過ぎゆく時に佇む

奥の間

 

 

 過ぎゆく時に佇む

 

8

 

 

紅の視線の先には、常にアスマがいた。

 

想いが叶ったんだな、紅・・・。

 

紅とアスマの子供なら、きっと美しく元気な子供が

生まれるだろう。幸せになってほしいと、心から願う。

 

 

 

 カカシに退院許可が出た。

 

 さっそくナルトの新術にヤマトと共に取り掛かる。

しかしナルトにはチャクラの性質から説明をしなくて

はならなかった。

 

絶対アカデミーで習っているはずだけどね・・・。

 

 カカシは溜息をつく。

 

間違いなく未来の火影候補なのだが、ナルトはもう

少し・・・勉強はした方がいい。

 

 

 理論の理解は追いつかないが、身体的にはカカシが

考案した影分身を使った練習により、目を見張る速さ

でナルトは成長していく。

 

 

 カカシはその背中にかつての師を見る。

 

 自分の想いで苦しめてしまったあの人を。

 

 

 

 

 リン自ら望んだこととはいえ、その胸を貫いた我が

手のおぞましさに耐えきれず、自分を見失っていた時、

ミナトはカカシを暗部に引き入れた。

 

 カカシのミナトに対する感情が尊敬だけではないと

はっきりと自覚したのはその頃。

 

 

『カカシ・・・駄目なんだよ、許されないことだ』

 

『先生も俺を好きだと思ってくれているんでしょう。

だったら、今は帰れなんて言わないでください。』

 

『カカシ・・・そういうことは言わないでくれ。君は

分かっていない』

 

『分かってないって何がですか』

 

『僕は大人の男なんだよ。君がそばにいれば余裕がな

くなる。大人はね、好きな人がそばにいれば口づけを

したくなるし、口づければ次に身体も求める。僕だっ

て例外じゃない』

 

『俺は、構わない。先生と一緒にいたい』

 

『閨房術は習っているだろう?男同士は元々の機能と

は違う使い方をするんだ、誰でも最初は痛いし身体が

僕より小さい君は相当に辛いよ。そんなこと、想像す

るのも嫌だろう。さあカカシ、もう帰るんだ』

 

『今一人になったら、俺は何をするか分からない』

 

 半ば脅迫だった。そう言ってミナトの躊躇する気持

ちを払拭し、自らカカシを抱きしめる様に仕向けたの

だ。

 

 

 

 ミナトは何度も逡巡しながら、それでもカカシに口

づけを行い、カカシをベッドに横たえる。

 

『あーっ・・・くっ・・・いたっ・・・』

 

 十分に溶かされたはずでも、ミナトのものを突き入

れられ、初めて割り開かれた時には痛みに叫び声を上

げた。

 

『ごめんよ、カカシ・・・』

 

 ミナトはいつもカカシを抱いた後、謝りながら口づ

けをして辛そうな目をしていた。

 

 彼を苦悩させていることは分かっていた・・・。

 

 それでも、カカシはそばにいたかった。四代目とし

て里を背負うミナトと未来を歩けないことは分かって

いたからこそ、思い出を自分の身体に刻みたかったの

だ。

 

 うずまきクシナとの婚約を聞いた時、自分が思うよ

りずっと冷静で対処できたのは、それでも彼が生きて

いたからかもしれない。

 父やオビトやリンのようにもう話すことさえできな

くなったわけじゃない。

 先生が幸せそうに笑っているならいいと思っていた

のに・・・。

 

 九尾が里を襲い、ミナトはクシナと共にその身を犠

牲にし里を守り、この世を去った。

 

 砂がさらさらと指の間から零れていくように、カカ

シが愛し、カカシを愛した人が失われていく。

 

 

 

 

 かつて焦がれた人の忘れ形見であるナルトの師とな

ったことは、運命のいたずらなのだろうか。

そのナルトは、毎日の過酷な新術開発の訓練で疲れ

果て寝袋で深い寝息を立てている。

 

 しかし、ナルトの能力は本当に計り知れなかった。

新術は、完成の形を見せ始めている。

 

「お前がいなければ、この修業は成り立たなかった。

ナルト本人より大変そうで悪いとは思っているけど」

 

 野営用の焚火を休みなくくべているヤマトを、カカ

シは労った。

 

「大変なのは最初に言われてましたしね。覚悟は出来

ていましたよ」

 

「そういってもらえるとありがたい」

 

「どうせ・・・あなたには逆らえない。奴隷と一緒で

すから、僕は」

 

「奴隷とは穏やかな言い方じゃないね。人聞きの悪い

言い方するなよ」

 

 カカシが苦笑交じりに言うと、ヤマトは至って真面

目な顔でカカシに告げた。

 

「暗部時代からずっとずっと想いつづけて、忘れよう

と努力を重ねても、こうしてあなたの言葉一つ、笑顔

一つでいいように踊らされて逆らえない。僕はあなた

の奴隷以外の何者でもないですよ」

 

 カカシは驚いてヤマトを見る。

 

「テンゾウ・・・」

 

 

 焚火がパチッと音を立てる。

 

 二人の頬を炎が照らす。

 

 

「お前・・・この前は俺の事なんてとっくに考えてな

いそぶりで・・・」

 

「あの時は、ナルトの新術にこれから取りかかろうと

している時に、あなたに変な気を使わせたくなかった

から。でも、成長の速いナルトは、もうコツを掴みま

した。後は本人が努力するだけのところまできている」

 

 カカシは黙ってヤマトを見つめる。

 

「だから正直に言いますね。この前、色恋に不自由し

てないって言いましたが、正確にはセックスする相手

には困っていないということです。自分でも・・・も

う笑うしかないくらい・・・忘れようと泣いたり喚い

たり、派手に遊んだり、酒に走ったり、みっともない

こと繰り返して、それでも・・・やっぱり本当に好き

なのはあなただけ、他の誰にも本気になれない、今ま

でも、きっとこれからも」

 

「・・・また、俺の露骨に困ってる顔見て笑うパター

ン?」

 

 カカシが静かに問うと同時に、木遁で身体を拘束さ

れる。

 

 カカシの実力なら本来回避出来た。

 

 しかし、ヤマトの今にも泣くのではないかと思わせ

るその苦悩に満ちた表情が、カカシに抗うことを躊躇

わせる。

 

 四肢を拘束されたカカシに、テンゾウが近づく。

 

「テンゾウ・・・なんだよこれ」

 

 カカシは自分を縛る木々に視線を這わせ、ヤマトに

問う。

 

「冗談じゃないところを見せますよ。ナルトがこんな

にそばにいる今でさえ、あなたを抱きたい」

 

 ヤマトはカカシの口布を下ろし、口づけをした。四

肢を拘束したカカシの頬を両手で包み、唇が触れあう

とすぐに口内に侵入する。

 

 

 

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