Winter color

四季の庭荘

 

 

Winter color

 

 

31

「は…あ…ああ…」

 

テンゾウに全身を愛撫されて、抑えきれない吐息

が漏れる。

 

『無理やりでも合意でも、やることは一緒だよ』

 

これは自分がアスマに言った言葉。

 

違う…。

 

間違えていた、というより忘れていた。この感覚。

 

スタンガンで動けなくされ、縛られて無理やり行

為を強要された経験が衝撃過ぎて、3日間だけなの

に好きな人と身体を重ねる満ち足りたこの気分、こ

の感覚を忘れていた。

 

 テンゾウに拓かれ、貫かれる。

 

 その瞬間の辛さも、もたらした相手がテンゾウだ

と思うと快感に昇華する。

 

 テンゾウへの恋愛感情を自覚し、両思いとなった

時からどこか覚悟していた自分が受け入れるという

事。

『抱きたい』と言われて未知の体験に一抹の不安は

あっても、嫌悪感は起こらなかった。

 

「あ…あっ…」

 

はっきり求められて覚悟を決めた。自分の声だけ

は気恥ずかしくて仕方ないが、この恋に後悔はない。

 

テンゾウがカカシの中の良いところを抉るように、

何度も何度も、細かく時には大きく、ストロークを

変えて打ち付ける。

 

 「ん…や…」

 

確かに行為は一緒なのだ。

 

でも気持ちが違う。貫かれている間も、口づけや

全身への愛撫を仕掛けてくるテンゾウの動きに身体

がしなる。心が溺れる。

 

「テンゾウ…テンゾウ…」

 

「は…はい?…」

 

 突き上げる行為を繰り返しながら、テンゾウも余

裕がない中でうわごとの様にカカシの呼びかけに応

ずる。

 

「テンゾウ」

 

「何?…カカシさ…」

 

 カカシがテンゾウの頬に手を添え、自ら口づけを

誘う。

 

 唇が離れると、カカシがその耳元に囁いた。

 

「テンゾウ…好きだ」

 

「え…あっ…」

 

 カカシの不意の声に、テンゾウの動きが止まる。

 

 二人は顔を見つめあった。

 

「…いっちゃった?」

 

 カカシが問うと、テンゾウがちょっとバツ悪そう

に顔をしかめた。

 

「カカシさんが急にそんなこと言うから」

 

「そんな事って何だよ」

 

「だから…好きとか…」

 

「言いたくなったから」

 

「そんな嬉しいこと言うから…、つい…すいません

中に…」

 

「いいよ」

 

 カカシはテンゾウの背中に回していた両手に力を

入れて、その身体を自分の横に引っ張った。

 

「お前なら…いいんだ」

 

 テンゾウは引かれるままにベッドに横たわり、片

肘をついてカカシの顔を覗き込む。

 

「カカシさんどうしたんですか?さっきまで嫌々と

駄々捏ねていたのに」

 

 カカシは自分の手首を二人の顔の位置に持ってき

た。そこには、サスケに縛られた痕の上に、テンゾ

ウが付けた噛み跡が薄く、そして吸い上げた痕がつ

いている。

 

「好きな相手にされることは…嫌じゃないって実感

したから」

 

「カカシさん…」

 

 テンゾウはほんのひと時カカシの顔を見つめた。

そして好きだと言ったカカシのその想いに、言葉よ

り態度で答えるように深い口づけを仕掛けてくる。

 

されるがままに舌を絡め、再びテンゾウの指が胸

の突起を弄る。

サスケに抱かれていた昨夜からほとんど時間が空

かずに、何度も行われているその刺激に痛みを感じ

ても、カカシは逆らわなかった。

 

『カカシさんは、サスケにつけられた痕残したまま、

僕の部屋で眠るつもりですか?』

 

 アスマやガイに頼り、テンゾウに向き合わなかっ

た自分に投げかけられた先ほどの非難の言葉。

 

「んっあ…ああっ…」

 

 つい先ほどまでテンゾウの楔で満たされ形を覚え

ているそこに、再び打ちこまれる。

 

 半日前までのサスケの痕が、身体からも心からも

遠のいてしまうよう、すべてがテンゾウで上書きさ

れるよう、疲労しきった身体を喘がされて過換気に

意識が飛びかけても、それでもカカシはその身を委

ね、ひたすら求められるまま従った。

 

 お前が好きだ、前よりももっと、もっと好きだテ

ンゾウ…・

 

「ああっ…はあ…はああ…」

 

「カカシさんっ…」

 

 身体と心が重なりあう至福の時。

 

 

 

「大丈夫ですか?」

 

サスケに捕らわれてからはほとんどの時間抱かれ

ていた。解放されてからも、こうして数時間後にま

た激しくテンゾウと抱き合い、一生分のセックスを

したと思う程に疲れ切っていた。

カカシはうつ伏せになったまま、顔だけをテンゾ

ウの方に向ける。

 

「大丈夫じゃない…」

 

「シャワーどうします?身体拭きましょうか?」

 

「いいよ、そこまで動けないわけじゃない。怠いだ

けだし…ちょっと手を貸せ」

 

 テンゾウの手を借りて身体を起こすが、大腿に白

濁の液体が伝い、カカシの動きが止まる。

 

「あ…」

 

「すいません」

 

 テンゾウが慌ててティッシュで拭きとる。

 

「ふ、風呂場で、ちゃんと、あの僕が…」

 

「うるさい、テンゾウお前…」

 

 カカシがテンゾウを睨む。

 

「次は許さないから」

 

「え?な、なんで?さっきは僕ならいいって言って

たじゃないですか」

 

 先に歩き始めたカカシの後をテンゾウが慌てて追

いかける。

 

カカシは浴室のドアの前で振り替えって笑った。

 

「冗談だよ。早く来い、お前が始末してくれるんだ

ろ」

 

浴室の壁に手を付き、囚われの身でもサスケには

絶対に許さなかった中の洗浄をテンゾウに委ねる。

テンゾウはシャワーヘッドの摘みを変えて細く勢

いよく湯が出る様に合わせ、二本の指で広げた孔に

注ぎ、それを掻き出す行為を何度か繰り返す。

 

恥ずかしいなんてレベルではない行為。でももう

テンゾウに隠す事など無い。

 

身体も洗われながら、何度も口づけあう。

 

「カカシさん、好きです」

 

「うん、俺も」

 

昨日より今日、今日より明日、お前をもっと好き

になる。

 

 

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