過ぎゆく時に佇む
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ヤマトの舌がすぐにカカシの舌を捉えて絡みつかせ
た。
アスマが守護十二士となるために里を出た後、暗部
で自分を先輩と呼び慕うこの後輩の視線が、常に自分
だけを追っている事に気づいた。
微笑めば頬を赤らめ、褒めれば目を輝かせ、戯れに
身体に触れれば硬直する。
気づかないはずがない。単なる先輩への憧れとは違
うテンゾウからの想い。
愛しいと思った。
それまで、自分の周囲にいた近しい人は年上か、あ
るいは同世代。4歳下の後輩は、きらきらとしたまっ
すぐな目で自分を追い、素直に感嘆してくれる。
恋愛感情と、自分を慕う年下の者に対する慈愛のよ
うな感情とをはっきと区別するのは、自身がまだ青年
といわれていたあの頃には難しく、若さの勢いそまま
に身体を重ねる。
九尾を組み込まれたミナト先生の遺児とうちは一族
の遺児、いずれ彼らの上忍師となることを見込み三代
目に暗部から離れることを打診された時、テンゾウと
の関係を解消する時が来たと思った。
『終わりにしよう』
テンゾウに告げる。
『ど、どうしてですか?何が駄目でしたか?言ってく
ださい。僕は別れるなんて嫌です』
怖かったのはその必死さと真剣さ。
自分がテンゾウを想う気持ちと、テンゾウが自分を
想う気持ちのバランスは明らかに不均衡で、もうこれ
以上テンゾウを振り回してはいけないと感じた。
『俺は男同士ってのに興味あったけど、もう充分経験
したからいいや。お前もさ、別れるのが嫌っても、ま
だ遊び足りないって程度の意味だろう?まあ、身体の
相性は悪くなかったけど、そろそろお互いセックスす
る相手は女に戻そうぜ』
『ぼ、僕はそんなつもりは、僕は本気であなたを好き
で・・・』
テンゾウの言葉を遮る。
『おいおい、冗談はやめよう。野郎同士で本気も何も
ないだろ。気持ち悪いこと言うなよ。じゃあな』
なるべく酷い言葉を選び、テンゾウがふっ切れる様
に、別れを告げた。
テンゾウはあれから連絡一つ寄越さなかった。暗部
のテンゾウにとって、上忍師として里の表舞台にいる
カカシの任務の動向はいくらでも調べがついたはず。
それなのに顔一つ見せることはなかった。もうふっ
切れたのだと、自分のことは過去の人になっていると、
そう思っていたのに。
今、忘れるための努力も実らず変わらず想いつづけ
ていると告白され、縛られて口づけされている。
その強引な行為にカカシは逆らわないでいた。
「どうして反撃しないんですか?たやすいでしょう、
あなたなら」
カカシの視線が微かにナルトの方に流れる。
「あぁ・・・そういう事」
テンゾウは苦々しそうに口の端だけで笑う。
「疲れて眠るナルトを起こしたくないだけですね」
カカシの髪を乱暴に掴み上を向かせた。
「ナルトの眠りのためなら、好きでもない男と黙って
キスもする」
その言葉に、カカシは少し考える。
テンゾウの事を好きでもないと表現するには違和感
がある。
好きでもない、それは違う。ならば好きなのか・・・。
「テンゾウ・・・俺は」
言いかけて、次の言葉が出てこない。何と言えばい
いのか。
テンゾウの真剣さに戸惑い、男同士を試しただけ本
気じゃないと酷い言葉で突き放した後輩に・・・。
突き放しても、まだ好きだと、忘れる事は出来ない
という後輩に、俺は何を言おうとしているのか。
「何ですか?」
「俺は・・・お前が・・・」
言いよどんで言葉が続かないカカシをテンゾウは睨
む。
「今更、貴方に好かれようとは思ってない。割り切り
ましょう、お互いに」
カカシの身体を抱き抱え、瞬身で焚き火から離れ林
の前に飛ぶ。
寝袋に横たわるナルトの姿は遠く見えているが、声
は大声出せばやっと届く程度の距離。
「声は聞こえませんから気兼ねなく」
カカシを拘束していた木遁は解除される。しかしす
かさず口づけされて、テンゾウの手はカカシのベスト
の前を解いていく。
「手ついて」
唇を解放したテンゾウはカカシのベストを脱がせ、
向きを換えて背中から目の前の大木にその両手を添え
て、つくように導く。
「舐めて」
木に手をついたカカシの背後に立ち、右手人差し指
と中指をカカシの口内に捩じ込む。左手はカカシのア
ンダーの下から肌を弄り、乳首を摘まむ。
「んっ・・・」
要求されるがまま、テンゾウの指を湿らせるためカ
カシは舌を絡める。
テンゾウの左手はカカシのズボンをずらし、今度は
前を握り込んだ。
「あっ・・・」
思わず声が出て、テンゾウの指も口内から外れる。
「もういいかな」
テンゾウは後ろからカカシに湿らせた右指を孔に這
わせる。
「うっ・・・」
「狭いですね。遊んでなかった?」
「あっ・・・俺は、ん・・・この前迄入院して・・・」
「あぁ、そうでした。入院してなければ遊んでたって
事ですね」
「そうじゃ・・・あっ・・・んん・・・」
テンゾウがカカシの敏感な箇所を擦りあげる。
「僕をふった後、誰とも寝てないなんてあり得ないで
すもんね。それとも男はほんとに僕が最後だった?」
前を梳きながら、テンゾウは中に入れる指を増やし
ていく。
「あ・・・や・・・」
「ほんと狭い。今は女性オンリーですか?あなたなら
相手に不自由はしないでしょうしね」
カカシはテンゾウから与えられる刺激に立っている
のもやっとな状態に耐え、言葉では応えられずに頭を
振る。
「特定の人いるんですか?」
カカシは再び小さく頭をふった。
テンゾウの想いを断ち切るように酷い言葉で突き放
してから、男も女も誰とも付き合ったりしていない。
俺は・・・テンゾウの事をどう思っているのか。
「まあ、僕には関係ない事ですね・・・。入れますよ」
「あっ、ああ・・・」
木に手をつき、テンゾウからの突き上げに溺れそう
な意識をかろうじて保つ。
乳首を捻られると腰から崩れ落ちそうになる。
暗部時代より遥かに逞しくなったテンゾウは、カカ
シに余裕など与える気はないとばかりに激しく突き上
げる。
「テ・・・テンゾウ・・・ああっ・・・」
後ろから首や耳朶に噛みつくような愛撫をされ、膝
が震えるのを木に手をついて何とか堪える。
微かな呻きと同時に更に大きく二、三度突き上げら
れた。酸欠に近い状態でテンゾウが達したのだとよう
やく理解した時に、自分の中から楔を引き抜かれる。
腰を掴んでいた手も離れ、カカシは堪えきれずにその
足元に崩れる様に座り込んだ。