Winter color

四季の庭荘

 

 

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「ねこ?・・・」

 

 サスケとの電話を終えた後、何かしら腑に落ちなく

て、テンゾウは自分しかいない部屋で疑問を口にする。

 

猫なんて飼っていると言っていたことあったかな?

サスケはプライベートを自ら話したりするタイプでは

ないが、動物を飼っているのなら一度くらいその話を

耳にしても良さそうだとテンゾウは思う。

 

 二人で一緒にタクシーで帰ったのは自来也と、サス

ケ本人が認めているのだから間違いない。しかしカカ

シのマンションの郵便受けを見る限り、一度でも帰っ

た様子はないのだ。

 

 つまりはサスケがタクシーを降りた後、本当にカカ

シが一人で乗って行ったのか、確認が取れない。

 

 そこまで考えてテンゾウは頭を振る。

 

 カカシのことを心配するあまり、サスケのことを疑

いかけた。会社の同僚の間でカカシを攫う理由もない

し、あり得ない。

 

 

 これからどうすれば・・・。絶対に何かがおかしい。

カカシが自分に連絡をよこさないなんて。

 

もう何度目か判らないが、カカシに電話をかける。

電源が入っていないという機械音が返ってきて、カカ

シに異変が起きたのだと、テンゾウの中の疑問が確信

に代わる。

 

 行方不明で相談するところとなればやっぱり警察だ

よな、そう考えたところでテンゾウはハッと思いつく。

 

 カカシの友達に警察官がいる。

 

 何より、自来也の忘年会に行く日は友達に会うこと

になっていたとカカシが言っていた。そのことを綱手

編集長に正直に言ったら怒られたと・・・。

 

 そうだ、元々会うことになっていた友達なら何か知

っているかもしれない。そうでなくても、警察なのだ

から相談に乗ってくれるのでは。

 

 テンゾウはカカシのとの会話を必死に思い出す。

あの熊のような人は確か父親が元警視総監だと言って

いた。そうだ、猿飛アスマ。

暴力団が絡む大きな覚せい剤の事件が落ち着いて、

その祝いを兼ねて忘年会を開くことになっていたと。

暴力団と言えば・・・なんだったかな。

 

少し考えて思い出す。そう、警視庁、組織犯罪対策

課。

 

 テンゾウは瞬間的に警視庁を検索し、ためらいなく

電話をかけた。もうすっかり夜だったが、本人はとも

かく、警察の業務が終了はないだろう。警察や消防や

病院は、夜でも誰かが対応してくれるはず。

 

「組織犯罪対策課の猿飛アスマさんをお願いします。

緊急の用事なんです」

 

 自分の名を名乗り、テンゾウはアスマを呼び出した。

もう猿飛は退勤しておりますという返事は想定内。も

ちろん、個人の連絡先も教えてはくれないだろう。友

人なら、プライベートな連絡先は元々知っているはず

だから。

 

「はい。ですが本当に至急の用事なので、すぐに彼に

伝言をお願いします。彼の友人の畑カカシさんの件で、

重要な話があるとお伝えください。僕の連絡先は・・・」

 

 テンゾウは木の葉出版に勤める大和テンゾウだと改

めて名乗り、自身の携帯の番号を伝えた。至急や、重

要という言葉を多用し、いかに緊急かを電話口の人に

伝える。

 

 カカシの会社の同僚だと判れば、アスマさんもとり

あえず連絡をよこしてくれると考えた。もし今夜一晩

アスマからの連絡がなければ、明日朝一番に綱手に事

情を話し、捜索願を出そうと決心する。

 

 

 

 ほどなくして、テンゾウの携帯に見知らぬ電話番号

の着信があった。

 猿飛アスマからだと確信し、テンゾウは勢い込んで

電話に出る。

 

カカシと連絡が取れなくなって3日目の夜。テンゾ

ウにとって最後の頼みの綱だった。

 

 

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