グルメ 紙風船

泡沫の庭荘

 

 

紙風船

 

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「ん・・・」

 

 テンゾウの指がその場所を探り当て挿入されると、

やはり声が漏れてしまう。ただ、カカシもそれを抑え

ようという余裕がなくなってくる。

 

 内壁を擦るように繰り返されるテンゾウの指の動き

に、カカシは翻弄されていく。小さな痛みとともに、

経験のない世界へと飲み込まれる。

 

「ああ・・・」

 

 指が増やされ、拡げられている感覚が微かに感じら

れる。快感なのか、痛みなのか、わけが判らない状態

に陥る。

 

「力抜いて・・・。カカシ先輩・・・」

 

「無理・・・」

 

「いや、無理でも、力抜かないと・・・」

 

 テンゾウは動きを止めることなく、カカシに囁く。

汗が滴る。テンゾウにも、余裕など全くなかった。た

だ、若い肉体は、想いを伝えたカカシを前にして、こ

の行為を止める分別を持ち合わせていない。

 

「好きだ、カカシ先輩・・・。カカシさん・・・」

 

 テンゾウは指を抜き、カカシの足を広げ、自らの杭

を打ち込む。

 

「テ・・・ああっ・・・」

 

 小さな悲鳴をあげて、カカシは体を仰け反らせた。

テンゾウはその首筋に、その唇に、その胸に、愛撫を

重ね、更にカカシ自身に手を添え快感を与えながら、

動きを加えていく。

 

「テンゾウ・・・・あっ・・・はっ・・・。待て・・・

ああ・・・。」

 

 互いに同性は初めてというその行為は、カカシに多

大な苦痛を与えた。しかし愛し、愛されるという原始

的で深い想いが、その痛みをも凌駕していく。

 

 

 その持て余す程の熱情を互いに放出した後、静寂の

中に二人の息づかいだけが部屋に響いていた。少しの

時間が経過し、テンゾウがようやくカカシに声をかけ

る。

 

「カカシ先輩・・・大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃない・・・」

 

「ほんとに?あ、す、すいません」

 

 テンゾウはカカシの言葉にガバっと起き上がった。

 

「今更謝っても・・・。何回も無理って言っただろう」

 

「止められなくて・・・。傷になってますか?見まし

ょうか?」

 

「馬鹿!」

 

「いて!」

 

 テンゾウがカカシの足を抱えようとし、頭を叩かれ

る。

 

「恥ずかしいだろ。」

 

「そんな別に・・・さっきまで散々触っ、痛!」

 

 触ってた、と言う前にテンゾウはもう一回カカシに

頭を叩かれる。

 

「もういいから、シャワー浴びてくる」

 

「はい・・・」

 

 白い肌にはテンゾウが残した痕が所々に残っていた。

なんだか胸がいっぱいになり、テンゾウはもう一度カ

カシに口づける。カカシは素直にそれを受け入れ、よ

うやくその唇を解放されると、小さく言葉を発した。

 

「行くよ」

 

「はい」

 

 テンゾウはカカシに覆いかぶさるようにしていた体

勢から起き上がりベッドサイドに腰かける。立ちあが

る時、少しの苦痛表情をにじませたカカシを見て、無

理をさせたかな、と思う。しかし、もう抑えることは

出来ない欲情だった。今更ながら、付き合っていると

カカシは思っていてくれたのに、自分が気づいていな

かった期間が悔しい。

 

 でもま、いいか、とテンゾウは思い返す。恋は始ま

ったばかり。これから二人の時を重ねて行けばいい。

 カカシが浴びるシャワーの音が微かに響く中、幸せ

な、今まで生きてきて一番幸せな時を、テンゾウは味

わっていた。

 

 

 シャワーを浴びながら、カカシもまた幸せな瞬間を

味わっていた。これまでの価値観を覆す出来事であっ

ても、テンゾウに抱かれた事に後悔はない。苦痛はい

ずれ対処出来るようになるだろう。二人の時間はこれ

からも続くのだから。

 

 

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