Winter color
17章
カカシがシャワーなどを済ませ再びソファに座って
くつろいでいると、上の階でシャワーを浴び終えたサ
スケが戻って来た。
そしてバーカウンターの内側に入り、両手にミネラ
ルウォーターのペットボトルを手にしてカカシのに座
る。
「あそこはキッチンになってるんだな」
カカシが目でバーカウンターの方を見ながら聞いた。
「そう、小さい冷蔵庫も置いてて、いくつか飲み物も
入れてある。好きなもの適当に飲んでくれていいぞ」
「いや、もう歯も磨いたし水でいい」
カカシはサスケからペットボトルを受け取り、一口
飲む。
「シャワー浴びると眠たくなってきた。もうかなり遅
いよな」
カカシは時計がないかと周囲を見ながらサスケに聞
いた。
「時計はベッドサイドボードに置いてる目覚ましだけ。
壁に飾るのは好きじゃないから」
「ああ、そうか」
「今は真夜中の12時半頃だ」
サスケがカカシに時間を知らせる。
「どうりで・・・。眠くなる時間だ」
「カカシ」
「何?」
サスケに改めて呼ばれて、カカシはサスケの方を向
きなおす。
「・・・」
呼び止めておきながら、サスケは少しの間沈黙し、
やがて口を開いた。
「あんたに話があるんだ」
「何?」
「俺は・・・」
「うん、何?」
「俺には、好きな人がいる」
今度はカカシが驚いて一瞬言葉が詰まる。
「えっ・・・あ、そう、・・・でも、今、お前に恋愛話
されるとは思ってなかったからちょっとびっくり」
「今まで言うつもりはなかったけど」
サスケはポーカーフェイスを崩さないまま話しを進
める。
「うん」
「会社もやめるし」
「うん」
「はっきり伝えようと思って」
カカシがああ、というように穏やかに微笑む。
「もしかして俺の知ってる人?サクラとか?」
「違う」
カカシの言葉を即座に否定すると、サスケは視線を
まっすぐに向ける。
「俺が好きなのはあんただ」
「・・・え?」
穏やかに微笑んでいたカカシの表情が固まる。
「俺?」
サスケはいつもの冷めた表情で、冗談を言っている
ようには見えない。そもそも今までサスケが冗談を言
うのを聞いたことがない。
「カカシ、俺と付き合わないか?」
「いや、だって俺たちは男同士で・・・」
カカシの言葉にサスケは口の端で笑う。
「そんなこと・・・あんたは別に大丈夫だろう。むし
ろ、男の方がいいんじゃないか?」
「え?」
「今、付き合っている奴は男だろう」
カカシは胸がドキリとする。
「それは・・・」
「あいつ、テンゾウと付き合っているんじゃないの
か?」
「サスケ・・・どうしてそれを・・・」
「図星だな」
カカシは少し唇を噛み締めて、やがて口を開いた。
「わざわざ伝えて皆に気を使わすのも悪いと思って一
応内緒にはしていたけど・・・。そう、お前の言うと
おり俺はテンゾウと付き合っている」
「俺は・・・」
サスケは言いかけて一度言葉を切り、再び話し始め
た。
「俺は、あんたが好きだったがノーマルだろうと諦め
てた。会社を辞めるのが決まってからも、言わずに去
るつもりだった。でも、あんたは男のテンゾウと付き
合っている。奴のどこがいいんだ?」
「どこが・・・さあ・・・人を好きになるときの理由
なんてあってないようなものじゃないかな」
「仮に・・・俺があいつより先に言っていたら、可能
性はあったか?」
カカシは沈黙する。
「はっきり言えよ」
「それは・・・ないと思う。仮定過ぎて分からないけ
ど、テンゾウのことは、あいつに告白される前から俺
も好きだった。お前のことは好きだけど、恋愛感情と
は違う」
サスケは小さく息を吐く。
「はっきり言ってもらってよかった。気持ちが揺らが
ないで済む」
サスケが立ち上がり、ベッドサイドボードの方へ向
かう。
「先に言ってても無理だったというなら、こういう手
段も仕方ないと、決心がつく」
サスケがベッドサイドボードから何かを取り出し、
それを背中に回してまたカカシのそばへ来る。
カカシはサスケの動きを目で追いながら聞いた。
「手段て・・・なんのこと?」
サスケがそばに来た瞬間、カカシは目の前が真っ白
になったような衝撃を受けた。