アンチエイジング サプリメント 逢い見ての後の心にくらぶれば

詩の庭荘

 

い見ての後の心にくらぶれば

 

【第五話】

 川のせせらぎだけがその空間の音を形づくる中、俺

達は互いに抱きしめ、抱きしめられたまま暫く無言だ

った。

 

 少しして、テンゾウが俺から離れながらもう一度謝

る。

「すいません。不愉快な思いさせて」

 俺は首を振った。

「不愉快じゃない・・・、けど本気?当たり前のこと

言うけど、俺達同性よ」

 それが故に自分はこの気持ちを隠していたのだ。

 

 テンゾウは深い琥珀の瞳で俺を見つめながら言っ

た。

「そうですね。自分でも不思議です。同性の先輩にど

うしてこんな気持ちになるのか」

 そう、それが俺にも判らず、そして心をかき乱す。

 

 秘かに想っていたテンゾウに告白される。この気持

ちを伝える事は一生出来ないと考えていた状況との

違いに俺は戸惑い、臆病さを払拭出来ない。

「お前は18歳だよな」

「はい」

「お前、初めて逢った時、俺の功績を聞いていて逢え

て嬉しいみたいな事言ってただろう。そういう気持

ち・・・、憧れとか尊敬とかの気持と恋愛感情の区別

がつかないんじゃないの?」

 

 テンゾウの動きは早かった。俺の言葉を聞いた途端、

一度離れた俺のそばにより、両手で俺の頬を押さえて

口づける。

すぐに舌を入れられ、俺は咄嗟に顔を背けて両手で

テンゾウを押し返す。それでもテンゾウは怯まず俺の

腕を掴んで言った。

「憧れているし、心から尊敬しています。でもその気

持ちだけでキスしたいとか、抱きたいとか思います

か?」

 

素直すぎる言葉に、思考を少し整理させる時間を要

する。

俺は腕を掴まれたまま、ようやく声を絞り出した。

「ちょっとその言い方はさすがに恥ずかしいんだけ

ど・・・」

 テンゾウは頬を赤くしながらも、きっぱりと言う。

「すいません。でも本当の気持ちです」

 

 本当の気持ち・・・。そう、恋愛感情というのはそ

ういう事だ。

触れ合いたいと・・・繋がりたいと思うもの。つまり

テンゾウは本当に恋愛感情で俺を好きだと言ってく

れているのか。

 

「先輩・・・、あの・・・」

 黙りこくってしまった俺に、テンゾウが困った表情

を浮かべる。

「本当にすいません。次々と失礼なことして・・・・・」

 

 ああそうか、これは両想いというやつか。

 

 俺は掴まれている手を一度振り払い、自分からテン

ゾウの頬を押さえ口づけた。想いを込め、深く深く口

づける。俺は目を閉じていて判らないが今頃テンゾウ

はおおいに戸惑い、混乱しているだろう。さっきまで

俺がそうだったように。

 

 長く口づけたあと俺は唇を離し、テンゾウを見つめ

た。

 

 そこには、猫の目のようによく動く瞳をまん丸くさ

せて、ぽかんとした表情を浮かべるテンゾウがいた。

色気のある雰囲気とは程遠く俺自身が気恥ずかしさ

もあり、つい笑ってしまう。

「あはは・・・お前も暗部の忍なんだからもう少し締

りのある顔しろよ」

「先輩・・・今のは・・・」

「キスしたくなったんだよ」

「ええと・・・」

「俺もお前が好きだから」

 

 一生言う事はないと思っていた言葉を口にする。お

前が好き。俺はお前が好きなんだ、もうどうしょうも

ないほどに。本人が目の前にいなければ、泣きたいよ

うな感情が溢れて来る。

 

 ぽかんとしていたテンゾウが、徐々に泣き笑いのよ

うなそんな形容しがたい表情になる。俺もテンゾウが

好きだったと聞いてどんなに驚いているか、手に取る

ように判る。俺がついさっき経験した驚きと同じだか

ら。

 

 

 それから俺達は里に戻ったが、道中は無言だった。

里に着き、俺達は火影の元へ報告に向かう。

「偵察は特に問題はなかったのだな。時にカカシよ」

三代目は、いつになく真面目な顔で俺に向き合う。

「過酷な暗部の任務、今までごくろうであった」

「はい。ただ、こき使われるのはこれからも一緒と思

いますが」

「ふぉふぉ・・・。まあナルトとサスケの事は、お前

にしか頼めん仕事じゃて」

 三代目は俺の言葉に笑い、テンゾウにも俺とのツー

マンセル解消を告げ、二人とも少しの間休養せよと告

げた。

 

 

「先輩、今晩、うちに泊まりませんか?」

 火影室を辞し、歩きながらテンゾウが言う。その言

葉に、胸がドキリとする。

俺達は互いに告白しあったのだから、家に泊まる事

も自然な事だろう。

テンゾウは俺が6歳から中忍として身につけてきた

感情抑制の箍をさりげなく外していく。ストレートな

誘いに動揺してしまう。自分の感情と向き合いながら、

俺は肯いた。

「・・・いいよ。一度家に戻るけど」

 生真面目な表情をしていたテンゾウが破顔し、そし

て駈け出す。

「必ず来てください。あの、飯も用意しときます。待

ってますから!」

 喜びを隠せぬまま、叫ぶように言いいながら駆けて

いく行くテンゾウの背を見つめながら、どんどん素の

部分を暴かれていく俺は、経験則にない微かな緊張を

自覚していた。

 

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