「お前が選ばれたの?カカシさんのチームに」
2年前テンゾウと共に、当時同じ16歳で暗部に選ばれた親友のヌカタは声が上ずっていた。
今日は二人の休日が揃い、久しぶりにヌカタと合えたので、
最近火影から言渡されたチーム変更をテンゾウはヌカタに話していた。
「テンゾウお前、顔も知らないんでしょ?カカシさんの。」
「うん、噂は色々聞くけどね。13歳で暗部に入ったとか、雷を切る技を持ってるとか。」
「そうだよ、すごい人だよ。オレは何度か一緒に任務ついたけど、あの人は本当の天才だよ。」
少数精鋭の暗部はツーマンセルが基本だが、任務内容によってはチームが合流する事がある。
ヌカタは何度か合同作戦でカカシと組んだことがあったが、たまたまシフトの関係だろう。
テンゾウは一度もカカシと組んだ事はなく顔も知らなかった。
「いいなあ。まじにうらやましいよ。やっぱり木遁の技とか持ってるから選ばれたんだろうなあ。」
ヌカタは心底、カカシとチームを組む事になったテンゾウをうらやましがっていた。
テンゾウはヌカタのテンションとは全く逆だった。
ーそんなすごい人とうまくやっていけるのだろうかー
確かにテンゾウはヌカタの言うように全忍唯一の木遁使いだったが、
そのことがすなわち、実験体であるという自分の出自を思い知らされ、心のどこかで疎ましく思っていた。
出来れば何事もなく目立たず過ごしたい。
そういう意味で秘密裏に行動する暗部は自分に合ってると思っていたが、
暗部でありながらすでに諸国に名を知られてる天才忍者カカシと組む事になるとは、
テンゾウにとっては正直気が進まない事であった。
ーどんな人だろうか.ー
カカシとの初任務の日、テンゾウは先に火影室に着き、緊張はピーク達していた。
カカシの数々の噂を聞く限り、質実剛健な男である事に間違いなさそうだ。
ちょっとしたミスとかでもぶっ飛ばされるかも。
「カカシとは初顔合わせだろう。面をはずして待っていなさい。」
三代目火影に促され、テンゾウが面をはずした所で、ドアが開き一人の暗部服を着た男が入ってきた。
「カカシ、ご苦労。初顔合わせだ、お前も面をはずすと良い。」
三代目に言われ面をはずしたカカシを見てテンゾウは思わず声をあげた。
「えっ?」
変な声をあげたテンゾウをカカシと三代目が同時に見る。
「何?」
「あ、いえ、何でもないです。」
面をはずし現れたカカシと呼ばれた男は、テンゾウの想像とかけ離れていた。
どんな大男が現れるかと思っていたのに、そこに立ってるのは肌の色はどこまでも白く、
身長こそテンゾウとほとんど変わらなかったが、筋骨隆々とはほど遠い華奢な青年。
銀色の髪、灰色がかったブルーと、赤の色違いの瞳がとても印象的なその青年は、優しい笑顔を浮かべていた。
「いきなり人の顔見て『えっ?』てなんだよ。あ、目の色が気になっちゃった?」
「ち、違います。そういうわけではないです。」
想像してた武骨な大男とは違う、と言う事を正直に話す事も出来ず、テンゾウはしどろもどろになる。
実際目の色は気にはなったが、それは美しい芸術品を見た感動と同じものだった。
カカシは怒る事もなく、むしろ楽しそうにテンゾウの顔を覗き込んで言う。
「いいよう。正直に気になるって言ってくれても。オレカカシよろしくね。」
色違いの美しい瞳をまっすぐにテンゾウに向けたカカシの笑顔が、
テンゾウの心に深く刻み込まれる。
ー一生忘れないだろうなー
何故ふいにそんな事を思ったのか、自分でも不思議だったが、
このカカシとの出会いの場面は一生忘れられないものになるだろうと、テンゾウは思った。
「それでお前は誰?」
「え?」
「まだ名前聞いてない。」
相変わらず笑顔でカカシが言う。
テンゾウははじめて自分がまだ自己紹介をしてなかったことに気づいた。
「ははは。テンゾウは緊張しておるのだろう。」
三代目がフォローするように言った。
「今度の任務は長期になると思われる。お互い任務中に話しをして、チーム作りをするとよい。では任務内容を説明するぞ。」
「はい。」
二人は三代目の前に並んだ。