カカシとの初任務は滝の国の抜け忍、双子のイズルと、ハイリの暗殺。
この二人は、あちこちで娘をさらい売り飛ばすという犯罪集団のボスになっており、
滝の国でも自国の抜け忍が行っている非道な犯罪を憂い、次々に刺客である追い忍を送ったがことごとく返り討ちにあっていた。
その為、木の葉に依頼が来たのだった。
さらわれた娘達の臭いをカカシの忍犬達に追わせ、
木の葉を出立してから3日の後、ようやく悪党どもが休憩してるところを見つけた。
少し離れた位置から様子を伺う。
「あの、ふんぞり返って座っているのがイズルとハイリですね。」
周りには部下らしき男たちも10人いるようだ。
「娘たちが多いな。」
カカシがつぶやいた。
「そうですね。こう人質が多いと、動きずらいですね。」
娘たちは目視で8人いる。逃げないよう足かせをされていた。
暗部としての本来の任務は双子の暗殺。人質の安全確保は目的ではないが、
かといって、さらわれてきた娘達を無視するカカシとテンゾウではない。
「援軍を待ちますか。」
ここを見つけた忍犬達がすでに援軍を呼びに行っている。
「や、やめてえ!。」
娘の悲鳴が聞こえた。
ひとりの悪党が娘の着物をはぎとろうとしていた。
「おい、売りもんだぞ。」
別の悪党がめんどくさそうに言う。
「いいじゃん、ひとりぐらい。またさらってくればいいさ。ちょっとやりたいんだよ。」
「援軍を待つ時間はなさそうだな。」
カカシがつぶやいた。
「オレが援護するからテンゾウは娘達を集め、安全な場所に結界をはれ。」
「部下達はともかく、イズルとハイリはひとりでは危険です。」
「娘達の安全を確保したら、戻ってきて援護してくれればいいさ。行くぞ。」
カカシに援護されながらテンゾウが娘達を木遁の家に集め結界をはり、戦闘場所まで戻ろうとした時、
10人もの部下達はすでに倒され、カカシは双子を相手にしていた。ひとりを倒した時、もうひとりに刀で左肩から縦に切られカカシの白い肌から鮮血が飛ぶ。
その瞬間、まだ距離が離れているテンゾウにもカカシの殺気が倍増したのが伝わった。一瞬の後、もう一人も地面に沈んでいた。
娘達の解放や、後始末は忍犬が連れて来た援軍に任せ、カカシとテンゾウは少し離れた川辺にいた。
テンゾウは上半身裸になったカカシの肩の傷を洗い、包帯を巻く。
「ゴメンねえ、余計な手間取らせちゃって。」
「僕が何も手伝えなかったから。先輩に怪我させちゃって。」
「テンゾウは娘さん達守ったじゃん。キャォカッコ良かったよー。助けた娘から、後でファンレターとか来たらどうする?」
「あの時の猫面の忍者さんへとか書いててさ、そのファンレターに写真とか入っててかわいかったら、どうしちゃう?。」
カカシからは殺気が完全に消え、はじめて火影室で会った時の様に飄々と冗談を言う。
ーこの人二重人格なんじゃないかー
「痛みますか?」
「大丈夫。」
カカシは微笑んだ。
川からの風がカカシの銀髪を揺らし、沈みかけの太陽の光が川面に反射して、カカシの柔らかな微笑を照らす。
均整の取れた筋肉質でありながら細身の身体。白く美しい肌。
とてもついさっき計12人の敵を一人で倒したとは想像できない。
テンゾウはカカシから目が離せなくなっていた。
「クシュン。」
もう一度川面から風が吹き、上半身裸のままだったカカシがくしゃみをした。
テンゾウは慌てて自分の荷物から、暗部のマントを取り出し、カカシに巻き付ける。
「ありがと。」
マントを巻きつけながら、そのままカカシを抱きしめたい衝動に駆られ、テンゾウはそんな自分に戸惑いを覚えた。