カカシを初めて抱いてから数日は、二人とも休暇だったが、
テンゾウはカカシの身体を気遣い、性急に身体を求めることはしなかった。
鍛え上げた忍という事は充分にわかっているのだが、
初めての時のカカシの小さな悲鳴、自然と零れた涙、
シーツを握り締めた手、それらを思い出すたび
今にも抱きたい思いに突き動かされると同時に、
あの華奢な身体で、受け入れるのは負担だったろうと思う。
まあ、いい。明日をも知れぬ忍とは言え、気持ちは通じ合っている。
ゆっくり、少しずつ、慣れていけばいい、自分も、先輩も
とテンゾウは考えていた。
カカシの為に、自分こだわりの豆から引いたコーヒーとパンを用意し、
昼は洗濯や、掃除などをしながら忍具の手入れをする。
カカシがイチャパラシリーズを読んでいる時には邪魔せぬよう
一旦自分の部屋に戻って片付けたり、また、カカシを誘って買物し、
カカシがいつ自分の部屋に来ても言いように、カカシの物を買い揃えたりした。
夜は外食し、多少のお酒を飲み、シャワーを浴びて一緒のベッドで眠る。
まるで、新婚生活みたいだ、なんてテンゾウは考え、
思わず笑いそうになる自分の頬を叩いてみたりした。
ただ、ベッドで一緒に寝るのはかなりの忍耐を要した。
カカシの寝顔を間近で見て、寝乱れる銀の髪に触れて、
その寝息を聞いて、何もしないというのは拷問に近い。
思わず、触れそうになるが、やはり・・・、と思い返す。
無理をして、傷つけたくはない。第一、あまりがっついて
カカシの機嫌を損ねるのも本意ではない。
次の休暇では誘おうなんて考えながら
お休みの口付けを交わし、テンゾウはすぐに目を閉じる。
カカシを見つめていては、我慢が出来なくなる。
早く眠ってしまうのが一番だ。
初めてテンゾウに抱かれてから、カカシは幸せな気持ちに包まれていた。
正直、抱かれた時の思わずあげてしまった声や、あらぬ姿、
思い出すだけで、恥かしさに眩暈すら覚えるほどだが、
テンゾウを愛しく思う気持ちが、それらの気恥ずかしさを上回っていた。
事が終わってからの始末は本当に恥かしかったけれど
それでも、テンゾウになら次もやっぱり許せると思う自分がいる。
誰かに大切にされながら、一緒の時を過ごすというその事が、
ふと、幼い頃父と過ごした日々を彷彿させたりした。
けれど、いよいよ休暇も終わりという日の夜、
テンゾウはいつものように口付けをしてすぐに目を閉じてしまい
カカシは妙に気になりだす。
テンゾウは、どうして求めてこないのだろう。
今すぐにでも抱きたいなんて言ってたのに・・・。
カカシは、あの日の事を考えた。
自分があまり、気持ち良さそうにしなかったから、気を使ってるのか・・・。
でもちゃんと、これで終わりだったら、俺が傷つくって言ったし、
それはつまり、次もありって言う意思表示だよな。
テンゾウが、実は良くなかったとか・・・?
それは、あるかもしれないとカカシは考える。
自分を好きでいてくれる気持ちは本物だと思う。
けれどいざ抱いてみると、準備も要るし、始末もいるし、
男は面倒だと思ったのかも・・・。なにより、筋肉質な身体は
抱くと楽しくなかった、とか・・・。
そこまで考えて、カカシはさすがにネガティブ過ぎると、
頭を振る。何だよ、だいたいテンゾウが悪い。
休暇も終わりだっちゅうのに、さっさと寝るなバカ。
カカシは、自分の横ですでに目を閉じているテンゾウに
背を向けて布団を被った。