奥二重 目頭切開 セカンド・ラブ
憧憬の庭荘

 

 

3ページめ

 

僕は今まで、新人として扱われていたので、一緒に組むのはベテ

ランと呼ばれる人達ばかりだった。今、目の前で人身売買組織の情

報を話しているカカシさんのような若い暗部と組むのは、今回が初

めてだ。

 

だからかもしれない、と僕は思った。実験体として救い出された

経緯や、木遁忍術の事もあり、僕は同世代の子供とほとんど接触す

ることなく、火影の元で、忍術を磨いてきた。そういう事情で大人

には慣れてるが、同世代やそれに近い年齢層の人との関係の方が、

慣れていない。

 

カカシという人に微笑まれて、胸が跳ね上がったのは慣れないゆ

えの、緊張のせいだろうと僕は自分を納得させた。

 

 

 

人身売買組織の壊滅任務は、カカシさんの情報がかなり正確だっ

た上、現場でも彼の活躍がすばらしく、暗部側の被害はほとんどな

く終了した。

僕はこの時の任務で初めて写輪眼を見た。紅く燃える瞳は見るも

のを引き付ける。彼の、戦闘の神に愛されたような無駄の一切ない

動きと、その瞳の輝きはいつまでも僕の脳裏から離れなかった。

 

夜、寝ようと目をつぶると彼の疾走する姿が思い起こされる。任

務が終わった後、彼から挨拶をしてくれた。

「お疲れ様。よく頑張ってたな。」

そう言って僕の頭をくしゃと触り、任務中とは別人のような初顔

合わせの時と同じ優しい笑顔を向けてくれた。

普段、子ども扱いをされると非常に腹立たしく思うのに、その時

は、彼ほどの働きをする忍から褒めてもらえた事が、素直に嬉しか

った。

そんなふうに彼の事をあれやこれや考えて、中々眠れないことも

しばしばあった。

 

 

それからの僕は、彼の姿を無意識のうちに探していた。偶然暗部

待機所などで会うと、彼は必ず笑顔を返してくれた。そして僕の胸

は高鳴る。この気持ちは何なのだろう。

ただ、実際に話をすることはいつも出来ない。彼は僕よりおそら

く2・3歳年上だが、暗部の中ではまだまだ若手で、いつも年上の

人達に囲まれていた。

彼はいわゆる人気者で、年下の僕が近づく事は出来なかった。

 

 

 

初めはベテラン暗部の人達と組むことが多かった僕も段々働き

を認められて、そのうち若手と一緒に組むことも増えてきた。僕は

任務に関しては自信があった。実際、結構活躍できていたと思う。

 

カカシさんと同じ任務につくこともたまにはあった。普段は自分

から話しかけられないが、任務中は違う。僕は彼にいい所を見せよ

うと、いつも以上に頑張った。すると彼は任務後に髪をくしゃと触

って、

「大活躍だな。でも、あんまり無理するなよ。」

と、言葉をかけてくれる。それが嬉しくて、僕はますます頑張っ

た。

 

 

 

その日もカカシさんと同じ任務で、一緒に待機所で集まって打ち

合わせが始まるのを待っていると、一人のくの一がカカシさんを呼

び出した。

「俺、今から任務なんだけど・・・。」

そういうカカシさんをすぐ済むからと、そのくの一は強引にカカ

シさんを外へ引っ張り出した。

僕や、他のメンバーが窓の外を見ると、カカシさんを連れ出した

者とは別のくの一が待っており、なにやら、手に持っていた包を

カカシさんに渡した。

他のメンバーから一斉に声が上がる。

「あいつは、サキじゃん。げーあいつもカカシ狙いかあ。」

「ショック!くの一ナンバーワンのサキもカカシかあ。」

「サキなら、カカシもオーケーするんじゃないの。」

「まじかよ。カカシが女と付き合うのかあ、ショックだ。」

「おいおい、どっちに焼きもちやいてるんだ。」

みんなでわいわい騒いでいると、カカシさんが戻ってきた。

 

「カカシ!何もらったんだ。」

「さあ・・・。まだ開けてないから。誕生日祝いだって。俺も忘れ

てたよ。よく知ってたなあ、あいつ。」

カカシさんは何だか人事みたいに淡々と話していた。それからすぐ

に部隊長が入ってきて、打ち合わせが始まり、一旦カカシさんへの、

くの一からのプレゼント騒ぎは終わった。

 

僕はその日の任務の事をよく覚えていない。ただただ、いいよう

のない胸に何かつかえたようなそんな重苦しい気持ちになってい

た。

誰かが言った、サキならカカシもオーケーするんじゃないの、と

いう言葉が頭の中でリフレインする。

 

僕はショックを受けていた。カカシさんがくの一と付き合うとい

う誰かの言葉に。そして、それをショックに思う自分の心に。 

 

僕は、僕は、もしかしてカカシさんが好きなのだろうか。男なの

に、僕もカカシさんも、男なのに。

僕は男が好きなのだろうか。そんな事はないと否定してみる。僕

は自分の初恋を覚えている。色の白い、蒼い瞳のとてもきれいな女

の子。

大蛇丸の実験室から救出された僕を見舞いに来てくれた女の子。

そうだ、僕は、男好きなんかじゃない。ちゃんと、女の子を好きに

なっている。

カカシさんの事は確かに好きだけど、これは憧れだ。強くてかっ

こいい、彼に憧れているだけだ。

僕は、必死で自分にそう言い聞かせた。

 

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