるだろう。ほら、いい声あげて啼けよ。」
「思い切り乳首摘まんでやれ。きっといい声出すぜ。」
「ううっ・・・。」
「いいねえ。乳首摘まむと下の口も反応するぜ。そろそろ二本に増
やしてやるか・・・。丁寧さに感謝してもらいてえな。」
奴らの下品すぎる言葉と、堪えようとしても漏れるカカシさんの
悲鳴。
それらに思わず挫けそうになりながらも、僕は、絶対に彼を守れ
る忍になるのだという、固い決心を誓った。