SEO セカンド・ラブ
憧憬の庭荘

 

 

11ページめ

 

カカシさんが言葉を続ける。

「先生・・・、4代目達が大蛇丸の実験室から助けた子供でたった

一人、助かった子供がいるって聞いてさ。俺、どうしても逢いたく

なって、4代目に頼んでお前の病室に連れて行ってもらったんだよ。

ほんとは関係者以外面会禁止だったのに、4代目に頼み込んでさ。

せ・・、4代目は俺に甘かったから。

お前は、まだ小さくて、俺がこんにちはって話しかけてもきょと

んってしてたよ。覚えていないよな。」

 

 

突風が後に流れていくような感覚と共に、記憶が遡る・・・。

 

暗い実験室から、木の葉病院に移された。多勢の大人達が自分の

前を右往左往していた。わけが判らず、ただ不安な時間を過ごして

いた僕の前に現れた、可愛い女の子。

色の白い、ブルーの瞳の女の子。

それまで、大人ばかりを見ていた僕の前に同じ年頃の子供が現れて、

そしてその子は人形のように可愛くて僕は目を奪われた。

もう一度会いたいと、ずっとずっと願っていた。二度目に会った時

は泣いていた女の子。

そう、あの子は、僕の初恋だった。

 

そうだ、あの女の子の傍には、いつも誰か男の人がいた。4代目

の顔は知っているけど、あの女の子と一緒にいた人の顔ははっきり

覚えていない。僕はそれ程に女の子ばかりを見つめていたから。

 

 

僕はカカシさんをもう一度見つめる。

整った顔立ち、白い肌、ブルーと赤の瞳。幼い頃、女の子と間違

われる事もいっぱいあっただろう・・・・・。

 

でも、まさか、そんな・・・。あの子は両目ともブルーだったし。

 

そこで僕は、暗部仲間から聞かされた事を思い出す。そう、カカ

シさんの写輪眼は後から移植されたものだという事を。

 

僕は、上ずった声でカカシさんに尋ねた。

「カカシさん・・・。あの、カカシさんのお父さんが亡くなられた

頃、木の葉病院に、入院されてましたか?」

「えっ?ああ、そう・・そういえば入院してたな、あの時は俺も

小さくて、父の事はさすがにショックだったから、ご飯を食べなく

なって、心配した4代目に入院させられた。あ、もしかして、その

時もお前に会ったのかな。あの時は俺の方が混乱してて、よく覚え

ていないけど。お前は長く入院してたもんな。俺、メソメソ泣いて

たんじゃないか?なんか、かっこ悪い・・・。」

カカシさんは照れたように微笑んだ。

 

記憶の中で、女の子が男の人の胸に顔を埋め泣いている光景が思

い出される。そうだ、今思い出した。泣いている女の子を優しく抱

きしめていた男の人は金髪だった。きっと、彼は4代目。

 

僕の心臓はこれ以上にない程、早いリズムを刻んでいた。身体が

震える。口が渇く。もう一度、もう一度、もう一度会いたいと願っ

た、初恋の女の子。

 

あの子は、カカシさんだったのか・・・。

僕は始めから、カカシさんに恋してたんじゃないか・・・。

 

僕は茫然としていたのだろう。カカシさんが訊ねた。

「テンゾウ、どうした?」

彼の言葉に導かれるように、僕はゆっくりとベッドサイドに跪い

た。彼と同じ視線の高さになり、彼の顔をもう一度見つめる。間違

いない。あの時の女の子、僕の初恋。

あの子は、今、僕が恋しているこの人だったんだ。

 

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