Winter color
30章
アスマがトイレに向かって結構な時間が経つのにカ
カシも帰って来ない。
カカシのおかしなテンションもずっと気になってい
たテンゾウは、ガイに一言断って見に行く。
そこを曲がればトイレに向かう廊下に出るという角
を曲がり、自分の目を疑う光景に出合う。
アスマとカカシが抱き合っている。
少なくとも、テンゾウには一瞬そう見えた。
「カカシさん…」
驚いて、思わず呟いた言葉に、アスマが顔を上げて
こちらを見る。
「いや…あのこれは」
アスマは何かを言いかけたが、カカシはアスマの胸
に顔を埋めたままだった。
ふいに、怒りが湧いた。
誰に?
アスマにも少し。サスケのところから連れ出して、
明らかにおかしいカカシを友人として心配してくれて
いる。それは分かるが、何も抱きあわなくても…。
それより、カカシ。どれほどに傷ついたとしても、
どうして恋人の自分でなく、他の男に頼っているのか。
何より自分に。カカシがおかしいことは明らかなの
に、何も自分からアクション起こさず、結果的に目の
前で他の男に頼っている恋人を見る羽目になっている。
後はもう、不甲斐ない自分への苛立ちそのままに、
強引にカカシをファミレスから連れ出した。
ガイにも泊めてくれと言っていたが、ファミレスの
扉を出ると流石に喚くことはせず、カカシは大人しく
車までついてきた。テンゾウが助手席のドアを開ける
と、憮然としながらも乗り込む。
車を走らせても、カカシはテンゾウを見ることなく、
無言で少しずつ明るくなっていく外を見ていた。
テンゾウは自分のマンションに車を止める。カカシ
の着替えや洗面道具は、もうあたりまえのように置い
てある。
カカシは廊下、エレベーターとずっと無言で、部屋
に入った。
中に入って初めて口をひらく。
「テンゾウ…シャワー浴びる。着替え、出しておいて
くれ」
「分かりました」
やがてカカシがテンゾウの用意した室内用のラフな
スエットを着て出てきた。そのまま寝室に向かうのを
横目で見ながら、テンゾウもシャワーに向かう。
「カカシさん」
シャワーを終えたテンゾウはベッドに横になってい
るカカシに声をかける。
カカシは顔の半分くらいまで掛布を被り、横を向い
ている。
「カカシさん、布団取りますよ」
そう言ってテンゾウは本当に掛布を剥いでしまう。
眠ることも出来ずに、ただ布団にくるまっていたカ
カシは、テンゾウの行動に怒りを覚えて、身体を起こ
した。
「何する!?」
「今からするから、布団は邪魔」
カカシが本当に驚いた表情で、目を見開く。
「お前何言って…。俺がどんな目にあってたか、わか
ってるだろう…」
「分かってますよ。男に強姦罪は適用されないらしい
から、強制わいせつ?それも一度や二度じゃないです
よね?僕たちが行く直前も、やられてたのかな。まだ
残ってますよね、あちこちのキスマーク」
酷いテンゾウの言葉にカカシは胸がしめつけられる。
「だったらどうして…。サスケに抱かれてた俺見て、
そんな気になるのか…?」
「カカシさんは、サスケにつけられた痕残したまま、
僕の部屋で眠るつもりですか?」
さっきから傷を抉るようなテンゾウの言葉に、カカ
シは怒りを爆発させる。
「だから!俺は帰りたくないって言っただろう!!ア
スマの家か、ガイの家に行くつもりだったのに、お前
が無理やり此処へ連れてきたんじゃないか」
テンゾウもカカシに負けない大声で言い返す。
「どうしてアスマさんに抱きついているんですか!?
どうしてガイさんに泊めてくれっていうんですか!?
どうして僕を避けるんですか?」
「だから…」
カカシはテンゾウの言葉に反論しかけて、言葉に詰
まる。泣きそうになるのを、ぐっと唇噛みしめてやり
過ごすと、あらためて言葉を発した。
「…嫌だろう、付き合ってる相手のキスマークとか、
縛り痕とか。だからせめて見た目の痕だけでも消えて
からと思って…」
「無理やりつけられた痕より、自分の意思でアスマさ
んと抱き合ってるあなたを見る方がよっぽど嫌です」
カカシが少しあきれた様にテンゾウを見る。
「お前…何言って…勘違いするなよ。あいつの方が怒
るぞ、紅っていう美人の彼女もいるのに」
「アスマさんや、ガイさんがとても良い友達だってい
うのは分かってます。でも今、僕が目の前にいるじゃ
ないですか。それなのに、どうして他の男の家に泊ま
るとかいうんですか」
「だからそれは、お前が気分悪いだろうと思って…」
「僕はね、カカシさん。あなただったら、たとえゴミ
の中にいても、泥にまみれてても抱けますよ。カカシ
さんだったら…」
「…」
カカシが黙ってテンゾウの顔を見つめる。
それから微かに、カカシがテンゾウの家に来て初め
て笑った。
「何だよ、それ。たとえが汚すぎて嬉しくない」
「編集員なのに、語彙が貧しくてすいません」
「お前…ほんとに気にならないのか?」
テンゾウはカカシの言葉に答えず、両手で頬を包み
口づける。唇が離れると服を脱がせ、首に残る首輪の
痕、身体に残るキスマークに指を這わせた。カカシの
腕を取り、その手首に残る縛り痕を目の前に持ってく
る。
「いっ…」
テンゾウがカカシの縛り痕が残る手首に歯を立てる。
軽く噛みつけると、そのまま強く吸い上げた。
更に反対の手首も噛んで吸い上げ、首筋にも同じよ
うに薄く歯型が残る程度に噛み、キスマークをつけて
いく。
カカシの身体に残るサスケの凌辱の上に、テンゾウ
が新たに痕を刻みつけていく。
カカシをベッドの上に横たえ、両腕をテンゾウの両
腕で抑え込む。カカシの乳首にも歯を立て、乳輪ごと
吸い上げる。舌で転がすように舐め、再び吸い上げる。
左右の乳首に、交互に休みなく責めを与えた。
「あ…や…」
手首や首では痛みが上回っていたテンゾウの行為も、
敏感な胸の突起に施されると快感が勝り、カカシの息
が上がっていく。