Winter color

四季の庭荘

 

 

Winter color

 

 

25

カカシは、真夜中まで続いた行為の気怠さに直ぐに

は動けず、ぐったりベッドに倒れこんだままの姿勢で

いた。

 部屋中央のテーブルでマナーモードの振動音を立て

ているスマホに向かうサスケの足音は、なんとなく耳

に入っている。

「もしもし?」

 思い切り不機嫌な声音で返答するサスケの様子に、

カカシは少し耳を傾ける。

「なんだ?こんな時間に」

「代わるって誰に?警察?」

 警察というサスケの言葉に、カカシは片肘をついて

身体を起こす。

「あぁ、そうだけど…。いや、少し前に大和からも聞

かれたけど、知りませんよ」

 少しの間、電話の相手の言葉を聞いてやいてたサス

ケが大声を出す。

「家に入るってどういう事だ?令状でもあるのか?」



 うちは邸の前に着いたテンゾウは、アスマ、ガイが

乗っていた車の後ろに駐車し、その荘厳な門の前に降

り立つ。

「サスケ君…だっけ?知らない番号なら出ないだろう

から、テンゾウ君の携帯でかけて。彼が出たら俺が代

わるから」

 テンゾウはアスマに促されるまま、自分の電話でサ

スケをコールする。

「もしもし、大和だけど」

『なんだ?こんな時間に』

 不機嫌を一切隠す事なく、サスケが応える。

「ちょっと代わるからそのまま切るな、警察の人と一

緒だから」

『代わるって誰に?警察?』

 テンゾウはアスマに携帯を渡した。

「俺は警視庁組織犯罪対策部の猿飛アスマというもの

だけど、畑カカシは俺の大事な友人でね。そいつと連

絡が取れない。君が知らないかと思って来たんだけど。

何しろ、把握出来る中で最後に接触してたのは君だそ

うだから」

『あぁ、そうだけど…。いや、少し前に大和からも聞

かれたけど、知りませんよ』

「でも君は嘘をついたよね。ここに来る前に調べてて

ね。作家の自来也さんの家から呼んだタクシー会社の

運転手が、君のこの家の前で、客が二人とも降りた事

を覚えてたよ」

 アスマは刑事らしく、次々と畳み掛けるように話し

をする。

「君は大和君に自分だけタクシーを降りたと言ってい

たよね。俺はここに畑カカシが居ると思っている。い

ないと言うなら、それを確認したい。君の家に入れて

くれ。」

『家に入るってどういうわけだ。令状でもあるの

か?』          

「今はない。しかし、事をそんなに大きくしない方が

君にもいいんじゃないか?警備会社の社長の家で監禁

騒ぎなんて、世間は飛びつく話題になる」

 横にいるテンゾウはアスマの言葉しか聞こえないの

だが、さすがに刑事は話しの持って行き方が巧みだと

感心した。同時にこんな心強いカカシの友人達が居れ

ばきっと見つかるという期待。

「わかった」

 暫くの無言の後、アスマが頷いて電話を切った。

「今門を開けるってさ」

 ジリジリしているガイが叫ぶ前に、アスマは答えた。

 そしてテンゾウの方を向いて少し笑顔を見せる。

「きっとカカシはここにいる」

 カチャリと音がして、大きな門の中の人の通行用の

扉が解錠された。
 遠隔操作という事がすでに一般的ではない。一人な

ら、ここにカカシがいると分かっても助け出せなかっ

た。



 警視庁の刑事と名乗る男に、令状とって話しを大き

くしたら困るだろうと言われ、サスケは長い時間、沈

黙していた。
 やがて大きな溜め息をついて、答える。

「今、門を開ける。そのまま真っ直ぐ玄関を入ってく

れ」

 

 カカシはサスケの門を開けるという言葉に完全にベ

ッドに起き上がり、まっすぐ見つめた。

 

 サスケが振り返る。電話を切ってカカシに話しかけ

た。

 

「あんたは警察の知り合いがいるのか?」

 

「大学時代の友達に警視庁の刑事がいる」

 

「ああ、そいつだな。大和とも顔見知りなのか?」

 

「一度会ったことが…」

 

「なるほど。いくら計算しても、友人がどう動くかな

んて把握できないからな…」

 

 サスケはカカシのところに近づきその頬を撫でた。

 

「終わりだ。計画より短くて残念だけど」

 

 頬を撫でる手を首筋にずらせ、カカシの唇にキスを

した。

 

「大和とその刑事が来てる。もう、潮時だな。あんた

を解放する」

 

 唇を離すとそう言って、サスケはドアに向かい歩き

出す。

 

 カカシは突然訪れた解放のチャンスに思考が追いつ

かず一瞬ぼんやりとサスケを見送るが、次の瞬間叫ん

だ。

 

「ま、待ってくれ。これを先に外して」

 

 動物のように首輪を嵌めて鎖で繋がれた姿を見られ

たくない。テンゾウに、こんな姿を!

 

 サスケは振り返り微苦笑した。

 

「それを外したら、同意だったと言い張れるぜ。鎖で

繋がれているから、無理やりだったと分かる」

 

「でも!」

 

 嫌だ、こんな姿を。

 

 カカシの叫びを無視して、サスケはドアの外に出た。

 

 

 閉まったドアをしばらく絶望の気持ちで眺めていた

が、とにかく服を身につける。

 

 テンゾウが見たらどう思うだろうか…。サスケに何

をされていたのか、どう言っても分かってしまう…。

 カカシは自分の首輪から繋がれた鎖をぎゅっと握り

しめ、唇を噛む。

 

 

 その時、扉が開いた。

 

 

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