いつかケルンで
(十)
互いに欲望を開放し、僕達はそれから黙って家路へと向か
った。
入浴後、いつもように別荘の管理をしている夫婦が「もう用
は御座いませんか?」
と伺いに来た。
「もういいよ。」
カカシさんが答える。
「それでは失礼します。また明日参ります。」
「お休み。」
「お休み。」
僕とカカシさんはそれぞれ彼らに声をかけ、彼らが去った
後は、二人きりになる。
それは、普段の事でいつもとなんら変わりはない光景。け
れど、僕達には特別な、そして何より大切な日であった。そ
の日、互いに気持ちを打ち明けた僕達は、二人きりになりす
ぐにそばにかけよる。
僕は彼を抱きしめ、口付ける。想いの全てを込め、彼の唇
を奪う。ひとしきり彼の口内を犯し、僕はベッドへと彼を誘
う。ベッドの上で再び口付けをする。そうしながらも、お互
い入浴後の浴衣の帯を解きあう。紐一つで結んであるだけの
浴衣は、簡単に彼の美しい裸身を露わにする。
僕は彼を横たえた。生まれたままの姿の彼は、何度見ても
眩暈がするようだ。夢中で彼に愛撫をする。気恥ずかしさに、
横を向いてしまう彼を何度も口付けて僕の方を向けながら、
彼の耳、首、鎖骨、胸、彼の肌に痕を刻み込んでいく。
乳首はすでに硬く張り、僕は指でそれを摘み上げる。
「んん・・・。」
彼が、堪えきれず声をあげる。彼の声はまるで麻薬のよう
に僕を陶酔の世界へ誘い込む。その声が聞きたくて、僕は乳
首への愛撫をさらにすすめる。突起を甘噛みし、舌で転がす。
指で強めに刺激を与えると、彼の身体が捩れて、堪えている
唇が開く。何度も舌での柔らかな刺激と、指で押しつぶすよ
うな痛みを交互に彼に与え、彼の艶やかな喘ぎが僕の耳に届
くまで、僕は彼を愛撫し続けた。
「ああ・・・んん・・・。」
彼の声を聞きながら、僕は彼のものに手を這わす。立ち上
がって、先端から愛液が漏れ出ている彼のものを僕はゆっく
りと、そして優しく撫で上げる。再び彼の身体がびくんとは
じけて、反応する。
昼にもしたように、僕は彼のものを口に含み、舌で口で彼
自身のものを犯す。
絶頂に上り詰めた彼は、顔をフルフルと左右に振った。
「あ、ああ、テ、テンゾウ・・・・もう駄目だから・・・放
して・・・。」
口を離してくれと懇願する彼には従わず、僕は最後まで彼
のも口に含み、僕の口の中で開放されるのを待ち、その彼自
身の愛液を僕は自分の手に吐き出した。
そうして、僕は彼のもっと深い後腔へと指を這わす。彼自
身の愛液で充分に濡れた指を、彼の後腔の中へ差し入れよう
と、僕は侵入を試みた。
彼の身体が硬く緊張するのが判る。無意識に足が閉じてし
まう。
「緊張しないで下さい。ゆっくりしますから・・・。」
「う・・・うん・・・。」
僕は精一杯の繊細さで、もう一度彼の後ろに手を這わした。
彼の愛液で濡れている手のひらを、彼の後腔周囲に這わし、
彼の緊張をとる。
人差し指を彼の中へ差し入れる。首を仰け反らせながら、
彼は耐えた。そしてその指を何度も出し入れし、慣れるのを
待つ。少し奥めに入れ込むと、彼が吐息を漏らした。
「んん・・・。」
「辛いですか?」
「大丈夫・・・。」
頃合をみて、僕は二本に増やした。
「あ・・・。」
押し広げられる感覚に彼は、また身体を硬くする。僕は彼
が慣れるまで、何度も同じように出し入れした。そうして、
やがて僕自身の侵入を行う。
「ああ・・・。」
それまでの吐息のような声とは違い、悲鳴のような声をあ
げて初めての痛みに彼は身体を捩り、首を仰け反らせ、美し
い瞳から涙がこぼれた。
「やめますか・・・?」
僕自身もう限界だったが、彼を傷つけたくなくて僕はここ
までにしておこうかと、進入を諦める。しかし、彼が涙を流
しながら僕の腕を押さえた。
「いい・・・。止めるな・・・。」
「でも・・・。」
「いいから・・・。テンゾウに抱かれたい・・・。」
彼の言葉が僕の身体に拡がる。愛しさが募る。僕は注意深
く、彼の様子を見ながらさらに深く彼の中に押し入った。
痛みに耐え、彼は僕を受け入れる。ゆっくりと動きを開始
して、再び彼は小さな悲鳴を上げたが、それでもやめないで
と、僕にしがみついた。
僕の背中に回した指が、爪を立てる。身体を開かされる痛
みは、僕の背中の傷なんかとは比べ物にならないだろう。彼
はその痛みを堪えられる程、僕を愛してくれているのだ。
想いに胸がいっぱいになりながら、僕は彼の中に深く押し
入りそして入り口まで戻るという、動きを繰り返す。やがて
僕は我慢の限界を越え、彼の中に想いの全てを開放した。
荒い呼吸のまま彼を抱きしめ、出会った時から本当は思い
続けていた彼と一つになれた感動をこらえきれず、僕は彼に
もう一度深く口付けし、彼の身体から離れた。