Winter color
18章
「ううっ!」
左大腿に今までに味わったことのない激しい痛みを
感じカカシはソファから崩れ落ちる。
カカシが床に倒れこむとサスケは瞬時に馬乗りにな
り、両手をぐいと引き上げて頭上で床に押さえ込んだ。
「何する・・・」
サスケはいつの間にか麻縄のような紐を手にしてお
り、左手で床に押さえ込んで動きを封じた両手首に慣
れた手つきで右手で紐を巻き付け締め上げる。
カカシの意識ははっきりしていた。
しかし左足の衝撃があまりに強く動けず、全く予期
していない出来事に思考も追いつかず、馬乗りになら
れて押さえつけられ、ほぼ抵抗できないまま両手首を
紐で縛られてしまった。
しかもサスケの動きは驚くほど素早い。まるで人を
押さえ込む訓練でも日常的にしているみたいに。
カカシはそこで思い出す。サスケの家の仕事が警備
会社だったことを。そういうスキルが身についている
のかもしれない。
我が身に何が起こったのか考えるという意識が戻り
始めた頃、今度は首にベルトのようなものを巻きつけ
られた。
抵抗したいが何より左足の経験値に無い痛みが体全
体の動きを抑制している。手はもう完全に両手首を重
ねて縛られていた。せめてのも抵抗に首を振るがサス
ケに馬乗りになられたままで、さっと首輪の穴を通し
て締められてしまう。
更にサスケはその首輪を止めた部分に南京錠をかち
りとはめ込んだ。その南京錠にはあらかじめ鎖が通さ
れており、カカシの耳元でじゃりじゃりと音をたてる。
カカシはその時初めてサスケがソファの下からそれ
らの道具を取り出していることに気づく。
元から用意していたのか・・・。今自分の身に起き
ているこれらの出来事は、事前に準備がなされていた
のだと頭の片隅で考える。
「サスケ・・・一体何だよこれは・・・」
カカシは両手首を縛られ、鎖付きの首輪を嵌められ、
最初に受けた衝撃から数分は過ぎているのに足はまだ
ジンジンとした状態で、サスケに馬乗りになられてい
た。
「ごめん」
サスケは謝りながらカカシの上から離れる。
「足が痺れてる・・・。何した?」
「スタンガンだ。身体には影響ない。痛みも時間が経
てば消えてくるから」
そう言ってサスケは床に転がっていた片手で握れる
程度の大きさの棒状の金属をカカシに見せた。
「そんな小さなもので?今も足全体を針で刺されてい
るみたいだけど・・・」
「これは防犯グッズで、女性が持つように開発された
ものだ。効果はあくまで一時的だがその瞬間の威力は
強い」
カカシは成程と思う。もう二度と味わいたくないと
思うような痛みだ。これなら痴漢も動けなくなるだろ
う。
「それで、俺はどうしてこんな目にあっているの?」
有り得ない状況だからこそ、ひとつひとつ疑問を解
消しなければならなかった。
「あんたが俺と付き合えないって言うなら・・・実力
行使するつもりだった、最初から」
「飲みすぎて気分が悪いというのは・・・」
「嘘だ」
「俺を・・・ここに連れてくるため?」
「そう」
サスケはカカシの質問にごく端的に答えながら背中
側へ回り込む。
そうして床に倒れているカカシを抱き起こし、後ろ
から脇を抱えてベッドの方へ引きずる。
両手は括られており、左足はまだ感覚がおかしく、
右足で抵抗しようと突っ張ってもサスケに難なく引っ
張られ、カカシはベッドに投げるように倒される。
首輪に付いた鎖はジャラジャラと音を立てながらど
んどんソファの下から伸びてくる。鎖と鎖りを途中で
南京錠で繋いでおり、カカシがベッドに乗せられても、
長さにはまだ少し余裕があった。
サスケがカカシの鎖を手にしながら言う。
「これの先はソファの横軸にあらかじめ結んで錠をし
ている。途中はこうして繋いでいるからソファがある
部屋の真ん中から動ける長さを確保している。トイレ
にも風呂にも行ける。扉は完全には閉められないけど。
ただ廊下に出るドアの外までには届かない」
サスケの言葉を聞きながら、カカシは血の気が引く
とはこのことか、と思うほど自分で青ざめたのが分か
った。
「サスケ・・・俺を監禁するつもりなのか?」
「仕方ない。言葉で居てくれと言っても無理だろう?」
「そんな・・・どうして・・・」
「じゃあ、テンゾウと別れる?」
「どうしてそうなるんだ。こんなこと犯罪だよ、サス
ケ」
サスケが頷く。
「分かってる。自分の言うことが身勝手な事も」
「こんなこと長続きしない。俺と連絡取れなければテ
ンゾウや友達も捜すし、会社だって・・・」
「それも分かってる。だから年末年始の休暇の間だけ。
それが過ぎれば開放するし、その時警察に訴えても構
わない」
「その間だけ監禁してどうするつもりなんだ?」
カカシのその質問には答えず、サスケはソファの方
へ戻り、手にスタンガンを持って来た。
「カカシ、足は少しマシになってきた?」
確かに時間の経過ごとに少しは痺れが軽減してきて
いた。しかし完全に取れたわけではない。
「サスケ・・・やめてくれそれは」
カカシはサスケが手にしたスタンガンを見つめなが
ら拍動が激しくなるのを自覚する。一度経験しただけ
に尚更、二度は味わいたくない衝撃だった。
「もうすぐ動かせるようになる。長時間効果はない。
でももう二度と経験したくないだろう?」
サスケはわざとカカシにスタンガンを見せてから、
ベッドサイドボードの引き出しに仕舞う。
「俺も使いたくない。だから逆らわないで欲しい」
「サスケ・・・」
「第一逆らっても勝ち目はない。俺は会社を手伝う決
心をしてから、仕事帰りや週末に社員の警備員達に混
じって訓練を受けている。事業内容を知っておかなけ
れば営業も出来ないから」
サスケはベッドの端に腰掛け、カカシを見つめなが
ら話す。
「仮に俺を倒してもこの部屋からは出られない。南京
錠の鍵は上の部屋で、ここにはない。そして鎖は外ま
で届かない。この部屋は地下にあるし、防音も施して
ある。声も外へ聞こえない」
サスケは話しを切り、カカシの肩に手を置いた。
そうしてゆっくりとベッドへ横たえる。
「サスケ・・・やめてくれ」
カカシは自分が今から何をされるのかはっきりと理
解する。
サスケが覆いかぶさる。
「やめてくれ」
サスケがカカシの首筋に舌を這わす。
「やめろ!」
「逆らわないでくれ。乱暴はしたくない」
耳元で囁くように告げ、サスケはカカシの室内着を
捲り上げ、裾から入れた手を胸に這わす。
「サスケ!嫌だ!」