新月の庭荘

その八

 

その十

 

「カカシ、大丈夫か?」

いつもより乱暴にサスケに抱かれた翌日、サスケが

朝食を作り終え、まだベッドにいたままの

カカシに声をかけた。

「うん、大丈夫・・・。眠かっただけ。」

カカシは笑顔で返す。

 

 自分が余計な事を言って、サスケを怒らせたと思っていたが、

目覚めるといつもの優しいサスケの態度に、カカシは安心した。

身も心も、その全てを愛し、愛してくれたテンゾウを

忘れることは出来ない。いつも心で想ってる。

けれど、もう三年も過ぎたのだ。

 若いサスケの一時的な激情で、いずれ同性で年上の自分になど

飽きてしまうのではないかという考えもどこかにあった。

実際、サスケに想いを寄せる女の子はたくさんいたし、

色々な誘いもあるようだったが、サスケは見向きもしないで、

カカシと暮らすこの部屋に帰ってくる。

 

愛せないが、愛しいサスケと、これからも生きていこうと思う。

カカシは、大丈夫かと覗き込んだサスケの首に腕を回す。

自分からキスをして、口には出さずとも、

サスケを愛しく思っていることを示した。

 

 

サスケは、自らキスをしてくれたカカシの心を思う。

脅迫者である自分に、恋人を忘れられないと謝りながら、

自分を受け入れようと努力している愛しい人。

一体、自分は何をしているのだろう・・・・・。

 

 

 

お互い任務明けだったある日、今日は外食で済まそうと、

二人で居酒屋に行った。

「カカシ先生!サスケくん!」

「おお、こんなとこで会うなんて、珍しいってばよ。」

ナルトとサクラに偶然会う。

「ほんとに四人揃うなんて、すごく久しぶりじゃない?」

サクラが言った。

「二人が、邪魔されたくなくて、俺たちを避けてたんじゃないの?」

カカシが軽口を言う。ナルトとサクラは付き合っていた。

「避けてんのは、そっちだってばよ。飲みに誘っても中々来ないし。」

「二人はどうなの?里での女子人気の一二を争う二人が、

いつまでも恋人作らないから、みんな自分がいけるかもって期待しちゃって

行かず後家をたくさん作っちゃってるわよ。」

 

四人で会うのは本当に久しぶりだったので、

色々と会話が弾む。ただ、話をしてるのはナルトとサクラで、

カカシとサスケは聞き役専門だった。

 

「恋人といえばさあ、あの堅物ヤマト隊長も最近恋人できたみたいなの。」

サクラの思いがけない言葉に、サスケは思わずカカシを見る。

カカシは、それまでの態度と全く変わらず、穏やかにサクラの方を見ていた。

それが、一流忍者としての感情抑制としても

変わらぬカカシの態度に、サスケは少しほっとする。

 

「ね、先生。先生の親戚って木の葉にいる?」

サクラが、唐突にそれまでの会話と違う事を聞いた。

「親戚?さあ・・・?祖父母は俺が生まれる前に亡くなってて、

両親とも兄弟はいなかったらしいから、親戚づきあいは

ほとんどなくて、よく知らない・・・。何で?」

「ヤマト隊長の恋人って、どっか先生に似てるのよ。」

「え・・・?」

ヤマトに恋人が出来たと聞いた時には、

変わらない態度だったカカシが、

その恋人が自分に似ていると聞いて、

飲みかけていたビールを飲まずにテーブルに置く。

サスケは、カカシから目が離せなくなった。

 

戻る 続く