7ページめ
年上の敵が、大男二人に命令する。
「ロク、そのうるさい餓鬼の口閉じろ。クデ、一番太い縄を持って
来い。」
それから奴は、まだ僕を庇う姿勢のままのカカシさんの腕を引っ
張り、自分の近くに引き寄せた。
チャクラ不足で、僕を見つけてくれた時からすでに、辛そうにし
ているカカシさんをまた、不躾に見る。
僕は再び、カカシさんから離れろと叫ぼうとしたが、その前にロ
クと呼ばれた大男から猿轡を咬まされてしまい、叫ぶ事が出来なか
った。
「つらのいい奴が、苦しそうにするのは随分そそる。なあ、はたけ
カカシ、お前が今自分で言ったとおり、逆らわなければ、その餓鬼
に手を出さないぜ。もっとも、里に連行した後までは責任持てない
がな。今は手を出さない。だから、大人しく言う事を聞けよ。」
そう言ってナイフを取り出し、カカシさんの下の忍服に手をかけ
る。カカシさんが僅かにたじろぐ。
奴は、ゆっくりとカカシさんの下の忍服も切り裂いた。僕は思わ
ず眼をつぶる。酷い、酷い・・・。カカシさんの気持ちを思うと、
胸が張り裂けそうだった。更に奴らは、もっと屈辱的なことをカカ
シさんに命令した。
「クデ、縄、用意できたか?」
「はい、出来ました。」
「ほら、カカシ、四つん這いになれ。今から鞭打ちするぜ。そうだ
なあ、一人5回ずつ、15回で許してやるか。傷だらけも嫌だしな。
自分で、数かぞえろよ。声が小さかったり、いい間違えたりしたら、
追加するからな。」
ロクとクデが、それはいいと下品な笑い声をあげた。
僕は、自分の耳を疑った。何を言ってるんだこいつは・・・。
僕が思わず眼を開けると、カカシさんが裸で犬のように四つん這い
にされていた。いきなり年上の奴が、カカシさんの背中に、思い切
り縄を打ちつける。
背中を鞭打つ音と、カカシさんの僅かなうめき声。四つん這いで
身体を支えている腕が、小さく小刻みに震えている。
「ほら、数えろよ。1だぜ。言えねえと、いつまでたっても15回
がこねえよ。」
「うっ、・・・・・い・いち・・・。」
カカシさんは何とか答えたが、その後、身体を支えきれずに床に
うつ伏せに垂れ込んだ。
僕の眼に、カカシさんの背中が見える。一筋の赤い太い蚯蚓腫れ
が出来ていた。忍が、力任せに打ちつけた鞭の痛みはどれ程のもの
なのか。
縄が、ロクという奴に渡される。ロクもクデも、190はあろうか
というような大男だった。
「おい、ちゃんと四つん這いになれよ。しょうがねえな。このまま
でもいいか。」
そう言って、床に倒れこんでいるカカシさんの背に2回目の縄を
打ちつける。
「ほら!数!」
「くっ・・・に・・・。」
カカシさんが絞り出すように言う。
視界が揺らぐ。いつの間にか僕は泣いていた。
「次は俺だぜ。」
交代しながら、カカシさんを鞭打ちする奴ら。
眼を瞑っても、カカシさんを鞭打つ音と、自分が打たれてる数を
言わされるカカシさんの辛そうなかすれ声、奴らの卑下た笑い声や、
卑しい息遣いが、腕を縛られ、塞ぐ事が出来ない僕の耳に聞こえて
くる。
あいつらは、まだ何も尋問などしていない。今していることは、
任務などではなく、ただカカシさんを傷つけて苦しがらせて楽しん
でいるのだ。
僕はこの時はじめて、そうやってただ、人を傷つけ喜ぶ奴らがい
るんだと知った。
止めろと叫びたいのに、猿轡の中でただフゴフゴと音にならない。
助けたいのに、このアジトに来るまで無理矢理歩かされたこともあ
り、出血が酷く足の感覚もなくなってきていた。今は立ち上がるこ
とさえ、出来そうになかった。
僕は、彼を庇いに行く事すら出来ない。なんて情けない。
カカシさん、カカシさん・・・。
カカシさん、カカシさん・・・。
どうして、どうしてカカシさんがこんなことに・・・。