書き物の間

3.月明かりの庭(4)

「テンゾウ?どうしたの?」
ぼやっとしているテンゾウにカカシが声をかける。
「ああ、いえ・・。」
カカシが怪訝そうな顔をする。

 その時、ドアがノックされ夕食が運ばれてきた。
「あらあら、また。カカシ上忍はお友達が多いですね。」
昨日テンゾウに早く帰るように言った年配の看護人だった。
「入院中は安静が大事なんですけどね。こう朝から夜まで誰かしら来てたら休めないですね。」
そう言ってちらっとテンゾウの方を見た。
さすがのテンゾウもちょっと不愉快な気持ちになったが、
病院側としては患者の安静が一番大事なのは当然だろうと思い返す。

「さ、今日は残したら駄目ですよ。今日残したら私が食べさしにきますからね。」
「え、ほんと?じゃ、わざと残そうかなあ。」
カカシが笑って答える。
「冗談じゃないですよ。入院してからほとんど食べてないんだから。」
看護人は夕食をカカシの前にセットして出て行った。

 食事時には帰るのが常識だろうとテンゾウはわかっていたが、
その時はすぐに帰る気になれなかった。

 朝から見舞い客・・・。さっきの看護人の言葉が気にかかる。
テンゾウは毎日夕方に来ていたせいか、他の見舞い客とは会わなかった。
自分の知らないカカシの交流関係。
「先輩の友達も毎日お見舞い来られてるんですか?」
「ああ、今、里が割と落ち着いてるから、皆暇なんでしょ。」

 食事する所をじっと眺めるのはさすがに失礼だと思い、テンゾウは窓辺に移動した。
カカシの病室は病院の中庭に面している。
いつの間にか日が落ちて、外はもう暗い。

   −見舞い客の中には彼女もいるんだろうか−

 さっきカカシから聞かれたように、先輩は彼女いるんですか?と聞けばいいことなのに
テンゾウは聞けなかった。
窓辺からカカシの方を見る。

   −友達や彼女にはどう接しているんだろう?−

気心知れた仲間なら、カカシは本心をさらけ出すのだろうか・・・。
笑顔や軽口に隠すことなく、思いを伝えているのだろうか・・・。
チームを組む自分には、いつになったら・・・。

戻る 続く