投資を始める前に Winter color

四季の庭荘

 

 

Winter color

 

 

12

 忘年会を行うので担当編集者のカカシとサスケも参

加するようにと、木の葉出版編集部に作家の自来也か

ら連絡が入った。

 

「いつですか?」

 

 カカシが編集長の綱手に尋ねる。

 

1226日の金曜だ。どうせ次の日から我社も年末休

暇に入るから飲んでもいいぞ。お前らはお気に入りな

んだからせいぜい自来也に媚売って来い。あんなエロ

じじいだが、なぜか読者受けはいいからな」

 

26日・・・ですか。分かりました」

 

「なんだ?都合悪いのか」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 綱手が周囲も凍るような表情でカカシを睨む。

 

「言え」

 

「友人と飯でも、と言っていただけで、変更します。

大丈夫です」

 

「はあ?友人?」

 

 綱手が氷の表情のまま、語尾を上げるように言う。

 

「もちろん仕事優先です。行きます」

 

 綱手がサスケの方を向く。

 

「お前も大丈夫だろうな」

 

「ああ」

 

 サスケはいつものように綱手に対しても無表情で頷

いた。

 

 

 綱手が編集室から去った後、ふと目が合ったテンゾ

ウに向かってカカシは苦笑する。

 

「言えっていうから言ったのに、怒られちゃったよ」

 

「そう・・・ですね」

 

 テンゾウはカカシが綱手に怒られたことより、聞い

ていなかった26日の予定の事が気にかかる。

カカシとは大晦日を一緒に過ごしてそのまま初詣に

行こうか、というざっくりとした約束はしていたが、

その日以外の年末休暇の過ごし方は聞いていなかった。

 もちろんそれぞれに生活があり、テンゾウも友人と

忘年会の約束をしているし、カカシが来る前日の30

は一日大掃除をするつもりでいた。そういう自分の予

定の何もかもをカカシに話しているわけではないし、

何もかも確認するのは鬱陶しいという自覚はある。

 男の嫉妬は醜いと充分理解しつつ、友人て誰だろう

なんて気にしてしまう自分がいた。

 

 カカシはまるでテンゾウの気がかりに答えるかのよ

うに、話し始めた。

 

「いつだったかお前偶然会ったことあるだろう。俺の

大学時代のサークル仲間のガイとアスマ」

 

「あ、ええ、はい」

 

 テンゾウは細身のカカシと雰囲気が違う熊とゴリラ

みたいな大柄な二人を思い出す。

 

「アスマは警視庁の組織犯罪対策部の刑事でさ」

 

「組織犯罪・・・ああ、暴力団を担当する・・・」

 

「そうそう、それで暴力団絡みの覚せい剤売買の大き

な事件がようやく一つ片付いたらしくてさ。忘年会兼

ねてお疲れさん会でもしようと言う話になっていたけ

ど、今度にするよ。自来也先生の方に行かないと」

 

「そうですね」

 

 答えながら、テンゾウは小さく安堵した。この前会

った二人ならいわゆる大学時代の友人という関係だろ

う。

 そうなると今度は自来也の方が気になりだした。忘

年会と称してカカシに酒を飲ませてよからぬことをす

るのではないだろうか。

 

「カカシ主任、また自来也先生に誘われるんじゃない

ですかあ」

 

 横からサクラが若干楽しそうに言葉を挟む。

 

 カカシはニッコリとして答えた。

 

「大丈夫だよ。サスケも一緒だし」

 

 カカシはサスケの方を向いた。

 

「そうだ、サスケ。なんか手土産を買って行こうか?」

 

 そう言いながらカカシはサスケのデスクに近づき、

時間だの、土産だのと、打ち合わせを始める。

 

 

 確かにサスケに自来也先生からカカシを守ってもら

うしかない。カカシから関係を知られぬようにと釘を

刺されているので、テンゾウは内心でサスケ頼むぞと

祈った。

 

 

 

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