次の日、テンゾウは朝から今回の任務報告書を書き上げて、やはり夕方頃病院へ向かった。
気持ち的には朝からでも行きたかったが、昨夜はカカシの熱が相当高かったらしく
入ってきた看護人にやんわりと面会は短めにと言われていた。
−自分がもっとしっかりしていたなら−
人質を守っていたとはいえ、結果的にカカシ一人で敵と対峙させた。
冗談を言う事もなく、ぐったりしていた昨日のカカシを思い出し、
深い傷を負わせてしまった事に痛烈に後悔が押し寄せる。
一日たって夕方なら少しは下がってるだろうか。カカシの部屋へノックしてそっと入る。
「テンゾウ。今日も来てくれたの?」
明るいカカシの声がした。
「先輩。大丈夫ですか。熱は?」
「今日はないよ。」
「良かった。」
テンゾウは心からほっとする。
「お前さあ。毎日来てくれてるけど、彼女とはちゃんと会ってる?」
「え?」
「お前ならいるでしょ。彼女」
「はあ・・。」
「オレに気を使わなくていいからさ。会える時に会っとかないと。
元々、大きい任務の後はしばらく休暇だけど、ずっとじゃないからね。」
「はあ。」
テンゾウはビックリしてまともに返答できなった。
−彼女、彼女は確かにいるけど忘れてたー
完全にすっかり忘れてた。
いや、忘れてたのは彼女の事だけでなく、カカシ以外の事を全て忘れていた。
帰宅して、掃除もしたし買物にも行ったし、外食もして食堂のおばちゃんと喋ったりもした。
任務報告書も書き上げた。
しかし、その間考えていたのはカカシの事だけだった。
正確には火影の部屋でカカシに会ってからずっと、心はカカシの事でいっぱいだった。
テンゾウはそんな自分に今気がつき、カカシに占められていた自分自身の心にびっくりしていた。