薪ストーブ 家事代行 いつかケルンで

移ろいの間

いつかケルンで

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僕はもちろん賛成し、天気に恵まれたその日、馬に乗って

出発した。

高原を駆け抜ける彼の乗馬姿は、本当に美しいものだった。

彼の髪が振動でゆらゆらと揺れる。その髪に触れたい衝動に

駆られ、そんな邪な感情を振り払おうと、僕は頭を振った。

 

お昼になり、僕達は大きく枝を広げ日陰が出来ている大木

を見つけそこで、侍女が作ってくれた弁当を広げた。

 

 

食べ終えて、二人並んで木にもたれて休憩する。高地の柔

らかな風が拭きぬける。彼の髪をさわさわと風が悪戯して通

り過ぎていく。あたりは静かで、小鳥の声、樹木揺らす風の

音以外は聞こえない。 

少しして、彼が僕の肩に頭を乗せた。

「気持ちいいねえ。」

「そうですねえ・・・。」

触れたいと思った彼の髪がすぐそこに、僕の頬を掠めるよ

うに柔らかにゆれている。

 

 

本当はもう、気づいていた。

僕の心の中の想いに。

初めて出会った高校生の時から、彼に惹かれていた事。

そうして、おそらく彼も同じ想いでいてくれている事。

この二年と半年、お互い言葉に、態度に、秘めたる想いを

感じていた。

許されない事だというのは判っている。だからこそ、伝え

られないでいた。でも、でももう、限界だ・・・。

 

 

僕に凭れている彼の肩を僕はそっと抱いた。彼が僕を見つ

めた。

彼の頬を手で覆う。僕は彼に口付けをし、止められぬ想い

のまま舌を絡める。彼は、抵抗することなく僕を受け入れた。

 

僕はすぐに大胆になった。貪る様に彼の口内を犯す。何度

も、何度も舌を絡め、一度開放してすぐにまた口付ける。そ

うして、耳朶に、首筋に舌を移動させていく。そうしながら、

彼のシャツのボタンに手をかけた。

 

ボタンを全て開放し、僕は愛撫を一度止め、彼を見つめる。

白い肌、薄く桃色の乳首。引き締まった筋肉質の身体だとい

うのに全体に細い線を描く、彼の体の美しさは、僕を捉えて

離さない。

 

少し恥ずかしそうに俯いた彼の仕草を合図に、僕はシャツ

を脱がせ、そのまま地面に押し倒す。そうして彼のズボンも

下着ごと脱がせる。

彼は、羞恥に顔を横に向けた。木洩れ日の注ぐ木の根元で

彼を生まれたままの姿に曝し、僕は彼に覆いかぶさる。

再び口付けながら、彼の胸に手を這わせ、突起を摘まむ。

指で押し潰し、また撫で、硬く芯を持ち始めた乳首を甘噛み

する。

 

彼の息が荒くなる。乳首の愛撫に耐えられぬ様子で声を漏

らす。

「ん・・・。あ、んん・・。テンゾウ・・・。」

彼の下半身も熱を帯び、徐々に硬度を増した彼のものに僕

は手を添えた。彼の身体を舌で愛撫しながら、彼のものを梳

く。恥かしさに彼は首を振る。

「テンゾウ・・・やだ・・・。」

「恥かしがらないで・・・。ずっとずっと・・・好きだった・・・。」

僕は彼のものを口に含んだ。手と口で愛撫し、彼の解放を

目指す。必死に声を堪えていた彼が、もう限界とばかりに大

きく喘ぎを残し、僕の口の中で果てた。

 

彼のためらいがちで、それでいて艶やかさを隠せない姿態

に僕自身も限界だったが、この空の下、彼にそれを強いるの

はやはりためらいがあった。

 

しばらくして、欲望を放って放心していた彼が聞いてきた。

「テンゾウは・・・いいの?」

「今はいいですよ・・・。先輩も外では嫌でしょう。」

「外は嫌も何も、俺の事は裸にしておいて・・・。」

「・・・すいません・・・。でも、もう僕はこれ以上、気持

ちを抑えられなかったので・・・。」

 

すると、彼が無言で僕のズボンのベルトに手をかけた。

「先輩・・・何を・・・。」

「俺も口でしてやるよ。好きだ。テンゾウ・・・。」

 

そうして彼を愛撫した時から、すでに硬く熱くなっていた

僕のものを彼は口に含み、開放を目指してくれた。

 

 

その根元で僕達が睦みあった大木は、おそらく長く生きて

この大地に根をはっているのだろう。そんな畏敬の念を抱か

せる大木でさえ、彼にはこの営みを許すだろうと思う。

それ程に彼は、出会うものを引き付ける高貴さと、儚げな

美しさを湛えていた。

 

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