憧憬の庭荘

 

 

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カカシさんは、僕に話したとおりに両手を挙げて無抵抗のポーズ

をとった。僕も見習う。さっきまで、死への恐怖に震えていた僕だ

ったが、カカシさんがそばにいてくれている安心感と、何故だか身

体の方も、さっきより楽になっていた。

カカシさんの言うとおり、援軍が来るまで多少痛めつけられても、

黙秘を貫いて頑張るんだ・・・。

 

そこまで考えた時、僕はハッと気づいた。身体が楽になった理由

を。さっきカカシさんに飲まされた錠剤。カカシさんは僕に見せず

に、いきなり口に入れて造血丸と鎮痛剤だと言っていたが、それだ

けではなかったんだ。この身体の楽になり方は、おそらく兵糧丸も

混じっていた。

 

僕は敵に縄で括られているカカシさんを見た。怪我ではなく、チ

ャクラ不足のカカシさんが兵糧丸を飲めば、戦う事は無理でも逃げ

る事くらい出来たはず。それなのに、自分持ちの兵糧丸を僕に飲ま

せてこうして、僕と一緒に敵に捕まっている。

彼は、僕の状態では逃げ切れない事を判断して、わざと一緒に捕

まったんだ、僕の為に・・・。

  

 

 

僕達は、縄で後ろ手に拘束されて、敵の簡易アジトに連行された。

カカシさんが飲ませてくれた兵糧丸の効果で、怪我をしていたが、

何とか僕は歩く事が出来た。チャクラ不足に陥っているカカシさん

気丈に歩いていたが、本当に辛そうだった。

 

簡易アジトでは、僕達を拘束した奴らより、やや年上の敵が一人

構えていた。そいつの前に僕達は乱暴に引きずり出されよろめいて

床に座り込んだ。

 

年上の敵が、座り込んだ僕たちの前に屈む。

「まだ餓鬼だな。とはいえ木の葉の暗部だ。お前らよく捕まえた。」

「へへ、まあそれ程でも。」

「木の葉には、さんざん痛い目にあってるからな。こんだけ用意周

到に準備した今回の作戦でも、今のところ幹部を拘束したという連

絡は来てない。全く忌々しい木の葉め。」

 

そう言って敵が、カカシさんの木の葉の額当てをむしり取った。

カカシさんの眼を見て、僕達の前に居る敵3人ともが驚いた。

「え?写輪眼?まさか・・・こいつは・・・?」

「あの噂は本当だったんすね。木の葉の暗部に、写輪眼がいるっていうのは。」

「そうか・・・。こいつが噂の写輪眼、名はたしか、はたけカカシ・・・。」

僕はカカシさんが、すでに敵にその名を知られる存在というのを

その時あらためて知った。

 

「こいつは、とんだ宝だ。里にこいつを連行すれば、まさに大手柄

だぜ。木の葉の情報だけじゃない、写輪眼の事も調べられる。」

「やりましたぜ。まさか、はたけカカシがこんな餓鬼とは思わなか

ったけど。」

その時、一番年上の敵がにやっと下品な笑いを浮かべた。

 

「確かにな・・・。こんな餓鬼とは思わなかったし、恐ろしく強い

と聞いていたが、こんな男娼みたいな優男とも知らなかったな。」

そう言ってカカシさんの髪を乱暴に鷲掴みにし、顔を上げさせた。

そうしてカカシさんをジロジロと見つめる。

 

「お前ら、これは何日も前から女もいねえ山で、木の葉が来るのを

待たされてた、俺達への褒美じゃないか。里に連れて行けば写輪眼

なんて大物の捕虜は、偉いさんが直接尋問にあたり、俺達とは接す

る機会もない。遊ぶなら今だぜ・・・。」

そこまで言って、いやらしく舌なめずりをする。

 

僕は始め、敵が何を言っているのかよく判らなかった。遊ぶって、

なんだ・・・?

 

僕達を直接拘束した、大男二人もカカシさんの周りを取り囲むよ

うに屈んだ。

「いいっすね・・・。あっちは餓鬼過ぎるが、こいつは16,17って

ところか。遊ぶには丁度いいんじゃないすか。」

あっちと僕の方を顎で指し、汚らしい手でカカシさんの頬を撫で

た。カカシさんは、元々チャクラ不足で顔色が悪かったが、さらに

血の気が引いて、蒼白になっていた。

 

「よし、拘束解いて脱がせようぜ。」

「でも、大丈夫っすかね?」

「大丈夫だろう。かなり具合悪そうだぜ。肩で息してるじゃねえか。

抵抗できるなら始めから捕まらないんじゃないか。ま・念のため

そいつにクナイ当てとけ。」

一人が僕に近づき、首筋にクナイを当てた。

 

そして年上の敵がカカシさんに向かって言う。

「少しでも抵抗したら、あいつの首筋掻っ切るぜ。わかったな。」

真っ青になりながらも、カカシさんは頷く。

そうして、奴らの一人がカカシさんの縄をクナイで切り落とし、解

いた。さらに首元からクナイを入れ、忍服を縦に切り裂き、剥いだ。

 

僕は、さすがに奴らが今から何をしようとしているのかが、判っ

た。

「ふざけるなお前ら!!カカシさんに触るな!触るな!!!」

僕はあらん限りの声で叫んだ。叫んだために、首筋に当てられて

いるクナイが肌に触れて血が流れる。

「うるせえんだよ、餓鬼!」

敵が僕の頭を叩き、僕は後ろ手に拘束されていたのでバランスを

失って床に倒れこんだ。

「カカシさんから離れろ!!」

なおも叫ぶ僕に、さらに蹴りを入れようと敵が足を上げたが、実

際に敵の蹴りを受けたのはカカシさんだった。

 

すでに拘束を解かれていたカカシさんが、素早く敵の足と僕の間

に入り込んで、僕を庇ったのだ。

背中を蹴られたカカシさんが、僕に覆いかぶさったまま咳込む。

「ごほっ、ごほっ・・・。俺は逆らわないから・・・ごほ・・・こ

いつに乱暴しないでくれ・・・。」

「カカシさん・・・カカシさん逃げて・・・逃げて・・・!」

僕は、無理だと判っていても、逃げてと繰り返した。

 

カカシさんは、忍服を切り裂かれて上半身むき出しだった。蹴ら

れて、その白い肌にくっきりと痕がついている。そうして苦しそう

に咳込むカカシさんを見て、奴ら3人はさらに卑下た笑いを浮かべ

た。

 

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