ネイル通販 逢いみての後の心にくらぶれば

詩の庭荘

 

逢い見ての後の心にくらぶれば

 

【第三話】

テンゾウが、あいつ曰く俺のために考えたという木遁四

柱家で寝袋に入ったが、チャクラ不足で身体は疲れきって

いるというのに俺はすぐには寝付けなかった。

 

テンゾウも俺から適度な距離の所で、寝袋に入り込んで

いる。テンゾウもまだ眠ってはいないようだ。気配で判る。

あいつは律儀だから、本当に護衛のように俺が眠るまで自

分は起きているつもりかもしれない。

 

今日もテンゾウの活躍がなければ、俺はもっときつかっ

た。17歳。あいつが使う木遁のように、まっすぐに伸び

る力と感性。

互いのタイミングがうまく合い、任務完了となった時、

俺の背を守るあいつを振り向くと、眩しい笑顔を向けてく

れる。

 

父を失い、友を失い、師を失い、現世にどこか距離を置

き、父や友や、師がいる彼方を身近に感じてしまう。テン

ゾウの存在は、そんな俺を現世に引き戻す。

無茶をしすぎる俺を、いつもサポートしてくれる。いつ

からだろう。初めて会ったときはまだ子供だったのに・・・。

 

そんなことをうつらうつらと考えている間に、俺はいつ

の間にか眠っていた。

 

 

翌朝、目覚めるとテンゾウはすでに起きていた。

「おはようございます。どうでした?この家。多少はゆっ

くり眠れましたか?」

問いかけるテンゾウの背から朝日が差し込んで、あいつの

茶髪がキラキラと輝く。起き上がる俺の背に手を添え、手

伝ってくれる。

「体調はどうですか?少しはましになりましたか?」

 

胸がどきりとした。

 

あいつの輝く髪に、俺を心配して覗き込む瞳に、優しく

問いかける声に、俺を守る仕草に、四歳も年下で、同性の

あいつに、俺は胸がどきりとした。

 

自覚した。

 

テンゾウを好きなのだと。

 

子供の時から現在に至るまで、天才忍者といわれている

俺にもどうしようも対処できない事があると今更判る。

 

好きという事を自覚して、それはそのまま失恋の瞬間だ。

 

実るはずのない、同性への恋心。

 

俺自身、どういうわけか同性からいわれることが多い。

暗部という圧倒的に男が多い集団にいるのも、理由の一つ

ではあるだろう。

同期から顔が好きだとストレートに言われた事も、俺の

全てに憧れると年下の奴に言われたことも、遠征先で抱き

たいと先輩から迫られた事もいずれも俺は相手にしなか

った。

真剣に好きになってくれたと思われる人には、申し訳な

いと思う。しかし、ただ申し訳ないからと同性と付き合う

事なんて出来ない。当然だろう、もとからそういうタイプ

でもないのだから。

 

テンゾウにしても同じ事。もしも告白なんてものをすれ

ば俺の事を気遣う優しいテンゾウを、ただ困惑させるだけ

だ。

 

だからいい。

 

俺は言わない。

 

言わないでいればあいつのそばに居ることが出来る。そ

う思って過ごしてきた。

 

そうして、あいつが18歳、俺が22歳となった年。三代

目から告げられた。上忍師となり、暗部から抜ける事を。

もう少し後だと思っていた。九尾の少年とうちはの少年が

卒業するのは2年後だから。

しかし、上忍師としては俺も初めてというのもあり、三

代目は早めに暗部を抜けさせ、上忍師として自覚を持たせ

たかったようだ。

もとより秘密であるはずの暗部にいながら、俺の名は他

国にも知られている。

正規部隊でSランク任務をこなし里に貢献しつつ、上忍

師の修行を積む、それも仕方がないとは判る。里が常に人

手不足であるのも充分理解している。

 

ただ、テンゾウと離れるのが辛い。

これはもう、どうしようもない個人的な感情だ。人を好

きになる、そうして相手も想ってくれる。それはまるで奇

跡のような事なのだと思う。

自分一人、一方的に相手を想うのは、こんなにも辛い。

 

第二話   第四話