カカシが捕虜を連れて消えてしまい、テンゾウはすぐに後を追おうとした。
しかし、お宮に腕を引っ張られる。
「テンゾウ、早く楽しみましょ。」
「は、離してください。僕は行かなくちゃ。」
「ねえ、遠慮ならいらないのよ。身体には自信あるの。
まさか童貞って事はないでしょう。それならそれで、じっくり仕込んであげるけど。」
さすがにテンゾウは腹が立った。
「僕は、結構経験ありますけどね、あなたと今そんな気分にはなれないです。」
棘のある言い方をしてしまい、言い過ぎたかなと思ったが
テンゾウにとって大切なのはカカシだった。
「すいません。行きます。」
テンゾウも瞬身で連れ込み宿を後にする。
後に残されたお宮はやれやれと首を振った。
「若いのに、プロセスを大事にするタイプなんだ。
先に食事にでも誘えば良かったのね。うん、今度はそうしよ。」
全く懲りていないお宮だった。
捕虜を連れて行くところは決まっている。尋問部だ。
引渡しに書類の記入などあるから、テンゾウが後から着いたとしても、
カカシはまだ中にいるはず。
テンゾウは尋問部の前で待つことにした。
案の定、しばらく待つとカカシが尋問部のドアから出て来る。
「先輩。」
テンゾウが話しかけると、カカシは振り返ったが無表情だった。
「・・・随分早かったな。」
カカシは立ち止まらず歩きながら答える。
テンゾウもカカシの横に並んで歩く。
「先輩、ふざけたこと言わないで下さいよ。僕がくの一とどうこうするわけない。」
「でも、約束したんだろ?」
「あれは、お宮さんが勝手に言った事ですよ。」
「うん、そうだろうな、きっと。でも、お宮さんが
そう勘違いするような態度を、お前もとってたしな。」
「僕がどんな態度を取ってたんですか?」
「火影室で見つめてたり、短冊街では腕繋いでたりしてただろ。」
「あ、あれは任務だからとお宮さんが。火影室ではたまたま見ただけで。」
テンゾウの言葉を聞きながら、カカシが深い溜め息をついた。
「仕方ない事なのに。俺が悪いよな、こんなことで苛ついて。」
「そうです。腕組んだのは任務ですから。」
テンゾウは、カカシが理解してくれたと思いほっとする。
「気持ちじゃどうしようもない事ってあるもんだよ。」
「ええ、任務ですからね。お宮さんを勘違いさせてしまったなら申し訳ないですけど。」
ようやく誤解が解け、テンゾウはニコニコと答える。
歩きながら話していたカカシが立ち止まった。
「今回は任務だったかも知れないけど、やっぱり女の方がいいよな。」
「は?先輩、何の話ですか?」
「つい、見ちゃったりするよ。テンゾウは若いんだし。」
「だから、何の話しですか?」
「俺の事を好きでいてくれる気持ちが嘘じゃないって判ってるよ。
でも、それとは別物だよな。こればっかりは。
試して、やっぱり無理だったんだろ。」
カカシは、再びテンゾウの前から瞬身で消えてしまった。
「先輩!?」
後に残されたテンゾウは、カカシの勘違いが
少しも解けていないどころか、深みにはまっていることにようやく気づいた。
戻る 続く