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宴の庭荘

 

 

BNP>その2

 

翌日ミナトは大学講義の為、カカシはホテルのロビ

ーで彼と別れた。一旦家に戻る時間はなく、そのまま

病院へ向かう。その日は何事もなく仕事を終え、帰り

に職員用駐車場でテンゾウと会った。

 

「こんばんは、畑先生」

 

「ああ、どうもお疲れ様大和先生」

 

 

 車をはさんで挨拶を交わし、そのまま互いの車に乗

り込む。そして二台の車は同じ方角へとハンドルを切

り、着いた先はカカシのマンション駐車場だった。二

人は地下駐車場から一緒にエレベーターに乗り込む。

 

 

 

 

 エレベーター内、二人きりの空間になった途端、テ

ンゾウがカカシに尋ねる。

 

「昨日どうしてメールの返事くれなかったんですか?

明日見る映画の時間調べてメールしてこいって言った

のはあなたでしょう」

 

 今日は金曜日で、二人共休みの明日土曜日に一緒に

映画を見に行く予定にしていた。上映予定時間を3

ターン送り、どの時間に見るかと問うたが、カカシか

らの返事はなかった。

 

 

「ああ、ごめん、俺昨日家に携帯忘れたから」

 

「ん?僕がメール送ったのは夜ですよ。家に帰ってか

ら見たでしょう?・・・」

 

 話しながらカカシの部屋の前に着く。ドアを開けた

途端、部屋の中から着信音が聞こえる。カカシは廊下

にあるスイッチを押して室内の明かりをつけると、急

いでその音の元へと行く。

 

「はい、俺です。はい昨日は・・・すいません。ええ、

もう大丈夫です・・・」

 

 

 丁寧な話しぶりから目上で、何よりカカシが急いで

電話に出る相手はテンゾウが知る限りたった一人だ。

着信音で区別しているのであろう。

そう、間違いなく電話の相手はミナト教授。

 

 

「どうも、ありがとうございました」

 カカシが電話を切り、再び机に携帯を置いている。

その背中を見ながら湧いた疑念。カカシは夕べ家に戻

っていない。

 

「カカシさん、昨日どこにいたんですか?」

 

「なんだよ、唐突に」

 

「昨日家に帰ってないでしょう」

 

「え、なに?」

 

「携帯忘れたのは昨日なのに、どうして今も家にある

んですか?」

 

「今日も家に忘れたんだよ」

 

「嘘ですね、あなたは昨夜から戻っていない。僕のメ

ール見てないでしょう?」

 

「疲れて・・・帰って直ぐに寝たから、メールを見て

ないだけ・・・」

 

「メールしろって言ったのはあなたなのに」

 

「だから疲れてて」

 

 

「服脱いで」

 

 テンゾウはカカシの言葉には耳を傾けず、突然に命令を下す。

 

「今?」

 

「そう、今です。」

 

「シャワー浴びてからでいいじゃん」

 

「シャワーは浴びたらいい。でも服はここで脱いで」

 

「恥ずかしいだろ、こんな明るいとこで」

 

 

 テンゾウは薄笑いを浮かべた。

 

「今更何言ってるんですか。あなたが自分で見られな

いところまで知ってますよ。それとも明るいところで

見られたら、何か困るんですか」

 

 

 カカシは無言になる。テンゾウは明らかに夕べカカ

シとミナトが一緒に居たと勘ぐっており、しかもそれ

は間違っていない。けして認めるつもりはないが、テ

ンゾウは一度抱いた疑念の追求を止める男ではない。

ここは何を言っても無駄だろう。

 

 カカシはワイシャツのボタンに手をかけた。アンダ

ーシャツも一気に脱ぐ。既にテンゾウは気づいている

だろう。リビングの明かりの下、カカシの身体に残る

ミナトからの愛撫の痕に。

 

「下も」

 

 短い言葉でズボンも脱ぐようにせかされる。カカシ

はベルトに手をかけ、そして下着ごと一気に足元に下

ろし、片足づつ外す。

 

 

 全裸のカカシにテンゾウは近づく。ゆっくりと舐め

るようにその身体を見つめる。

 

「この首のあざは何ですか?」

 

「さあ、何かな・・・」

 

 カカシは誤魔化す。

 

「薄いけど、背中や、前にも似たようなあざがありま

すよ」

 

 そしてテンゾウは仁王立ちのカカシの前にしゃがみ

こむ。

 

「こんなとこにも・・・大腿の内側なんてとこにも、

あります。なんでしょうかね」

 

「俺にも判んないよ、テンゾウ」

 カカシは適当に答える。元々正直に答える気はない。

 

 

 テンゾウは暫くかがみこんでいたが、やがて立ちあ

がり、カカシにシャワーに行くように告げた。

 

「下着はつけないで出てきてください」

 

「飯も食わないでヤルつもり?」

 

「・・・今は食欲がありません」

 

「そうお?俺は腹減ったけど、まいいよ、テンゾウが

先にしたいなら」

 

 

 カカシは殊更陽気に振舞う。テンゾウは自分とミナ

トの浮気を疑い、執拗に聞いてくるだろう。それでも

認めなければ、永遠に認めなければいいだけだ。

 

 

 浮気を疑われているのに、何ら悪びれる様子もなく

シャワールームに行くカカシを、テンゾウは暗澹たる

気持ちで眺めていた。

 こんなにも好きで、愛しくてたまらない。それなの

に、カカシはいつも自分の想いの深さの半分程の愛を

返してくれるだけで、残りの半分を他の男に向けてい

る。本当は、ほかの男の視界にいれるのさえ嫌なのに、

それなのに、カカシはその身体を惜しげもなく晒し抱

かれるのだ・・・、自分でない他の男、ミナト教授に。

 

 

 

 

 シャワールームからカカシがテンゾウの言いつけ通

り、全裸のまま肩にバスタオルをかけた姿で出てきた。

テンゾウは無言でカカシに近づき、シャワーを浴びて

いる間に出しておいた道具を見せる。

 

 

「手錠か。久々だね」

 

 カカシはテンゾウが手にしたものを見て普通の表情

で答える。

 

 テンゾウは肩のバスタオルも取り去り、カカシを窓

際に連れて行きカーテンを全開にした。カカシの部屋

5階ですぐ近くにはこのマンションより高い建物は

ないが、都内であり少し離れた場所にはいくらでも高

層建築はある。双眼鏡で見られたら、全裸で立ってい

る姿は十分見えるだろう。

 

 テンゾウは手錠をカカシの右腕に嵌め、その腕をあ

げてカーテンレールを挟んで左腕にも手錠を嵌めた。

 

 

「何、公開プレイ?」

 

カカシがおどけた感じで聞くと、テンゾウは黙って

睨見つけた。23秒後、低い声で答える。

 

「プレイじゃありません。お仕置きです」

 

「怖いね・・・」

 

カカシは少しも怖がっている様子もなく、テンゾウ

にされるがままになっている。

 

 

一旦テンゾウが離れてまた戻ってきた時には、その

手に箱を持っていた。それを足元に置き、箱から何か

を取り出す。そしてカカシの乳首を指でギュッと挟み

引っ張り上げた。

 

 カーテンレールに手錠で繋がれているカカシは、テ

ンゾウに何をされても逆らうことはもうできない。も

っとも、その箱に何が入っているのかもちろんカカシ

は知っており、そして中の何を使われてもいいと思っ

ている。

 

 

 テンゾウは錘付きの乳首クリップを手にしていた。

それを引っ張り上げた右の乳首に挟む。カカシの身体

が一瞬ビクッとなった。挟まれると判っていても身体

が硬直する、今から与えられる痛みを脳が先読みして。

 

 

クリクリと付属のネジを回し、挟む力を強めていく。

 

「痛い・・・テンゾウもう限界」

 

カカシが降参の声を出す。テンゾウはネジを回すの

を一旦止めて、カカシの顔を見つめた。

 

「相変わらず嘘つきだなあ・・・。これくらい平気で

しょう」

 

そうして更にネジを回して、乳首を締め上げた。そ

して今度は左の乳首も同じようにクリップで止め、付

属のネジで締め上げる。

 

「テンゾウ・・・もう無理」

 

カカシが訴えてからも、もう一回りネジを回す。

ギュッと締め付けているクリップの先には錘がついて

いて、今クリップで乳首を締め付けられていることを

より意識させられる。

 

テンゾウは今度、箱の中から鞭を取り出した。

 

「次は鞭?今日は攻めるね、テンゾウ」

 

 

 テンゾウは答えないと分かっている質問を投げかけ

た。

 

「ミナト先生と寝たんですか」

 

「いいや」

 

 間髪いれずカカシが答える。

 

「夕べ帰ってないでしょう?どこにいたんですか?」

 

「確かにホテルに泊まったよ」

 

「ミナト先生と一緒にでしょう」

 

「まあ、ラウンジで酒は飲んだけどね」

 

 

「ラウンジで一緒に飲んだだけで、こんな痕はつかな

い」

 

テンゾウは鞭の先でカカシの肌に残る薄い痕をつつ

いた。腕は手錠でカーテンレールに止められている為、

カカシの全裸の身体はそのまま隠すことなくテンゾウ

の前に晒されている。全て灯された室内の明かりは

煌々とその肌の白さと、愛撫の痕を際立たせていた。

 

「どうしてそんな事をするんですか。僕では何故駄目

なんですか。どうして僕だけでは・・・。カカシさん」

 

昨夜の愛撫の痕を残すその白い肌を見つめ、テンゾ

ウはその辛い心情を吐露する。

 

 

「お前が駄目なことなんて何一つない。一緒にいるだ

けで楽しいし嬉しい」

 

「だったら何故?何故ミナト先生と・・・いや、ミナ

トだけじゃない、イルカともあなたは会っている」

 

 憎き恋敵を呼び捨てにし、テンゾウはカカシを詰問

する。

 

「会ってるだけだよ。何もしてないって」

 

 

自分の必死さに比べて、彼のこの軽さはなんだろう

と、カカシの答えを聞いてテンゾウは思う。

 

「もうミナトともイルカとも、二人きりで会わないと

約束してください」

 

「別にやましいことしてない。酒飲んだりご飯食べた

りしてるだけ。会わないなんてそんな約束できないよ」

 

カカシの答えを聞いて、テンゾウは手にした鞭のグ

リップをぐっと握りなおす。

 

「どうしても、無理だと言うんですか・・・。会わな

いと言うまで、打ち続けますよ」

 

 

 テンゾウの脅しとも言える言葉に、全裸で手錠に繋

がれたまま、カカシは妖しい笑みを浮かべた。

「いいよ・・・テンゾウの気が済むまで、打ち続けろ

よ」

 

 自分の言葉が威嚇にもならない状況にテンゾウは小

さくため息をついた。

「じゃあ、窓の方を向いて」

 

カカシは言われるがままに身体を窓に向けて、背中

をテンゾウに向ける。じゃりと、手錠が金属音を立て

る。

 

 

シュッと音がして、テンゾウが振り上げた鞭はカカ

シの背中に赤い一本の痕を残す。

 

「うっ・・・」

 

 カカシが呻く。

 

 いつもなら最初緩く、だんだんと力を強める。意識

してというより、やはり肌を打つ行為に戸惑いがある

のだ。カカシに促されて徐徐に力を込めていく。しか

し今日は最初から厳しく打つ。

 

 

 ミナトとイルカと二人きりで会わないでほしいとい

う願いを拒否するカカシに二度、三度、テンゾウは加

減なく鞭を振り上げる。

シュッ!シュッ!

 

「あ、ああ・・・」

 

 バシン!

 

「う・・・」

 

背中、臀部、大腿、至るところに線状痕を植え付け

る。特にミナトがカカシの肌に残した痕には、その部

分を鞭痕で消すように、強く打ち込んだ。

 

 

手錠で自由にならない腕のまま窓に凭れてカカシは

その苦痛に耐えていた。どうしても漏れてしまう呻き

声にかぶせるようにテンゾウは打ち付ける。打たれて

身体が揺れるたびにきつく絞められた乳首の錘が揺れ

て、その刺激を増幅する。

 

 

テンゾウに鞭打たれながら、カカシは昨夜のミナト

との一夜を思い浮かべる。

 そう、テンゾウの心は酷く傷んでいるのだろう。こ

の手加減なしの鞭打ちがそれを表している。

 それでも、ミナトやイルカと二度と二人きりで会わ

ないなんて約束は出来ない。

 テンゾウを愛している。こんな行為を許すのは、テ

ンゾウのみだ。しかし自分の心を強制することは許さ

ない。

テンゾウは、ずっとずっと自分を追えばいい・・・。

 

 

暫く背部への鞭打ちを行い、あちこちが蚯蚓脹れと

なってきた頃、テンゾウは今度カカシを自分の方へ向

けた。元々白い顔が一層蒼白く、そして目からは苦痛

のあまり生理的な涙が溢れている。

テンゾウはその頬を伝う涙を指で拭った。

 

「ミナト先生はこんな事はしませんよね。」

 

「・・・しないよ・・・。お前と違って先生はサドじ

ゃない」

 

「僕も違いますよ・・・。元々はね・・・」

 

 カカシが少し笑う。

 

「俺がさせているって言いたいのか?」

 

「そうでしょう」

 

「手加減無しに打てなんて言ってないけどね」

 

 

 カカシの言葉には応えず、今度は前を向かせたカカ

シの身体の前面にテンゾウは鞭を振り上げる。背中を

打たれている時と違って振り下ろされる鞭が見えてお

り、カカシは無意識に身体を捩って避けてしまう。

鞭はカカシの横腹に線状痕を残した。

 

「うっ・・・」

 

「カカシさん・・・。逃げたら駄目ですよ」

 

 

 テンゾウはカカシの背中を窓ガラスに凭れるように

つけて、その身体があまり動かないようにした。

 

「今度は動かないで」

 

 カカシは軽く頷く。カーテンレールを挟んで手錠に

繋がれているため、ずっと上向きの腕もそろそろしび

れが限界に達してきていた。しかも打たれるたびに手

錠と手首が擦れて、摩擦痕が出来ている。

 

 

 バシッ!バシッ!

何度か前胸部に鞭が加えられ、とうとう乳首クリッ

プで既に感覚を失いかけている胸の突起にヒットした

ときは、カカシはさすがに悲鳴を上げた。

 

「ああうっ・・・」

 

 更にシュッ、シュッと空気を裂く音と共に繰り返し

カカシの乳首に鞭が加えられ、左のリングが外れた。

急速な循環の回復は更なる痛みを伴う。

 

「はあ、あ・・・」

 

 カカシは失神しそうな苦痛と、それによりもたらさ

れる陶酔感の狭間で、意識を保つのが精一杯になって

くる。

 

 

テンゾウは右の乳首リングを自ら外し、鞭も手から

床に放り出した。そして血流再開のジンジンとした痛

みに耐えているだろう二つの突起を、両手の人差し指

と親指で同時に摘み捻り上げる。

 

「あ〜・・・・」

 

 カカシは今日2度目の悲鳴を上げた。

 

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