Winter color
16章
サスケの地下の部屋は、一方の壁にシアター用のス
クリーン、その左にオーディオセット、右にDVDなど
が入ったサイドボードがあり、中央にソファとテーブ
ル、奥にキングサイズベッドとベッドサイドボードと、
シンプルだがいずれも高価だろうと思える家具が配置
されていた。
壁に飾りなどもなく、すべてが木製の落ち着いた部
屋は、綺麗に片付いている。
ドアの横の角には小さいながらバーカウンターが丸
く設置されており、内側は一応キッチンとなっている
ようで、上部には換気口が見えた。
「そこで、ゆっくりしてくれ」
サスケはソファを指差す。
「随分回復したみたいだな」
動きが軽快なサスケを見てカカシが問うとサスケは
頷く。
「そうだな。マシになった」
「そりゃよかった」
カカシは笑顔になる。
「でも、せっかく来てくれたからもう今日は泊まって
いってくれ。会社も休みなんだし」
「そういってくれるなら・・・」
カカシはソファに座って改めて周囲を見回した。
「お前らしい部屋だな」
「俺らしい?」
「うん、壁に飾りとかもないし、絵とか写真も」
「あんたはそういうのあったほうがいいのか?この部
屋は気に入らない?」
「いや、落ち着いたいい部屋だと思うよ」
カカシの言葉にサスケは微かな笑顔を浮かべる。
「でも、この部屋を小さいって言うなら、お前は俺の
ワンルームマンションになんか住めないな」
「この部屋だってワンルームだ」
サスケの言葉にカカシは苦笑した。
「そうだけど、面積が違う。大体キングサイズベッド
なんか普通のワンルームに入らないよ」
「そんなものか」
カカシは切符の買い方一つ知らなかった入社当時の
サスケを思い出す。
「今更だけど、家業も順調そうなのにどうして出版社
に就職したんだ?」
サスケがカカシの方を向く。
「・・・兄貴が優秀で・・・。昔から親父は兄貴にば
かり目をかけていた。兄貴が大学出てそのまま家の会
社に入った時俺は違う道、それも全くかけ離れたとこ
ろでやっていくと決めた。今から思えばただの反抗心
かな」
「だから出版社か・・・。確かに警備と本作りは何の
接点もないな」
「でも、そんな子供じみた反抗も今年限りだ」
「え?」
「兄貴から会社を手伝ってくれと言われている。さっ
きも言ったが、営業エリアを拡大しててかなり忙しい。
親父はそろそろ母親と一緒にいる時間を大事にしたい
らしくて、これからは俺たち中心でやってほしいと」
「じゃあ・・・辞めるのか?木ノ葉出版を」
「年明けに辞表を出す」
「そうか・・・残念だな。お前は編集員としてもいい
センスを持っているのに」
カカシの言葉にサスケが少し笑みを浮かべた。
「そう言ってもらえるのも今だけかな」
「・・・どう言う意味?」
カカシが聞き返すがサスケは答えずソファから立ち
上がる。
「泊まってくれるならシャワーも浴びてゆっくりして
くれ」
サスケはスクリーンと反対側の壁にあるドアを指差
した。
「あそこが洗面所で奥にトイレと浴室がある。着替え
も買い置きがあるから使ってくれ。さして体型は俺と
変わらないだろ」
そう言ってサスケはそのドアの並びにあるクローゼ
ットを開けて整然と並んだ内側の引き出しから、新品
の室内用の着替えと下着を出してきた。
「浴室まであるのか?この部屋だけで暮らせるな」
カカシに着替えを渡しながらサスケは答える。
「そう、とりあえず暮らすのに不自由はない。タオル
や歯ブラシも新品が洗面所にあるからそれを使って」
そう言いながらサスケ自身は廊下へ出るドアの方に
向かう。
「俺は上の階のシャワーを浴びてくる」
「そうかあ。風呂もトイレも部屋も複数あるんだよな」
自分とかけ離れた環境に素直に感心しながら、カカ
シは言われたとおり、地下ルーム内の浴室へ向かった。