紙風船
第17話
カカシがシャワーを浴びている間、今、鏡を見たら
自分はどんな顔をしているのだろうとテンゾウは思う。
鼓動が周囲に聞こえるのではないかと思うほどに脈
打つ。なんだか息苦しい。無意識に体中に力が入って、
握りこぶしをグッと握り締め仁王立ちになっている自
分の姿がふと見たガラス窓に映っていることに気づい
た。テンゾウは大きく息を吐き、苦笑と共に少しの落
ち着きを取り戻す。戦いに向かう兵士じゃないんだか
ら・・・。
夏の長い日差しも今日の役目を終えて夜の帳が落ち
ている。カーテンを閉め、テンゾウはしっかりしろよ、
とばかりに自分の頬を叩いたところで、カカシから声
をかけられた。
「何してる?」
「うわ!」
それこそ不意打ち攻撃を受けたように、テンゾウは
小さく叫び声を上げた。振り返ると、カカシが下着一
枚で肩からバスタオルを引っ掛けてそこに立っている。
白い裸身が目に飛び込む。一瞬見とれて、立ち尽くす。
カカシが微かに笑った。
「なんだよ、うわって・・・」
「いえ、ちょっとびっくりして・・・」
「お前がMyビンタしてるから、何してるのかと思っ
て・・・」
「あの、僕もシャワー浴びてきます」
テンゾウはカカシの言葉に直接答えず、横をすり抜
けて風呂場へ向かった。
熱く設定したシャワーを全開で浴びる。女性とのセ
ックスは何度か経験している。大蛇丸組組長の養子と
して、望めばいつでもお膳立てされた。しかし今、カ
カシを前にすると、頭が真っ白になってどう対処して
いいのか判らない。
ただ、はっきりしていることがある。カカシを好き
だと思う気持ちが決して気まぐれな感情ではないこと。
同性の、生物学的には自分と同じ造りのカカシの裸身
を見て、こんなにも欲情している。
テンゾウは濡れた体を拭き取ると、何も纏わずその
ままの姿でリビングへ向かった。
カカシはシャワーを浴びる前に飲んでいたウーロン
茶をソファに座って飲んでいた。テンゾウはカカシの
手にあるペットボトルを取り上げ、残りを自分が飲み
干してカカシの腕を掴み立ち上がらせる。カカシの肩
のバスタオルが床に落ちた。
「テンゾ・・・」
普段とは違う強引なテンゾウに戸惑うような声を上
げかけたカカシの唇が塞がれた。一瞬の猶予もなく、
舌が絡められる。口づけながら、テンゾウはベッドル
ームへと移動していく。ベッドの前にたどり着くと、
テンゾウはそのままベッドにカカシを横たえた。
カカシの上に覆いかぶさるようにテンゾウもベッド
にのぼる。カカシが唯一身につけていた下着を剥ぎ取
った。
「んっ・・・」
再びカカシの唇を奪いながら、テンゾウの指先がカ
カシの胸の特記を捉える。敏感な部分を摘みあげられ、
カカシはテンゾウに奪われている唇から声がもれ、体
を捩る。
強引ともとれる性急さで、テンゾウはカカシに愛撫
を与えていく。唇からから首筋へ、耳元へ、胸元へ、
テンゾウの唇が、手が、カカシの肌に赤い痕を散らし
ながら移動していく。
「あ・・・」
テンゾウは舌で触れるか触れないかのタッチで、か
かしの乳首を舐めていく。反対の乳首は指先で押しつ
ぶし、捻り、痛みと一重の快感を与えられ、カカシは
思わず声を上げてしまう。自分でも驚く甘やかな声に
気恥ずかしさで居たたまれず、自らの手の甲を噛み、
これ以上声を出さないようにする。
テンゾウの手がカカシの中心へと移動する。これか
ら我が身に起こる事がちらりとカカシの脳内に浮かび、
一抹の不安感に襲われる。声を上げまいと噛んでいた
手を離し、カカシは無意識に両手をテンゾウの首に回
した。
男として過去、女性とセックスする時は能動的にう
ごいていたのにテンゾウと肌を重ねている今、そんな
ことはどうでもいいような気がする。明確な理由なん
て判らない。そもそもどうして数ほどいる人々の中で、
同性のテンゾウを好きになるのかそれ自体が判らない。
言葉に紡ぐことができない想いが、この行為を導いて
いる。
「入れたい・・・」
耳朶を甘噛みしながら、テンゾウが囁いた。判って
いた事でも、カカシの不安が少し増す。テンゾウの首
に回していた手に力が入る。
テンゾウはカカシの不安を感じ取り、もう一度濃厚
な口づけを行う。そうしてカカシに施した愛撫で流れ
出る先走りを指に絡め、カカシの秘部へと指を伸ばし
た。